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“視える”王女と、隠された真実~元敵国の第二王子は何故か私にだけ笑みを見せる〜  作者: 間波 結衣実


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ep.01 風の便り


 ――ヴァルハラへ嫁ぐことが決まる少し前。


 ルミナはまだ、精霊たちと過ごす穏やかな夜を楽しんでいた。



「ふー」


 ルミナは読んでいた本に栞を挟み、椅子に腰かけたまま背伸びをした。


 癖のある腰まで届きそうな黒髪を揺らし、窓に手をかける。


 そろそろ雨期になるが、まだ雨の気配は遠く、夜風が心地よい。


「うふふ。仲良しね」


 目の前を追い駆けっこしながら飛んでいく、風の精霊にルミナは目尻を下げた。


 ルミナの住む島は精霊の加護を受けており、住む者は皆、何らかの精霊が見える。


 鍛冶の家柄なら火の精霊の加護を受けており、火の精霊なら見えるのが普通であるが、ルミナはどの属性の精霊も見る事が出来る。


 それは、この珍しい金色こんじきの瞳のせいなのだとルミナは思っている。


 瞳の色で何属性の加護を受け取っているのか分かるのだが、金色は珍しく、文献で見る限り"光"属性の加護を受けているもっていることになる。



(だけど……)



 ルミナはぎゅっと胸元を掴み、ふぅと深い溜め息をついた。


(今、読んでいた本にも光属性の人はある程度、病気を治せたみたいなのに、私は……)


 ルミナがもたらす奇跡は、かすり傷を塞ぐ程度。


 病を患う人の前では、ただ何も出来ない人であった。


 チラリと、壁に飾られた曾祖母の肖像画に目をやる。


 そこには自分とよく似た、夜の帳を溶かしたような黒髪の女性が描かれていた。


(大おばあ様……)


 ルミナは眉尻を下げて、金色の瞳でそれを見つめた。


 軍事国家『ヴァルハラ』の城壁に傷を付けたという曾祖母の伝説は、今のルミナにとって、ただの重荷でしかなかった。


(同じ髪色なのに、私は――)


 胸の奥から、冷たい悲しみと無力感がじわじわと込み上げてくる。


『王女様、ありがとうございます!』


 傷を治した民が向けてくれる、純粋な笑顔と感謝の言葉。それが今のルミナには、何よりも痛かった。期待されるたびに、応えられない自分への不甲斐なさが、鋭い棘となって胸に突き刺さる。


(みんなを騙しているみたいで、苦しい……)


 どうして自分はこれしかできないのか。どうすればみんなを本当の意味で救えるのか。


 それを知りたくて、ルミナは夜毎、精霊と人が歩んできた古い歴史書を捲り、必死に答えを探し続けていた。


(だけど、載ってない! 私は一体どうしたら良いの?!)


 もう嫌だった。


 病に苦しむ人の前で、何も出来ないのは。


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