6-8 : 沈む夕日に、甘い言葉
(私と同じ気持ちじゃないと思ってたのに……)
「……本当は、君は国に戻って、君に似合う人と一緒になれば良いと思っていた」
ふぅとジークは息を吐き、目を伏せる。
(そんな風に思ってたんだ……)
ルミナは胸がギュッと切なくなった。
他の人と一緒になれば良いと思われていたことがショックであった。
「だが、それではダメらしい……。他の奴が隣にいるのは、思っていた以上に不愉快だった」
べったりルミナの側にいるユリウスを思い出すだけでも、腹が立つのだ。
ルミナは胸に手を置きながら、じっとジークの言葉を待つ。
「俺は……君に相応しくはないが、この関係が壊れるのことを望んではいない」
ゆっくりとジークが目線を上げると、もう殆んど沈んでしまっている夕日を背景に、下唇を噛みしめているルミナが視界に入った。
泣くのかと思い、そっと彼が手を伸ばした時、ルミナはゆっくりと口を開いた。
「……ジークは私とは違う関係を望んでいるのと思った」
ルミナは上睨みにジークを見つめる。
(違う関係……?)
ジークは手を止め、伸ばしていた手を顎にあてた。
「もっとはっきり言ってくれないと、分かんないっ!」
そう小さく叫んだルミナの瞳が、揺れていることにジークは漸く気が付いた。
「君が……好きなんだ。側にいてほしい」
ルミナはくしゃりと顔を歪め、小走りに駆け寄りジークに抱きついた。
「もう! もっと早く、はっきり言ってよ」
頭をジークの胸あたりに擦りつけながらルミナが不服を唱える。
自分を抱きしめるルミナの肩を、そっと両腕で抱き込み、彼女の耳元で「君は?」と呟いた。
耳にかかるジークの声にルミナはビクっと体を竦める。
「わ、私は……」
「うん」
ジークが身を逸らし、ルミナの顔を覗く。
急に恥ずかしくなったルミナは目を逸らした。
「……俺は口下手だから、では行動で」
右手でルミナの前髪を上げ、ジークはそこに唇を寄せた。
「ジ、ジークでもこんなことするんだ」
再度、真っ赤になったルミナは額を抑える。
「どういう意味だ?」
ジークは瞬きを一つする。
「ほら、その……」
困ったように目を泳がすルミナを、ジークは笑い、抱きしめた。
ルミナは黙ってジークに身を委ねた。
彼に触れている右耳から、彼の心音が聞こえる。
ルミナは目を閉じ、ジークの心音に耳を傾けた。
もうすっかり太陽は沈み、二人の影は闇に溶けていった。




