6-2 : 新しい出会いが、海風に乗ってくる
◇
「あっつ~い」
ルミナは船から降りると、手でパタパタと仰ぐ。
「ゼニウスは既に梅雨が明けているからな」
ルミナと同じ黒のズボンを履いているジークは涼しげな顔でルミナに答えた。
(なんでそんな暑くなさそうなのよ)
ルミナは目を細める。
(だいたい、ヴァルハラの服が暑すぎるんだわ)
アルカディアに比べて肌の露出のないヴァルハラの服装は、ルミナからすると着ているだけで暑い。
「これはこれは、ようこうそいらっしゃいました。私はゼニウスで総大司教を務めておりますベネディクトと申します。今回の留学がどの国にとっても良いものになると、神託を授かっております」
神官を伴ったベネディクトがにこやかな笑みを浮かべ、姿を現した。
(さすが神の国ね)
ルミナは彼に笑みを返す。
「それは幸先のよいことを聞いた」
一方、ジークは微笑むこともなく、いつもの真顔である。
(ちょっとは笑ったらどうなの?)
秘かに肘でつつくと、いつものことだろと言いたげなジークの視線が返ってきた。
(ジークの分も愛想良く振舞うことにするわ)
ルミナはふんっとジークからベネディクトへと視線を戻した。
ふと、パッカパッカと鳴る蹄の音に気付き、そちらへ目をやる。
「第一王子殿下が来られました」
ベネディクトの声と共に、金髪碧眼の柔らかな雰囲気の青年の乗った馬が、従者に引かれ姿を現す。
「ここでよい」
ルミナと目が合うと青年は柔らかい声でそう従者に声をかけ、馬が歩みを止めた。




