ep.03―5
「それなのに、アルカディアには黒の瞳の者はいない。おかしいと思わないか?」
ここまで言ってやっと、ジークはルミナの顔を見た。
ルミナは口を開けたまま、じっとジークに目を向けている。
(しまった。喋りすぎた……)
多弁な方ではないが、推理・推論になると饒舌になる癖を自覚しているジークは頭を掻いた。
「す、すごい! ジークって頭が良いのね!」
ジークの心中なの分からないルミナは、目を輝かせ彼に食い付く。
「私、そんなこと、考えたことがなかったわ。ここには精霊がいないみたいだから、精霊に闇の精霊について聞けないのが残念ね」
どうしたら確かめられるのか唸るルミナに対して、今度はジークが瞬きをした。
(”ジーク”と呼び捨てにされるとは……)
無礼であるが、ルミナを見ていると、怒る気にはなれなかった。
「ねぇ、少し船で……」
領海を出れば、水の精霊と話が出来るかも知れないと、ルミナが顔を上げると、ジークが無言で自分を見つめていた。
(な、何?)
ルミナが身構えると「ルミナ」とジークに名を呼ばれた。
「何?」
苗字などないアルカディアで育ったルミナは、純真無垢な丸い金色の瞳でジークを見返す。
「いや……」
名前で呼ばれたから呼び返すなど、幼稚なことをしたと、ジークは目を逸らした。
その伏した目の、長いまつ毛に関心を引かれたルミナは彼に少し近づく。
(なんで男の人なのに、まつ毛、長いのかしら?)




