6-15 : 協会の隙間
◇
(こいつ、どこまで行く気なんだ?)
先頭を行く神官の背中をジークが睨む。
「おい」
「は、はい!」
振り返った神官の首元に容赦なく、彼は手刀を落とした。
ぐらりと、崩れる神官の体を軽く受けとめ、近くの木に倒れないようそっと置く。
やれやれと手や服に付いた砂を落とし、ジークはポケットに滑り込ませていた紙を取り出した。
そこには暗号が書かれていた。
(……やはりそうか)
ジークは振り返って教会を見つめた。
日中の人目のある中、文を飛ばすとは早急な用事があるのだろうと、ジークは一人になる時間が欲しかった。この状況の提案者もきっと、ルミナと二人になる時間が欲しかったに違いなかった。
(しかし、彼の話は当たるようだから恐ろしいものだな)
ふっと口元を歪ませ、広間の方角へ目を向ける。
「そろそろ時間だな」
誰にともなく呟いたジークの声に、頭上の木の葉がざわめき、白い服を着た人が落ちてきた。
「白い服も似合うではないか」
頭を下げ、片膝を立てるその人物にそう言うジークの顔は少し笑っていた。
「この金髪は如何です?」
そう言って顔を上げたのはユーリであった。
「見慣れないな。違和感でしかない」
「ひどい! 折角、主様の為に染めたのに、そんな言い方はないんじゃないですか?」
ユーリはパンパンと、服を払う。
「少しは柔らかい態度になったと思ったのですがねぇ」
「鳩のことか? 文の褒美にルミナと餌をやったが……」
「違いますよ。港でこめかみに……」
「口は災いの元と言うのは、本当らしいな」
「自分でされたことなのに?!」
やれやれと、ユーリが首をすくめる。
「どこから行く?」
ジークが教会を見る。
「裏に神官どもが出入りしている扉があります。こっちです」
ユーリは教会の右手に回ると、白い壁を削り取った取手のような物があり、彼はそっとそれを押す。石膏で出来たような扉がジャリジャリと砂を噛むような音を立てて動いた。
「手の込んだことを」
「これがあるのはここだけですからね」
ユーリが糸目を更に細くした。
「……」
顎に手をやり、暫く考えた後、ジークはユーリが開けた隙間を覗く。
「……行くか」




