6-6 : 火花を散らす二人の王子
「そんなにゼニウスに信用ないでしょうか?」
ユリウスの一言にシオンは言葉に詰まる。
下手なことを言うと外交問題に繋がるのだ。
「五分で戻りますよ、きっと」
ユリウスはシオンに笑顔を向けてそう言うと、ルミナの手を引いた。
「向こうの階段の方が庭に近いんです」
自然と繋がれた手にルミナは戸惑いながらも、笑顔で案内しようとしているユリウスに何も言えなかった。
シオンも何も言えず、黙って二人の背中を見送った。
(……とりあえず、ジーク様に報告をせねば)
首を降り、気を取り直したシオンはジークの部屋をノックし、状況を説明した。
チッと小さく舌打ちしたジークは、あてがわれた部屋から外を見る。
ちょうどバルコニーの右下から、ユリウスに手を引かれたルミナが見えた。
(腹の立つ男だな)
ジークはバルコニーの柵に足をかけ、シオンが止めるもの聞かずに下に飛び降りた。
三年前まで戦場を駆け巡っていたジークにすれば二階から飛び降りるなど、造作もない。
しかし、他国にてそうするジークに、ぎょっとし、バルコニーから見下ろした。
一方、目の前にジークがおりてきたシリウスとルミナは、そのバルコニーを黙って見上げていた。
(まさか飛び降りてくるとは……)
シリウスは目の前のジークに視線を戻す。
ヴァルハラと言えば、好戦的でゼニウスやアルカディアとはまるで違う国である。
それなのに、どういった風の吹き回しなのか、二人は婚約したという。
にわかに信じられなかったユリウスであったが、事実なのだと実感する。
「君はこっちだ」
しかも、目の前でジークはルミナを引き寄せている。
好きではない国の王子が、友好的な関係の国の姫と(しかも可愛い)仲良くしている様は、無性に癇に障る。
「ルミナ姫に我が国が誇るユリの花を見せたかったのですが」
ユリウスは笑顔を向けた。
「それは構いませんが、ルミナは婚約者なので、勝手に連れまわさないで頂きたい」
対するジークは無表情。
(この人は愛想笑いの一つもできないようなダメ王子なんじゃないのかな)
笑顔のユリウスにも苛立ちの色が混じる。
(こいつは人のものにちょっかいをかけてはいけないことも知らない、無知な奴なんじゃないのか)
ジークも内心、苛立っていた。




