5-12 : 一緒に戦いたい
「君は強いのだな」
自分を眩しそうに見上げる、彼女の方が眩しい。
「ううん。強くなんかないよ。いつも真顔のジークを思い浮かべてただけだもん」
えへへと、いたずらっ子のような笑みでルミナはそう言う。
(本当に君は……)
ジークもふっと笑みをこぼした。
(……やっと、笑った)
あの夜から、忙しいのを理由に自分を避けていたように思っていたジークの笑みに、ルミナはほっとした。
(きっとジークは私の望んでいることとは違うんだわ。避けられるくらいなら、いっそ……)
「君の頑張りには褒美をあげたいくらいだよ。さ、そろそろ俺は着替えに――」
「ねぇ、ジーク。褒美じゃないけど、お願いしても良い?」
ルミナはジークの袖をつまむ。
「無理な内容でなければ」
切なそうに自分を見あげる彼女がどんな願いを言うのだろう。
「私、守られるだけじゃなくて、一緒に戦いたい」
ルミナは真剣であった。
「何を――」
「ジークは私を守ってくれるって言ったけど、きっと貴方は、自分のことを守らないわ」
なんの躊躇いもなく、自分の腕に刃を滑らせたジークを思い出す。
「私が出来ることなんて、たかが知れてるかも知れないけど、盾みたいに防壁を張ることなら出来るわ。傷だって癒せる。だから、もしもの時は、安全な場所に避難なんかじゃなくて、ずっと側にいさせて欲しいの。泣きわめく、つまらないお姫様は望んでないのでしょう?」
強い意思を感じる金色の瞳をまっすぐジークに向ける。
「……正直、助かるが……」
向こうが欲しがっているルミナを利用すればスムーズに話は進むだろう。
だが……。
(そういう訳にはいかないだろう)
「君は庇護してもらう為に……」
「私のゼニウス行きを決めたのは貴方じゃない!」
ルミナは一歩も引くつもりはなかった。
「どうせ巻き込むなら、中途半端なことしないでよっ」
上目使いにジークを睨む。
「……分かった。ただし、危ないと感じたらすぐに言え。守るから――」
(どうして、ジークは切なそうな顔をするの?)
ルミナはジークに抱き締めたくなった。
だが、共に戦うと決めたのだから……と、ドレスをギュッと握り、その感情を押し殺す。
「ちゃんと言うわ。だから……」
(”側にいさせて”なんて言ったらダメだよね?)
「一緒に戦うって約束ね?」
精いっぱい笑みを作り、指切りの為に指を前に出した。
「……?」
「指切り、知らないの? 約束を守るって誓うんだよ」
首を傾げたジークの手を取り、小指を立てる。
「指、切った!」
自分の左手でジークの手を動かすルミナはふふっと笑った。
(どうしたって……)
自分の手を握っているルミナの手を見つめるジークの心には、ただ切ない諦念と、どうしようもない愛おしさが溢れていた。
ルミナの幸せを願っている筈なのに、自分を掴むその手を永遠に引き止めたい――そんな思いを、ジークは胸に仕舞い込むのだった。




