5-5 : 君の隣に立つ資格はない
「ジーク」
「兄上」
兄の声にジークが振り返る。
ジークとは違い、母親譲りの顔立ちの第一王子・ギルベルトが彼の方へと歩みを進めていた。
ギルベルトは幼い頃に病死した彼らの母親に似て、体は強くはない。
ギルベルトとジークは同じ背丈だが、体の厚みがまるで違う。ジークは護身用に細い刀を腰に差しているが、戦いでは大剣を振るう。その大剣で相手武器を払い飛ばすことを彼は好んでいる。
対して、ギルベルトは細い刀でも護身になるか不明な程である。彼は、地理を読み解き、策略を立てることに長けているのだ。
「今朝、昼からはアルカディアの王女の衣装を選ぶと言っていたのに、どこに行くんだい?」
城の出口に足の向いていたジークに、ギルベルトが問う。
「……私がいなくとも、良いかと判断致しました」
へりくだる訳でも、かといって上からでもなく、ジークは事実としてそう述べているかのようであった。
「そう……」
ギルベルトが歩みを止め、ジークと並んだ。
二人は癖のない髪質や、顔の輪郭などはこうして見ると、よく似ていた。
「父の意向は知っているが、お前の意向はまた別だろう?」
ギルベルトがジークに目を向ける。
「私の意向など」
この国に関係ありますか?と、笑いを含んだ声で答えた。
「まぁ良いさ。総帥や、宰相には気をつけて」
そう言ってギルベルトは去って行った。
(……自分は俺の味方だと?)
武力の長けた弟と、戦略に長けた兄。軍事国家であるヴァルハラでは、武力派が多い。つまり、次期王としてジークを推す声が多いのだ。
(俺は王になる気などない。かといって、ルミナの夫としても、相応しくないだろう)
ジークはアルカディアのような平穏な国で暮らせるような性質ではない。なんといっても戦うことが好きなのだ。




