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“視える”王女と、隠された真実~元敵国の第二王子は何故か私にだけ笑みを見せる〜  作者: 間波 結衣実


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ep.01―3

 

  ◇


 ルミナの住む島から近い島は二つ。


 一つは軍事国家・『ヴァルハラ』、そしてもう一つは、神の加護を受けている『ゼニウス』である。


 知能の長けているゼニウス人が、他の民を捕獲するには何か理由がありそうではある。


 だがしかし、ルミナにすれば"捕獲""大金"と聞いて身の危険を感じた。


「なんだって!?」


 ルミナの話を聞いた国王・エリスは顎髭に手をやり、深く目を伏せた。


 エリスはこの民を代表的な髪―茶色の癖のある髪―と、豊穣を司る大地の精霊の加護を持つ、新緑のような瞳の色をしている。


「……やはり、ゼニウスの動きが怪しいというのは本当だったか。実はルミナ、そんな噂を耳にしてから、宰相と共に『ヴァルハラ』と極秘裏に連絡を取り合っていたんだ」


「ヴァルハラに……っ!?」


 ルミナは息を呑み、父の元へ一歩、詰め寄った。


(あんな……好戦的で、いつ不侵条約を破って攻めてくるかもわからない、野蛮な国に!?)


 100年前の戦争の歴史が、ルミナの脳裏をよぎる。


 "魔王"と恐れられたヴァルハラの王が、ゼニウスやこのアルカディアを壊滅寸前まで侵略した。神風が吹かなければ、この島はとっくに消滅していたはずなのだ。


(そんな国とまともに連絡なんて取れたのかしら……それにゼニウスの動きが怪しいってどう言うこと?)


 三年前、交換留学生として初めてゼニウスの地を踏んだルミナだが、アルカディアほどではないが、緑と水のあるゼニウスは嫌な感じはしなかった。むしろ、暖かい日差しに神の気配を感じ、心地よい島国であった。


 そのゼニウスが……と、水色の耳飾りを揺らしながらルミナは腕を組み、思考を巡らす。


「我が国は精霊の加護があるから、弱くはない。だが、ゼニウスのような文明の発達もなく、皆、平穏な日常を愛している温厚な人達だ。もし何かあってはこちらに大きな被害が出るだろう」


 王の目の奥に、静かな、それでいて鋭い光があることにルミナは気がついた。


(なにか良くない事が起こりそうなのね……?)


「ルミナ、アルカディアで黒髪の少女と言ったら、お前しかいないだろう……」


「えぇ、そうね」


 ルミナの体に緊張が走った。


 捕まれば、どうなるかわからない。心臓が、耳の奥でうるさいほど早鐘を打つ。


「……ルミナ。何人でも良い、信頼できる侍女を連れて、今すぐヴァルハラへ向かいなさい。あそこなら、お前の身を守れる」


 エリスは、娘の顔を見られぬように静かに目を閉じた。娘がどれほどヴァルハラを嫌っているかを知っているからこそ、その言葉は血を吐くような苦渋の決断だった。


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