ep.04―3
「ありがとうございます。もう戻って大丈夫です」
「……恋しくはないのか?」
自分の口から出た言葉にシオンは驚き、はっと口に手をやる。
ルミナは意外な一言に目を丸くしてから、嬉しそうに笑った。
「恋しいけど、今は帰れないから」
諦め。
でもそれは決して後ろ向きな諦めではないのだとシオンは感じた。
(彼女にも理由があるのだろう)
ルミナの事情は知らない。
温室育ちののほほんとしたお姫様だと思っていたが、思っていたより芯のある女性なのだと、シオンはルミナの印象を少し、自分の中で書き換えることにした。
◇
ヴァルハラの男児は剣術を身に着ける義務がある。
ジークも若い者への指導を行っており、朝から夕暮れ時までずっと城を空けている。
自分も体が鈍らなくて良いと、いつも前向きな気持ちで帰城するのだが、今日は落ち着かなかった。
「眉間に皺が寄ってますよ」
ユーリがツンと眉間をつついてくる。
「……」
ジークはそれを鬱陶しそうに手で払った。
「おぉ、こわ。気になるんですか?彼女のことが」
ジークは足を止め、ユーリを見た。
ユーリは代々、ヴァルハライトに使えている家柄であり、城壁の傷跡を良く思っていない家々の筆頭だと言っても過言ではない。
「……彼女はたった一人でこちらに来ている」




