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プロローグ
私は嫁ぐ。
かつて敵国だった島――ヴァルハラの第二王子の元へ。
揺れる船の上で見えてきた城壁を、私は睨むように見据えた。
肩に乗った風の精霊・ウィンが、そっと私の頬に触れる。
『ルミナ、もうウィンは無理なの』
その声は震えていた。
『あの島は“死”の気配が強くて、苦しくなっちゃう』
死の気配……。
ウィンの言葉に体が強ばる。
そんな気配のするヴァルハラに今から私は行く。
自分が嫌悪するあの島に、自分の従者を連れていきたくなくて、私は一人で行くことを決めた。
でもそれは、ウィンがいるって勝手に思ってたから、出来たことなんだけど……。
「ウィン、ここでサヨナラだね。私なら大丈夫だよ」
強がって笑ったけれど、指先は震えていた。
ウィンは青白い光を揺らしながら、私の手から離れていく。
『ルミナ、無事でいてね……』
遠ざかる光の粒。
その向こうに、私の愛する緑の島アルカディアが見える。
喉の奥が熱くなり、視界が揺れた。
でもも、泣かない。
敵地で涙を見せるわけにはいかない。
私は深く息を吸い、ヴァルハラの城壁を見据えた。
――私は、屈しない。
精霊の加護を持つ国―アルカディア―の王女として!




