ep.04―4
「向こうが勝手に一人できたに過ぎませんよ。それをこちらが慮る必要があると?」
ユーリの言わんとすることも分かる。
ジークは開きかけた口を閉じ、大股に城の中に入っていった。
白を基調とした簡素な造りであるこの城の入口には、普段から人はおらず、ジークはルミナに自由に使っても良いと言った部屋へと足を向ける。
「ジーク様」
階段近くの太い柱からルミナに付けてあったシオンが顔を出した。
「ルミナ様は自室においでます」
他にも何か言いたそうな彼女をジークはじっと見つめた。
「……ルミナ様は強い方ですね」
シオンはジークから目を逸らし、口ごもりながらもそう呟いた。
「シオンがそう言うなんて珍しいな」
ジークは続きを顎を差して促す。
「海に行った後、近くの村に寄りたいと言われたので、止めたのですが、行くことになりました」
気の強そうなルミナらしいとジークは頷く。
「思っていた通り、ルミナ様は歓迎されず、白い目で見られていたのですが……」
ルミナは堂々と背筋を伸ばし、村を見て回り、シオンにあれこれ質問をしてきたと言うのだった。
「最後には謝辞を述べて村を出て行かれ、帰る道中、会う方々に声を出して挨拶しておりました」
「……」
ジークはなんとも言えない顔で、額に手をやった。
「あっはっはっはは。酔狂ですねぇ。彼女は何をしたかったのでしょう?」
ユーリは笑いすぎて出た涙を指で拭う。
「分かりませんが、肝の座り具合に驚きました」
シオンが神妙な顔をしている。
(座りすぎだろう……)
あの淋しそうな寝顔は何だったのか。
ジークは頭が痛くなった。
(偽の婚約者なのに、目立ってどうする気なんだ)
ジークは偽の婚約者なので、目立つことは避けてほしかった。
言わずとも、目立つ行動など見知らぬ地ではしないだろうと鷹を括っていた。
「入るぞ」
ルミナの部屋のドアを開けて入ると、ソファに座る不服そうな顔をした彼女と目がった。
「ノックくらいしたらどう?」
「今度から気をつけよう。何を怒っている?」
ジークが許可なく隣に座ったが、今度はルミナは何も言わなかった。
「……歓迎されないだろうとは思っていたわ」
ルミナはクッションを膝に抱く。
「でも、小さい子にまで私を悪魔だと教えるのはどうかと思う!」
海岸で、カニを見つけた男の子をほほえましく見ていると、その子の母親が『悪魔に近づいちゃ駄目』と言ったのだ。
「それに怒って村を見て回ったのか……?」
「そうよ! 私はただの人だもの! シオンさんに教えてもらわないと、この国の常識も知らないただの人だもの!」
それにしても……と、ジークは思い、真剣に怒っているルミナに笑いが込み上げてきた。
「笑ってるでしょ?」
横にらみにされるが、怖くはない。
「いや、すまない。ルミナが真剣なのはよく分かったのだが、すごい行動力だと思って……。嫌な目で見られただろう?」
笑いを懸命に抑えながら、ジークはルミナに寄りそおうとした。




