6-5 : 気づかなかった足音と心の揺れ
しかし、ルミナの明るい笑顔を思い浮かべると、ジークの気持ちも分からなくもなかった。
複雑な気持ちでいた為か、階段から聞こえてくる足音にも、ルミナが中からドアノブに手を掛ける音にもシオンは気が付かなかった。
「シオンさん?」
そっとドアノブを開けてルミナが顔を出す。
「すみません! 気がつきませんでした」
背を向けたままであった非礼を詫びていると、背後からユリウスの声が。
「庭のユリが満開だから、一緒に見に行きませんか? 以前こられた時には、お見せ出来ませんでしたから」
ユリウスは笑顔であった。
「ゼニウスのユリは有名だものね。シオンさんも一緒に……」
ルミナはパァと笑顔をシオンに向ける。
「いえ、その……」
シオンは言葉に詰まった。
ジークの気持ちは分かる。だが、そう直ぐには割り切れない。
「すぐ下の庭ですけど、やはり他国ですから、護衛さんも来ますよね」
ユリウスが悲しげな顔をルミナに向けた。
そしてシオンに「護衛なしの主人を一人、置いて行くのですか?」と、囁く。
シオンがユリウスを見ると、彼はにっこりと微笑んだ。
「それに……」
ユリウスはルミナを手招きする。
「僕の気配に気づかないくらい彼女は疲れてるんじゃないですか? 少し休憩も必要かと」
ユリウスにそう耳打ちされ、ルミナはシオンに目を向けた。
「お城の中だし、大丈夫よ。すぐ戻るわ」
「いえ、しかし……」
笑顔で行ってしまおうとするルミナを止めようとしたが、ユリウスが一方前に出て、邪魔をする。




