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“視える”王女と、隠された真実~元敵国の第二王子は何故か私にだけ笑みを見せる〜  作者: 間波 結衣実


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ep.03―6

 近づくルミナは、侍女の誰かが用意したであろう白い絹の夜着姿だ。ジークはどこを見たら良いのか視線を泳がす。


(興味はないと言ったが、警戒心というものがなさすぎじゃないか?)


 そんなジークの思いなど露ほども想像していないルミナは、見れば見るほど整っているジークの顔に興味津々であった。


(肌なんて、この布くらいすべすべなんじゃない?)


 触ってみたいと思ったが、さすがに失礼かなとルミナは伸ばした手を引っ込める。


 何故、自分に手を伸ばしたのか疑問でしかないジークは、息を吐いてぶんぶん首を振った。


「もう寝よう。ルミナはそのまま左側を使うと良い」


「わかったわ」


 なんだか不思議な気持ちでルミナは布団へと入った。


(基本的にヴァルハラの民は失礼で、感情が読めないけど、ジークがまだ話せる人で良かった。それに……)


「あ!! 船!」


「ん?」


 布団に入ったジークが寝返りを打ち、ルミナに顔を向けた。


「明日、海に出ても良い? 闇の精霊について聞いてみるわ」


 ルミナも布団に入ったまま、ジークの方に体を向ける。


「構わない。シオンを護衛として連れて行くと良い。……君は」


 ジークは一度口をつぐみ、少し目を伏せ、再びルミナに黒い瞳を向けた。


「ルミナには俺の婚約者という肩書がある。しかし、この島の住民から好意は持たれていないだろう。万が一に備えて、決して、一人で行動するな。良いな?」


「うん……」


 ルミナは布団にもぐりたくなった。


 純粋にジークは自分を心配しているのだろうか、いや、それは自惚れに違いないと、高鳴りそうな胸に言い聞かす。


(一応身を預かっている立場だもの。メンツだってあるわ)


 ルミナは気持ちを落ち着かせようと、深く息を吐いた。


「本当なら俺が付いてやれれば良いのだが……」


(”俺が付いてやれれば良いのだが”?!)


 その後、何やらジークは言っていたが、ルミナは堪らなくなっていそいそと布団に潜る。


「……」


 急に潜り始めたルミナを、なんとも言えない表情でジークは見つめた。


(俺は自分でも、他人の心の動きには鈍い方だと思っているが、何故、彼女は急に潜り始めたのだろうか……?)


 う~んと、ジークは自分の言ったセリフを思い出してみるが、特に変なことを言った覚えはなかった。


(そもそも民族が違うのだから、彼女の感性など推察するのは難しい)


 考えることを放棄したジークは布団を捲る。


「きゃっ!」


 熱くなった顔を隠す為に潜っていたルミナは、布団を剝ぎ取られ、慌てふためきながら布団の底へと潜ろうとしている。


(新種の小動物みたいだな)


 ジークはクスクスと笑い、手を離す。


 途端に、ルミナはその布団で自分を包み込んだ。


「何をしている?」


 赤面した彼女の顔を思い出しなら、ジークは笑いを含んだ声で問う。


「べ、別に……」


 布団の塊がもぞもそと動く。


「布団が二枚あって良かったな。ルミナはそのままその布団を使うと良い」


 そう言ってジークがサイドテーブルのランプを消すと、部屋に暗闇が満ちる。


(王子様みたいな顔で、姫を守るみたいなセリフ吐くから、聞いてた私が恥ずかしくなっちゃったじゃない)


 事実、王子と姫である。


 ルミナは自分の好きなラブロマンス物語のようだと思い、そんなセリフを吐けてしまうジークをこそり布団から覗き見た。


 しかし、ジークはルミナに背を向けており、顔が全く見えない。


(ちょっと残念……)


 ルミナは布団から出ると布団を直し、寝転がる。


(今日は色んなことがあったわ。アルカディアの皆と別れて、それからウィンとも……ユーリさん、私が嫌いなんだよね? 言葉が棘みたいに刺さるもの。私がヴァルハラを野蛮だと嫌っていたみたいにきっと、ヴァルハラの民も、アルカディアを嫌いなんだから仕方ないよね……。シオンさんも私のこと、嫌いなのかな……本当はジークだって私のこと、嫌いなのかも……)


 精霊の全く見えない異国の地で、ルミナは悲しみと、淋しさに身を沈めながら眠りについた。


「……」


 規則正しい寝息を耳に、そっとジークはルミナを覗き見た。


 眉を下げて眠る彼女はどこか不安げで淋しそうであった。


(争い合った国に一人で乗り込んでくるとは気丈夫なお姫様だと、あの金色の瞳を向けられた時思ったが、淋しくはあるよな)


『1ミリも興味ないわっ』


 この時も威勢の良い姫だと感心した。


 ”ヴァルハラに屈辱の跡を付けた魔女の孫娘”


 それがこの国のルミナに対する認識。


 きっと皆、優しくないだろうと思うと、この娘が哀れであった。


(せめて俺だけは味方になってやりたい)


 それがこの国に一人でやってきた勇敢な少女に対する敬意だと彼は思うだった。

 

エピソード3も終了です。

大嫌いなヴァルハラの自分の一番近くにいる人物が、話が通じそうな人であり、少しほっとしたルミナ。

ジークもジークで、自分の状況をただ嘆く姫でないことに安堵するとともに、孤立するだろうルミナの味方になってやりたいと思ってます。

……文章うまくなりたいなぁ。

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