第十二章 泥濘の宴
到着した時には、既に夜だった。
見上げれば、頭上に広がる漆黒の夜空を鋭く切り裂くように、古の遺跡群が黒々とした異形の影を乱立させている。
風が吹くたび、風化した石組みの隙間を吹き抜けるそれは、まるで遠い異界の底から漏れる呻きのように、乾いた地表を湿らせて渡っていった。
その巨大な遺跡群の麓。
闇の底にぽっかりと口を開けた、地底の奈落へと続く大穴の前に、彼女たちは立っていた。
手にした松明の火が橙色の爆ぜを上げ、押し寄せる闇をわずかに、しかし怯えるように押し返す。
揺らめく焔の光線が、リッカの引き締まった横顔と、その傍らに立つ『葬槍の姉妹達』の冷やかで武骨な甲冑の照り返しを、闇の中に白々と浮かび上がらせていた。
「……ここですね、姉様」
ヒルダが、低い声で呟く。
松明を掲げる彼女の手元で、細身の槍の先端が不気味に揺らめく火影を浴びて、蜥蜴の鱗の如く鈍く煌めいた。
「あぁ。……奴らの巣窟だ」
リッカの瞳には、夜の闇すら射抜くような、凍てついた殺気が宿っている。
背後に控えるアイネが、肩に担いだ重槍の位置をグッと直し、重厚な革甲冑を軋ませた。
「へっ、わざわざこんな不気味な穴ぐらに引きこもりやがって。炙り出して全員叩き潰してやるぜ」
「ねえ、アイ姉! ここ,なんだかすっごく嫌な感じがするよ? どこまで深さが続いてるかも分からないし……うう、奥のほうから変な気配がプンプン漂ってきて気味が悪いよーっ!」
ミサーシャが底の見えない穴を覗き込み、小さく身を縮こまって嫌そうに顔をしかめた。
「けっ、ビビってんじゃねえよ。奥からプンプン匂うってんなら、下で待ってる奴らをぶちのめす絶好の目印じゃねえか」
「騒ぐな。周囲に音が響く」
ヒルダの冷ややかな一言が落とされ、アイネが肩をすくめると、ミサーシャも慌てて口を両手で覆って黙り込んだ。
「……行くぞ」
リッカの静かな号令とともに、全員が手にした松明と槍の柄を、湿った手の平で硬く握り直す。
足元には半ば風化した古い石階段が、まるで巨大な怪物の口腔へと引きずり込むように、暗黒の地下深くへと口を開けていた。
第一層は、かつて神殿の回廊であったことをわずかに窺わせる、削り出しの巨柱が整然と並んでいた。
だが、地上を包んでいた月明かりすら届かない漆黒へと一歩踏み込むごとに、空気の性質がまるで生き物のように牙を剥き始める。足元の石畳はねっとりとした冷たい湿기를帯び、壁面に這う黒カビの生えた冷気が、甲冑の隙間からじわりと肌を刺した。静寂のなか、四人の踏みしめるブーツの足音だけが、迷宮の奥底へと不気味に叩きつけられて反響していく。
らせん状の階段を下りきった第二層では、人工的な石組みの景観はすでに崩れ果てていた。
いつの世のものか、落ちた天井の落石が通路を塞ぎ、倒壊した石柱を這うように乗り越えて進まねばならない。湿度はさらに増し、足元の亀裂からは生温かい地下水がじわじわと滲み出していた。松明の火を近づければ、壁の窪みにびっしりと蠢く水カビと小さな湿生虫が這い回り、ミサーシャが小さく悲鳴を喉の奥へと噛み殺す。
さらに斜度を増した下り坂を抜け、第三層へ足を踏み入れた瞬間、周囲の壁面は完全に生々しい泥と岩肌へと姿を変えた。
掘削の痕跡すら露骨な荒々しい洞窟の様相であり、通路の天井は低く落ち込み、幾重にも分岐して探索者の理性を狂わせにかかる。
「……空気が、重くなってきたな」
アイネが鼻を鳴らし、鬱陶しそうに首を振る。
古土と地下水の匂いだけだった湿気に、次第に異様なものが混じりはじめていた。それは甘ったるい肉の腐敗臭と、刃物を擦り合わせるような、鋭い酸性の臭気だった。
「油断するな。足元に罠の形跡がある」
ヒルダが松明をかざし、歪んだ岩床に残された細い鉄線の断線跡と、壁面に穿たれた無数の血塗られた矢穴を指し示す。
「設置された罠はすでに作動済み、あるいは破壊されています……追手を警戒して仕掛けたものの、罠を維持する猶予すら捨てて、奴らはさらに下層へと引き籠もったようです」
「街に逃げ延びてきたあの男が語っていた通りですね……『崩落の隙間』は、この下……第四層のはずです」
湿気と悪臭が肌にねっとりとへばりつく暗がりをさらに降りゆくと、やがて彼女たちの行く手を阻むように、巨大な岩盤が崩れ落ちた行き止まりが現れた。
その歪んだ岩の隙間から吹き出してくるのは、肌を撫でるだけでぞっとするような、重く湿った焦げた血の匂いだった。
リッカが短く顎でしゃくると、アイネが重槍の柄で崩落した岩の隙間を荒々しく押し広げ、滑り込みやすくなるよう足場を固めた。
体を極限まですぼめ、狭窄した岩の亀裂を這うようにくぐり抜ける。
湿った暗黒を抜けたその瞬間──唐突に、周囲の圧迫感が消え去り、底知れぬ広大さを孕んだ空間の気配が、彼女たちの全身を包み込んだ。
視界が、急激にひらける。
そこは、古代の地下大聖堂を丸ごと闇夜にくり抜いたかのような、地下第四層の大広間であった。
天井ははるか高みの暗ガリに溶けて見えず、足元には巨大で平滑な石畳がどこまでも広がっている。
そして、その広大な闇の腹の中に──それは、ただ静かに沈黙していた。
巨躯。
ヌメヌメとした冷たい粘液に覆われた、巨大両生類を思わせる異形の獣。
その醜悪な背や側腹には、人工的に削り出された巨大な青黒い人造魔法石がいくつも生々しく埋め込まれ、怪物の禍々しい鼓動に合わせて、ドクン、ドクンと嫌な光を脈動させていた。
「……なんなんだよ、こりゃ」
アイネが重槍を構え直し、吐き捨てるように呟く。
その声の反響が石畳の果てに消えぬうちに、広間の上階に位置するバルコニー状の石廊から、パチ、パチと、どこか芝居がかった乾いた手拍子が降ってきた。
「ほう……よくぞ無事にたどり着いた。ようこそ王都の精鋭──『葬槍の姉妹達』よ」
松明の火影すら届かぬ高台から、臙脂色の長袍を纏った男が、泥水のようなぬめりとした笑みを浮かべて見下ろしていた。
男は優雅に両手を広げ、暗がりへ向けて語りかける。
「噂通りの勇猛果敢な猛者どもか、それとも疑いを知らぬ無垢な小娘の集まりか……ククッ、どちらにせよ見事な歩みだ。まんまと罠の底まで足を踏み入れてくれたのだからな」
「……なに?」
リッカの手元で、銀槍がキリリと低く構え直される。男は満足そうに薄い顎を撫で、バルコニーの欄干に身を乗り出した。
「感謝するぞ、娘ども。我が最高傑作の人造魔法石をさらなる高みへ至らせるには、貴様らのような強い生体エネルギーを持つ精鋭の『命』が必要だったのだ。そこらの雑魚を幾ら吸い上げたところで、このジュエルニュートを目覚めさせるには至らんからな……!」
男はうっとりと広間を見下ろし、その瞳に狂気の光を深く湛える。
「人造魔法石は、異形の生命を生み出し動かすための核……そしてその石の純度を高め、真の力を引き出すには、より多くの濃密な生命を吸い上げさせねばならん。貴様らの極上の生命力を吸って完成したこのジュエルニュートを王都の城郭内へ放てば、都の民の生体エネルギーを残さず吸い尽くし、至高の魔法石が完璧な輝きを放つのだ!」
男が冷酷な嘲笑とともに指を鳴らした瞬間、広間の影という影から、ズルリと歪んだおぞましい輪郭が立ち上がった。
異形の肉体の下に青黒い結晶の塊を蠢かせた、かつて人であったものたち──生体吸引の傀儡どもである。
「さあ、せいぜい抗え! 我が忠実な吸血管どもよ、精鋭たちの命を余さず吸い上げ、この子の核へと捧げるのだ!」
獣のそれとも違う、湿った呻きとともに、異形の群れが一斉に襲いかかってくる。
リッカの閃光のような突きが先頭の眉間を穿ち、乾いた音を立てて頭蓋を破壊する。そのまま柄を引き抜きざまに旋風を繰り出し、二人目の首を深く掻き切った。
「どきなッ、雑魚どもが!」
左手から飛び出したアイネが、身の丈を超える重槍を横薙ぎに振り抜いた。重厚な衝撃音とともに前衛の三体が肋骨を叩き砕かれ、石柱へ激突してぐにゃりと折れ曲がる。
だが──倒れない。
首を半分跳ね飛ばされ、頭蓋を砕かれたはずの傀儡たちが、骨の砕ける不気味な音を立てながら、まるで操り人形のようにゆっくりと再び立ち上がってきた。
その傷口から血は流れない。代わりに、肉の亀裂から青黒い結晶の触手が這い出し、引き裂かれた肉体をねっとりと無理やり繋ぎ合わせていく。
「……なっ!? 頸椎を叩き割ったはずなのに……っ!?」
アイネが舌を打ち、重槍を持ち直す。
切っても、突いても、叩き潰しても、痛みすら覚えずに無限に立ち上がってくる異形ども。
それだけではない。
傀儡の伸ばした爪や角が、姉妹達の鎧の隙間、生身の肌をかすめるたび──その爪の先から青い光の糸線が伸び、彼女たちの肉体から目に見える形で、温かな生命力がズルリと引きずり出されていく。
「な、なにこれ……!? 体から……力が抜けて……っ!」
後衛に配置されていた若い隊員のひとりが、恐怖に満ちた悲鳴を上げた。
襲いかかる傀儡の腕に槍の柄を掴まれた瞬間、その接触面から紫黒の光束が走り、彼女の肌から急速に血の気が失われていく。
引き抜かれた命の奔流は、床の亀裂を這う血のような導管を伝い、大広間の中央で静かに待つジュエルニュートの体内へと勢いよく流れ込んでいった。
「ははは! 気づいたか! あいつらは決して命を落とさん! 貴様らの刃を受け止め、肉を刻まれるたびに、貴様らの極上の生命力を吸い上げる『管』なのだよ!」
黒幕の嘲笑が、広大な地下聖堂に嫌らしく響き渡る。
「あぁぁぁっ……助けて、姉様……っ!」
一度捕まれば最後、数体の傀儡に取り付かれた妹たちが、干からびるように力を奪われ、次々と石床へ膝をついて倒れ伏していく。
吸い上げられた生体エネルギーが注ぎ込まれるたび、沈黙していた怪物の背や腹に埋め込まれた人造魔法石が、不気味な脈動とともに激しい蒼光を放ち始めていた。
「くそがッ……離せッ! 妹たちから離れろッ!」
アイネが激昂し、重槍を狂ったように振り回して傀儡どもを薙ぎ払う。
しかし、幾度叩き潰しても無限に蘇る泥沼の攻防に、彼女たちの体力が削られ、傷を負うごとに生命力が根こそぎ奪われていく。
「陣形を保て! 接触されるな!」
ヒルダが血相を変えて叫び、細身の槍で正確に関節を打ち抜いて離脱を図るが、立ち上がる死体とエネルギーを奪われた妹たちの死角をどうしても塞ぎきれない。
そして──満たされた強者の生命力を糧にして、ついにジュエルニュートが地を揺らす咆哮を上げた。
その暴威が放つ凄まじい衝撃波が広間全体を叩き伏せる。地を揺るがす轟音とともに天井や壁面が激しく震え、リッカたちが這い出してきた第四層への入口──あの狭い岩の亀裂を塞ぐように、頭上の巨大な岩盤が崩落し、完全に閉ざされてしまった。退路が断たれ、葬槍の姉妹達は完全に逃げ場を失う。
荒狂う太い尾の一撃が、アイネを襲う。
交差させた重槍で辛うじて受け止めたアイネだったが、生体エネルギーを吸い取られていた体にその超質量は耐え切れず、激しい衝突の余波とともに十メートル近く弾き飛んで、冷たい石垣へと激突した。
「がふっ……っ! 引っ込んでろ……槍を手放すんじゃねぇ……!」
右腕を痺れさせ、口から鮮血を吐きながらも、アイネは歯を食いしばって立ち上がる。
リッカが鋭い踏み込みで怪物の胸元へ銀槍を突き立てるも、蓄積された呪詛の衝撃が稲妻となって柄を伝い、逆流した雷撃がリッカの手元を焼き焦がして槍を激しく弾き飛ばした。
「ッ……!?」
「リツ姉!」
ミサーシャが泣き叫びながら飛び込むも、湿った巨躯から撒き散らされた強酸性の粘液と熱風の連打に、両腕の肉が耐え切れず痙攣を起こす。
怪物の背の石から撒き散らされた赤黒く加熱された結晶の散弾が広間を覆い、空中から一撃を狙おうとしたヒルダの胸甲を叩き割り、そのまま冷たい石床へ撃ち落とした。
切っても死なない傀儡に生体エネルギーを吸い続けられ、覚醒したジュエルニュートの圧倒的な暴力に晒され──。
葬槍の姉妹達の洗練された陣形は、完全に崩壊した。
下位の妹たちは力無く倒れ伏し、主要な四人もいまや満身創痍。
膝をつく妹たちの前で、巨大両生類が禍々しい粘液を垂らしながら、丸呑みにせんとする巨大な顎を開いた。
絶体絶命。
無防備なリッカの頭上へ、逃げ場のない死の重圧が、黒い翼のように覆いかぶさろうとしていた──。
◇
同じ頃。
夜の冷気が容赦なく吹きすさぶ遺跡群の入口に、三つの影が静かに降り立っていた。
「……ここだな」
アッシュが足を止め、地底へ通じる暗黒の大穴の底を覗き込む。
ハセミが、アッシュとシェ・ダライの先頭に立ち、手元の提灯の心細い灯りで、複雑に崩落した大穴の入り口を照らし出した。
「いつ来ても気味の悪い所だねぇ……地下の深い闇に向かって、魂まで吸い込まれていきそうだよ……葬槍の姉妹達も、吸い込まれてないといいけどねぇ」
シェ・ダライは大穴の暗黒をじっと見つめたまま、身体をわずかに沈める。背負った無骨な重剣の固定具を微かに鳴らし、戦いの気配を感じ取ってその走破の速度を一段引き上げた。
「ハセミ、この下か!?」
アッシュの問いに、ハセミは揺れる提灯を高く掲げたまま、短く顎をしゃくった。
「あぁ、この崩落口を抜けた先が第四層さ。足元に気をつけて、お行き!」
ハセミの手慣れた先導のもと、第一層の回廊、第二層の崩落エリアを次々と踏破し、三人は第三層の荒々しい洞窟地帯へと疾走していく。
シェ・ダライの重い踏み込みが石床を打ちつけ、洞窟の壁面に低く反響する。二人は阿吽の息で、地下最深部──第四層へと突き進んだ。
第三層の最奥。ハセミが案内した先には、先ほどのジュエルニュートの暴れによってさらなる崩落が起き、ぶ厚い岩盤が第四層への入口を完全に塞いでいた。
その岩の亀裂の隙間から吹き出してきたのは、肌を焼き切るような魔力の衝撃波と、地鳴りのような怪物の咆哮だった。そして、岩の奥から漏れ聞こえてくる──葬槍の姉妹達の悲痛な悲鳴と、絶望に満ちた怒号。
亀裂の向こうの只事ではない異変を感じ取り、アッシュの双眸が暗闇の中で鋭く光を放つ。
「ハセミ、下がってろ!」
アッシュが一歩踏み込むと、静かな詠唱と共に左手の指先で印を結び、今にも爆ぜそうな禍々しい火球を生み出す。それを、塞がれた崩落の岩盤へと目掛けて思い切り投げつけた。
重い地響きを伴う破裂音とともに岩石が粉々に砕け散り、吹き荒れる土煙を両手で押し分けて、三人は第四層の大広間へと跳び込む。
シェ・ダライは背負うた重剣の揺れを抑えながら、地響きを立ててアッシュの背後に滑り込む。
視界に飛び込んできたのは、まるで地獄絵図のような凄惨な光景だった。
冷たい石床に倒れ伏す妹たち。主要な槍士たちも血を流し、リッカの銀槍は遥か手元から無惨に弾き飛ばされていた。
そして、逃げ場を失った無防備なリッカの頭上から──。
狂ったジュエルニュートが、おぞましい粘液の滴る大顎をまさに振り下ろそうとしていた、その時
「おぅおぅ、派手にやられちまってんなぁ。大丈夫かよ?」
緊迫しきった大広間に、まるで今日の晩飯でも訊ねるかのような、場違いなほど軽薄で、飄々とした声が響き渡る。
アッシュは頭上から振り下される粘液塗れの大顎など意にも介さず、ひょいと首を傾げて、絶望に染まるリッカを見下ろした。
「やっぱ戦人にゃ、こういう手合いは苦手かい?」
言いながら、アッシュはリッカの脇にサッと腕を差し入れると、まるで木の葉を扱うかのような軽妙な旋風に乗せて、彼女の身体を後ろへひらりと引き抜いた。
頭上で迫っていた大顎が虚空を噛み砕き、鈍い衝撃とともに石床の表面を抉り取る。
「……っ! 貴様ッ、何故ここへ……っ!」
背後へ着地させられたリッカは、悔しさと屈辱に唇を噛み締め、目の前のふてぶてしい背中を激しい眼光で睨みつけた。相変わらずのつかみどころのない態度と、あまりにも鮮やかな手際の良さ。その圧倒的な実力が、今の彼女の誇りを痛烈に抉っていた。
アッシュはそんなリッカの視線すら涼しく受け流し、狂奔するジュエルニュートに向き直りつつも、そのさらに奥──バルコニーから冷ややかに見下ろす臙脂色の長袍を纏った男へと視線を送る。笑みを崩さないまま、ひらひらと片手を振ってみせた。
「……で? 何やら楽しそうに暴れてんじゃねーか。俺も交ぜてくれよ、大将」
見下ろしていた長袍の男は、アッシュの不躾な態度に不快げに眉をひそめると、底冷えのする蔑みの笑みを浮かべた。
「ふん、何処の馬の骨か知らぬが、貴様もあわせて吸い上げてやるわ……消せ」
男が冷たく指先を鳴らすと同時に、背と腹の魔石を禍々しく脈動させたジュエルニュートが、地鳴りのような咆哮とともにアッシュへ向けてその巨躯を躍らせた。
「リッカ達を頼む」
アッシュは背後に短く指示を放つと、シェ・ダライとハセミは崩れ落ちている姉妹達のもとへと素早く駆け寄った。
そして、擡げた鎌首から振り下ろされたジュエルニュートの大顎をひらり紙一重でかわすと、アッシュは腰の曲刀を引き抜き、ジュエルニュートの眼前へ躍り出た──。




