5-3 : "露出を控えろ"
「そんな恰好……」
ルミナは自分を見下す。
(服、着てるけど……)
「肌の露出を控えろと言っている」
分かっていない様子のルミナにジークは痺れを切らして、そう漏らした。
『露出するな』ではなく『控えろ』と言ったあたりに彼の本心を見たルミナは顔を染めた。
(ちょっと珍しく照れてるのだと思ったのだけど、そうじゃないのね)
それはつまり自分を女として見ていると言うことなのだろうか?と、ルミナは疑問に感じた。
ルミナはサイドテーブルから布と、ピンを取ると、それで胸元を隠した。
(朝から疲れた……)
ジークは溜息を漏らす。言いたいことはちゃんと伝わったのか疑問であったが、慣れないことの故、触れないでおこうと彼は心に決めた。
それなのに、ジークの背中にポスンとルミナの重みが。
「言っとくけど、私、ジークのこと、嫌いじゃないから」
それだけ言うと、着替えてくると、ルミナは部屋を出て行った。
(いやいやいや。分かってて言ってるのか?)
はぁあと、目を閉じたジークは額に手をやり、朝から盛大に溜息をついたのであった。
◇
「先に候補を出しておいてくれとのことです」
ジークと一緒にドレスを見るのかと思っていたルミナに、シオンは事務的に述べた。
(婚約者らしくって言ったのは、どこの、誰よ?!)
ルミナは怒り出したくなるのを必死に堪えた。
何故なら、この部屋にはシオンだけでなく、仕立て屋の女主人がいるからである。
初対面の彼女には、淑やかな婚約者といった印象を持って欲しいのである。
「仕方ないですわ。ジーク王子殿下もお忙しい方ですから」
仕立屋の女主人・マリィがルミナを宥めるようにそう言った。
マリィはここ、ヴァルハラでは珍しく、愛想の良い笑みを浮かべている。
彼女の刺繍デザインを気に入った、現王によって王室御用達となっているが、店構えは小さく、すべて彼女の目が届くよう管理されている。
「そうかもしれませんが……」
アルカディアの民である自分に、初めから微笑みかけてくれるマリィに、ルミナは口を尖らせた。
「あら、ルミナ様は王子殿下とラブラブなのですね」
まぁ羨ましいと、ニコニコ微笑むマリィの一言にルミナは慌てふためいた。




