ep.05―4
「もう二度とこんなことしないで!」
戦いのないアルカディアで育ったルミナは、ジークが理解できなかった。
(どうして平気な顔して、こんなことするの?!)
「……分かった。君に誓おう。もう二度としないと」
ジークは伏していた目を上げ、ルミナを見た。
「……分かれば良いわ」
ルミナはそっと目をジークから逸らした。至近距離で見られるのが恥ずかしかったのだ。
「せっかくだから確かめてみないか?」
逃げて行きそうなルミナの腕をジークは掴み、距離を更に縮めた。
(なんだか恥ずかしいのは私だけなのかな?!)
チラッとジークを見るが、いつも真顔である。
ジークの瞳がほんのり青いのが分かるくらいの近距離。
「わ、わかったから、離れて」
ルミナは耐えれず、ぎゅっと目を瞑った。
その動きで、サラリとルミナの顔に髪がかかり、ジークはそれを耳にかけた。
「なっ、何するの?!」
ジークの指が触れた左耳をルミナは押さえて、真っ赤な顔で彼を見た。
「あぁ、顔が見にくかったから、つい」
(どんな“つい”なのよ!?)
冷静なジークに腹が立ち、彼の腕をどけようとしたルミナの目に、赤い傷が飛び込んできた。
「……」
その傷を見ると、ルミナの胸はぎゅっと切なくなるのだった。
(自分を傷付けることに躊躇いがないだなんて……)
ジークを哀れに思うのだった。
「放っておけば二、三日で治る」
ジークはそう言って、左腕を上げてルミナから遠ざけた。
「無理だと思うけど、貸して」
自分の目線より高く上げられた彼の腕に触れる。
(自分から俺に触れるのは平気なのだな……)
治癒を施して来たから平気なのだが、ジークは複雑な心境であった。
(ここで"対等"を求めるのも可笑しなことだ)
ルミナが普通に触れるなら、自分も……と、言いたいような気持ちになったが、それを飲み込んでジークは腕を下ろした。
ルミナは傷に触れないようそっと手を翳す。
(やっぱり無理だよね……)
「っ!」
そう思っていたのに、ルミナの掌から淡い光が漏れ、その光の粒子が傷跡に吸い込まれていく。




