6-13 : 戦女神とゼニウスの神
「ジーク王子殿下は、ゼニウスの神の一人であった戦女神が逃れた、ヴァルハラの地で、彼女の加護を受けているのですな」
ベネディクトはゆっくりとジークに目を向けた。
「戦女神?」
「戦が起こった際に、戦場にて生きる者と死ぬ者を決める女神のことです。この地にいた戦女神は死者を無駄に出すと、ゼニウスの神の怒りにふれ、追放されたのです。その戦女神の逃れた先が、精霊に愛されているアルカディアより、もっとこの地から離れたヴァルハラなのです」
ベネディクトは絶やさなかった笑みを消していた。
(それが”勝利の女神”の正体だな)
幼き頃夢でみた金色の瞳の女性の正体に、成程とジークは納得した。
「彼女はこの地を追放された女神。あまりここと相性が良いとは……」
「つまり、彼女に味方されている俺が、教会に入ることを快く思っていないのだな。この地の神は」
ジークは不敵な笑みを浮かべ、石像を見上げた。
「そのようなことは。ですが、体に障りが出るようなことがあれば……」
ベネディクトは困ったように眉尻を下げた。
「わかった。俺は少し外に出ていよう。ルミナ、俺のことは気にせず、案内してもらうと良い」
ジークはルミナに優しく微笑んだ。
「でも……」
「せっかくの機会ですので、ルミナ王女にパイプオルガンの演奏でもプレゼントしようかと思っていたのですが」
ベネディクトが残念そうに壁に伝うように設置されているパイプオルガンに目をやる。
「……」
ルミナは初めて見るパイプオルガンに心が揺れた。
「シオンは側に置いておく。外で待っているから、君は聞いてくると良い」
どうしようか迷っているルミナの背を押し、ジークは軽く彼女のこめかみにキスした。




