6-11 : 白い鳩が舞う広場に落ちた影
「人を恐れないのだな」
ジークは、捕まえた鳩をベネディクトに見せるかのように体の向きを変えた。
「えぇ。餌をもらうことが多いからでしょう」
「そうか。餌は何を?」
「パンの耳など喜んで食べますが……」
好戦的で知られているヴァルハラの王子が鳩の食べ物に興味を持つのが意外であり、ベネディクトは目を丸くする。
「ルミナ、餌でもやってみるか?」
「良いの?」
ジークは鳩を離すと広場の出店でパンを買った。
ルミナと共にパンをちぎってやると、他にも鳩がやってきて、パンをつつく。
「可愛い」
ツンツンとパンをつつく鳩にルミナが笑みをこぼした。
「そうだな」
そう言ったジークの視線が柔らかいことに気づいて、ルミナが頬を染めた。
気恥ずかしくなったルミナがしゃがむと、ジークもしゃがむ。
「……」
なによと言いたげなルミナにジークが笑った。
昨日までは、護衛であるシオンや他の人がいる際には見せない笑みだった。
少し離れた距離で控えているシオンは眩しいものを見るように、目を細めた。
「お二人は本当に仲睦まじくいらっしゃる」
ベネディクトは微笑ましいと言わんばかりに声を立てて笑った。
「お二人の時間を邪魔して悪いですが、そろそろ教会を案内してもよろしいですか?」
ベネディクトの言葉に、ルミナは更に頬を赤くし「勿論です!」と立ち上がった。
「ほら、ジークも立って」
未だ立つ気配のないジークの腕を引っ張る。
はぁと溜息を吐くと「俺はもう少しこのままでも良かったのだが」と立ち上がったジークは、ルミナに耳打ちする。
カァっと赤くなった耳をルミナは手で押さえた。
「か、からかったでしょ!」
ジークがクスクス笑っているのに気が付いたルミナは、ポコポコと彼の腕を叩くが、ジークは更に笑いを深めるばかり。
そんな二人を微笑ましそうに見ているベネディクトであったが、内心は違っていた。
(思っていたより仲が良いなどとは面倒な。ユリウス王子に心を傾けてくれれば良かったものを)
ベネディクトにとって欲しいのはルミナだけであって、ヴァルハラの王子など邪魔なだけであった。




