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「TOKIの世界譚 」宇宙の神秘と日本神話な物語  作者: ごぼうかえる
四話

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母と娘4

 サキは再びまどろんでいた。

 「あれ? またちっこいのがきたね」

 「あ、サキ……大きい方の……」

 サキは年相応の大きくなったサキを見上げる。


 「さっき、消えたけどまた、現れたね」

 「あ……あのさ」

 サキは大きいサキをなんとも言えない顔で見上げている。


 「なんだい?」

 「やっぱりお母さん、止めること、できなかったよ」

 「そうかい。それは感情から? まあ、止めらんないのもわかるさ」

 大きいサキはサキに同情する。でも、彼女は肯定も否定もしない。そしてどこか達観している。


 「ねぇ、あんたさ、もうすぐあたしと混ざり合って、あたしごと消えるって言ったらどう思う?」

 サキは少しだけ震えながら大きいサキに質問した。


 「……うーん。別に。あんた、あたしなんだろ?」

 「別に、で、終わる話じゃないよ! あんたはあたしじゃないよ! あんたはもう、あたしじゃない……。何て言ったらいいんだろう……」


 「うん、まあ、あたしはあの神社で勝手に飲み食いしちゃあ、やっぱダメだよねぇ」

 「そういうことを言っているわけじゃない! あたしとあんたは……」

 サキは涙をこぼしながら抜けた表情をしている大きいサキを睨む。


 「あんたは! あたしと別な人生を歩んでしまった別の人格で! あたしとあんたはそれぞれ違う感情を持った別の個を持った存在なんだよ!」

 大きいサキは少しだけサキの表情に怯えながらも、頭をかく。


 「まあ、そうなんだろうけど、それが今、何の関係があるのかな? あたしとあんたが別の個を持っていたとしても、もう別々になることはないんだろ? あんたはあたしだし」


 大きいサキは苦笑いをしながら必死なサキを見ていた。


 「……自分が……消えるのが……怖くないの?」

 サキは震えながら大きいサキにそう言った。


 「怖くないよ。あたしはあんただし」

 「あんたは……強いね。強すぎる。まるで……あたしじゃないみたい」

 サキの言葉に大きいサキは軽く笑った。


 「いや、あんただよ。あたしはてきとうなサキ。あんたの中にある感情なんじゃないかい? あんたにもあたしがいるだろう? ねぇ?」

 大きいサキはサキを強い瞳で見つめた。


 「……あのさ、もう一度……聞くんだけど、あたしはお母さんを止めるべきかな……」

 サキは大きいサキに先程と同じ質問をした。


 「うーん、あんたのお母さんがなんか取り返しのつかないこと、やっているなら止める方がいいんじゃないかと思うね。あんたはどう思う?」

 大きいサキはサキに聞き返してきた。


 「……っ。大人のサキ、足が」

 サキは大きいサキの足元が徐々に消えているのに気がついた。


 「ん? あー、本当にあんたと一緒になるんだねぇ。……でさ、あんたはどう思ってるの? まあ、言わなくたっていいさ。答えはあんたの中にある」

 大きいサキはサキの胸元に指を突きつけた。


 「……わかった」

 サキはそうつぶやいた。

 大きいサキは笑顔で消えていった。


 ……ありがとう。

 もうひとりのあたし。

 

※※


 「う……」

 サキは目を覚ました。サキは五芒星の陣の真ん中で横になっていた。母から奪われていたはずの力がやや戻っていた。


 「あれ……あたしは……」

 ゆっくり起き上がると沢山の太陽神、サル達に囲まれていた。


 「サキ様、目を覚まされましたか」

 「えーと……」

 「黄輪王(こうりんおう)、リンでございます」


 目の前で頭を下げていたのはプラズマの姉、リンだった。他にもエンやニチメなど他の太陽神達も集まっていた。


 「サキ様……ご無事で……」

 「……あんた達があたしを助けてくれたのかい?」

 「はい……。サキ様はご成長されたようですが……」


 エンの言葉にサキは咄嗟に備え付けられていた鏡を見た。サキは先程目の前にいた個が違う自分と同じ見た目をしていた。


 「……大人のサキ……」

 「力が少しだけ戻ったようじゃの」


 声をかけてきた幼い少女にサキは眉を寄せた。この子と「ここはコスプレ会場じゃない」などの言葉をかわしていた気がする。


 「ああ、ワシは歴史神、ヒメちゃんじゃ! 皆でおぬしを元に戻しておる。西の剣王軍としての責務は果たすつもりじゃ」


 「……は、はあ……。歴史神……」

 「大丈夫じゃからの。もう時期、時神が判断を下す」

 ヒメは穴が空いた上階を睨み付ける。


 「え、あ……待っておくれ! お母さんは?」

 「……気にすることはない」

 サキはヒメの剣幕に固唾を飲んだ。


 「だ、ダメだ! もっ、もう一度お母さんに……」

 「……やめておいた方がよいぞ……」

 ヒメは静かにサキに言った。


 だが、サキはヒメを振り切り、階段を駆け上がって行った。気がつくと、体がやけに軽かった。そして神力が時間が経つにつれてサキに入り込んでくるのも感じた。


 「おかあさん……」

 サキは階段を駆け上がり、半壊している天井を見上げてから、目線を前に戻した。


 「お母さん!」

 サキが声を上げた時、時神のアヤが手を前にかざし、よくわからない神力の鎖をサキの母、アヤメに巻き付かせていた。


 「な、なにしてんのさ! アヤ!」

 サキが声をかけるが、アヤの瞳には光がなかった。


 「……アマノミカヌシが命じる……。アマノミカヌシが……システムをブロックしました。人間の干渉を強く拒みます」

 アヤはよくわからない言葉を話している。


 「アヤ……どうしちゃったんだい……」

 近くにいた栄次やプラズマを見る。

 彼らもアヤに寄り添って何も話さない。アヤを中心として五芒星の陣が現れた。


 ……時神はお母さんを消すつもりだ!


 そう気がついたサキはアヤ達を通り抜けて母の前に立った。力が直接、サキに流れ込んでくる。母が自分から奪った力がサキに返ってくる。


 「おかあさん……もう、やめよう……。こんなこと……」

 サキは弱々しく母に声をかけた。


 「神の世界でもこれは犯罪なんだよ、おかあさん……」


 サキが霊的着物に変わった。赤い古代風の着物に、金色の太陽を模した王冠。

 サキが霊的着物に変わった刹那、アヤメの顔色が変わった。


 「なんであんたが、それを着てそこにいるのよ!」

 アヤメはサキを睨み付けてきた。


 「おかあさん……太陽神の頭は……おかあさんじゃなくて……」


 「うるさい! あんたは私の言うことを聞いていれば良かったの! なんでへらへら笑っていただけの子供のあんたが! 太陽神なのよ!」


 「へらへら笑っていた……って……」


 「なんにもできず、私に育てられるだけだったあんたが、私の苦労も知らずにアマテラス様に認められた? ふざけないで」

 アヤメの鋭い声にサキは怯えた。


 「あ、あたしは……愛されていたんだよね、そうなんだよね……」


 「すべてワガママでできているような子。私はあんたを毎日毎日、育てて、あんたの要求を叶えて……私が……あんたを育てることに縛られながら、なにもできずに生きていることも知らずにノウノウと……。


 私はアマテラス様に認めてもらえるような努力をできるかぎりしてきた。でも、あんたのせいでできることは限られて、努力を認めてもらえなかった! 太陽神になったのが、なんであんたなのよ!」


 「ま、待っておくれ……。あたしは何もお母さんのことを知らなかった。そんなに追い詰められていたことも……。だから、あやまるよ、ごめん……」

 サキはあやまったが、アヤメは笑い飛ばした。


 「そう、あんたは何も知らない。自分の子に私の辛さを語ったところで壁打ちなのよ。あんたは子供を育てたこともないくせに、何をあやまるって言うのよ。いらつく。いらつく。私の人生を奪っておいて……」


 アヤメに鎖が巻き付いていく。


 「お母さん……選ばれたのはあたしだったんだよ……。でも、お母さんの努力は……」


 「うるさいなァ! あんたは何をしにきたの? 私に力が消えるところを見物しに来たの? 悪趣味! 人間の理から私は外れられなかったの。笑いに来たの?」


 アヤメは鎖に巻き付かれながらサキを睨み続ける。


 「違うよ……たぶん、神も……一生懸命に子育てするよ。人間から産まれた、人間に近しい存在なんだから……」


 サキはリン達を思い出す。しかし、アヤメは全くそれに気がついていなかった。他の太陽神をただのコマとしか見ていなかったアヤメは太陽神がひとりひとり個を持ち、考え方も違うということに気がついていない。


 「もういいのよ、こうなる前に時神を消したかったのに」

 アヤメはサキをずっと睨み付けていた。

 時神現代神であるアヤはまるでアヤではないかのようにアヤメに時の鎖を巻き付けていた。


 「アヤはなんでこんな感じに……プラズマも栄次も……」

 プラズマと栄次も意識がないのか黙ったままアヤに神力を渡している。五芒星の陣はさらに光り輝いていた。


 「ねぇ……皆……、もうちょっと話させてよ……」


 サキがせつなくなっている余裕はなく、アヤメは時神の鎖が巻き付き、動くことができなくなっていた。サキから奪っていた神力も剥がれ、サキに返っていく。


 それを忌々しそうにアヤメは見ていた。

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