ep.02―5
「わっ」
驚き立ち上がろうとするルミナの腕を引いて、ジークはそれを阻止した。
ジークは手はひやりとしている。
ルミナの鼓動が速くなり、顔がどんどん熱くなっていく。
(な、なに―)
「言っておくが、俺は君に1ミリの興味もない」
はっきりとジークの声がルミナの鼓膜に響く。
「……1ミリも、興味がない……」
ルミナは呆然とジークの言葉繰り返した。
「あぁ。1ミリも」
(そこ、繰り返さなくていいんじゃない?!)
少しでもドキッとした自分がバカだったと、ルミナはソファにボフンと腰を下した。
「私も、1ミリも興味なんてないわっ」
金色の瞳でジークを横睨みする。
(ヴァルハラの男はどいつもこいつも失礼!)
「はは。意外と威勢が良いのだな」
ジークは目を細め、愉快そうに笑った。
(笑ってる! 一応、笑うのね……)
冷たい印象の彼が、愉快そうに肩を揺らして笑うのが意外であった。
「あぁ、そうだった。最初から俺の目を見つめ返していたな。それで良い」
そういうやいなや、ジークはルミナの領頬を片手で鷲掴んだ。
(な?!)
「気に入った。泣きわめくつまらん姫様ではなく心底安心した。ここでは婚約者という肩書があるから、公の場に一緒に赴くこともあろう。その時も、その威勢の良さを忘れるな」
ポイっとジークはルミナの頬を開放し、グラスの水を飲み干した。
(な、ななななななんなのよ! なんて男なの?!)
あまりの出来事にルミナは、非難を浴びせることも出来なかった。
「そうそう、ただで守ってもらおうだなて考えてないだろうな?」
「興味ないっていったじゃない!」
ルミナは自分の肩を自分でギュッと抱きしめた。
「……安心しろ。十も年下の君に何かしようと思うほど、俺は困ってはいない」
ジークは何のことか考え、あぁと気がつくと、そっけなくそう答えた。
(……仮りだけど、婚約者にそんなこと言っていいの? 要は、イイ人いるってことよね……?)
ルミナは軽蔑の眼差しを向けた。
「言いたいことがあるなら口に出したらどうだ?」
再びジークは無遠慮にルミナの頬を掴み、瞳を覗き込む。
「むー……」
指摘すべきか、彼の瞳を見ていてルミナは気づいたことがあった。
(目、黒っていうより、深い深い藍色みたいな色)
どこまでも深い深海のような瞳だと思った。
「……?」
ルミナに見つめられ、ジークは手の力を緩めた。
「綺麗な色ね」
なんのことか分からず、眉根を寄せたが、すぐに彼女が自分の瞳を食い入るように見ているのに気が付いた。
(それは……君もだろう……)
ジークはルミナの金色の瞳を見返す。
どんよりとした雲の多いヴァルハラでは滅多に見ることのできない、太陽の煌めきのような瞳だと思った。
二人は暫く、黙って互いの瞳を見つめた。
エピソード2終了です。
元敵国の王子は格好いいですが、無礼ですね。
でも、ルミナを"君"と呼ぶのは彼なりの配慮です。




