6-4 : 嫉妬と予感
◇
(やってしまった)
ユリウスに案内されたゼニウスの城の一室で、椅子に腰かけているジークは一人、額を押さえた。
『ただの婚約者なのだから部屋は別だよね?』と、にこやかな笑みを浮かべたユリウスの案内で、ルミナはこの隣の部屋にいる。
(やってしまったものは仕方あるまい)
開き直って腕を組み、背もたれによしかかる。
(それにしても、あいつの距離は近くないか?)
城の案内時もユリウスはずっと、ルミナの隣を陣とっていた。
ルミナは時折、ジークに視線を送っていたが、ユリウスは全くジークを気にしない様子であった。
(二人に面識があるとは知らなかった。まさかルミナを気に入って……?)
いやいや、それなら自分との婚約話が出た際に何か……と思ってみたが、相手の立場を考えるとそういう訳にもいくまいと、妙に納得してしまった。
ジークは部屋のドアを開け、ルミナの部屋の方を見る。
ドアノブの音でこちらに目を向けたシオンと目が合った。
「シオン。万が一、王子がルミナを訪ねてきても、絶対に通すな」
ジークは不機嫌そうにシオンに釘を刺す。
「承知しました」
シオンが頭を下げると、ジークは部屋に戻っていった。
彼女は、自分が思っている以上に彼がルミナを気に入っていることを再認識した。
(では、あれは見間違えではなかったのか……)
ゼニウスの港で、ジークがルミナを抱き寄せたように見え、いやあのジーク様が……と思っていたのだった。
主の意外な一面に、シオンは複雑な気持ちだった。
ずっと気高く思っていたジークが、ただの人になってしまったような言い様のない悲しさ・淋しさが沸き上がったのだった。




