母と娘3
時神達は階段を登り、三階までやってきた。
「あら、ついにきてしまったわね、時神」
廊下の先に禍々しいものを纏った女が立っていた。
「……あんたがサキの母親か」
プラズマが鋭く尋ね、アヤは横で怯えていた。
「そう、私はアヤメ。太陽神の上」
サキの母、アヤメは突然、アヤに神力の雷を落としてきた。
「ひっ!」
アヤは小さい悲鳴を上げたが栄次がアヤを抱え、神力を回避していた。
廊下と一部の天井に穴があいた。
「全員、下の階に落下させて致命傷与えてやろうか? 私はあんたら時神が嫌いだよ」
アヤメの存在はアマテラス神力を取り込んで幻想になりかけている。アヤメはゆっくりと浮いた。
手をかざし、先程の強力な神力を次々と落としていく。
「まずい、下に太陽神達とサキが……」
「心配ないのじゃ。ワシがおる!」
さらに後ろから階段を上がってきたのはヒメだった。ヒメは穴があいた廊下部分に結界を張っていた。
「ヒメ……」
「時神よ、あの女をすぐに止めるのじゃ。やつは人間の歴史にあってはならんことをしておる」
ヒメは厳しい顔つきでアヤメを射貫いた。
「……止めるとは、そういえばどうする?」
栄次がヒメに尋ね、ヒメはアヤを見た。
「アヤが……導くはずじゃ」
「えっ……?」
アヤは動揺の声を上げた。
「何を話し込んでいるの? 全員消えな」
アヤメが再び、多数の強力な神力を落とす。ヒメが結界を張って時神を守ったが、天井が崩れ、青空と宇宙が混ざり合ったような空が現れる。
アヤメは空に舞い、アマテラス神力の炎を時神にぶつけた。
「まずい、なんだ、あの力!」
プラズマがアヤの手を引き、炎を避けたがアヤとプラズマは円形の炎にとらわれた。
熱風がふたりを焼く。
「あ、あつい……」
「アヤ、神力を安定させろ」
「あんな強力な力にどう立ち向かえばいいの?」
アヤは震えていた。プラズマはアヤに結界を張り、炎に耐える。
「俺は結界がうまくないんだ、ごめん」
プラズマがあやまったところで栄次が炎を刀で切り裂き、ふたりを炎の柱から出した。
「大丈夫か!」
「アヤは大丈夫だ。俺は……」
「……っ!」
アヤと栄次は息を飲んだ。プラズマの背中が焼け焦げ、血が流れ出ていた。
アヤが慌てて時間を巻き戻す。
それを見たアヤメは狂喜的に笑い出した。
「そう、その能力、ほしいわねー」
「……あなた、サキのお母さんでしょう? サキは心配じゃないの? あの子、血を吐いたわよ!」
アヤが意味のない質問をした。
「心配よ。心配すぎるわ。あなた達のせいで余計な力を使ってしまっている」
「アヤ、彼女には何を言っても無駄そうだ。だいたい、サキを見殺しにしようとしている」
プラズマはアヤをなだめ、アヤを庇うように立った。アヤが時神達のカナメなため、アヤに何か危害があると問題が起きるためだ。
「プラズマ……」
「あの女はあんたの力がほしい。何をされるかわからない」
プラズマがそう言い、栄次は刀をとりあえず構えた。
「太陽神が使えないなら、使いのサルを使えばいいのよ」
アヤメは先程連れ去ったサルを指を鳴らして呼んだ。サルはアヤメの前に連れてこられ、時神を倒せと命令された。
「さ、サル……? 大丈夫なの?」
アヤが尋ねると、サルは突然に襲ってきた。
「なっ! 何をしたんだ! あんた!」
サルに傷はない。今回、一番影響を受けていなかったサルがアヤメに連れ去られたことで、なんだかおかしかった。
「時神は敵でござる」
いつものサルの雰囲気ではなく、本気で剣を振るってきた。栄次が間に入り、剣を受け止める。
「あははは! そう、敵は時神。猿達は本当にアマテラス神力に従うのねぇ、おもしろい」
「……お前、何をしてんのかわかってんのか! アマテラス様の神力は……そんなんじゃねぇんだよ。人間風情が神を使おうなどと……」
プラズマは霊的武器「弓」を取り出し、恐ろしい顔で睨み付けた。
「プラズマ! どうしたのよ。あなた……そんなこと言う神じゃなかったはず……」
アヤがプラズマを揺すり、プラズマは我に返った。
「……え、あ、ああ。弓でサルの動きを止めてみよう」
プラズマがサルに神力の弓を放つがサルは飛び退いて避けた。
「追尾するぞ」
神力の矢が柔らかく曲がり、サルを再び襲った。サルは鏡の盾を操り、プラズマの神力の槍を跳ね返し始めた。
「そんなこと、できるのかよ……」
冷や汗を拭いながらプラズマは飛んできた神力の矢を結界で防いだ。サルは栄次を襲う。剣は避けるが、あまり反撃しない栄次。
「やっぱり、栄次、やりたくなさそうだな。栄次、黒幕はそこの女だ。捕まえるぞ」
プラズマの言葉に冷や汗をかきながら栄次は頷いた。
「大丈夫か? 栄次」
「……申し訳ありません、紅雷王様……。どうにもやりにくく……」
「サルはあの歪んだアマテラス神力を受けておかしくなってる。あの女を止めなければ……」
プラズマは栄次の前に結界を張り、サルの攻撃を防いだ。
「栄次、大丈夫か?」
「……申し訳ありません」
「サルを止めないと……」
「わかっています」
栄次は先程まで仲間であったサルに攻撃をしたくなかった。
サルは鏡の盾を反射させ、栄次達の視覚を奪う。栄次は仕方なく構えた。
視覚がおかしい中、栄次はサルに刀を振るう。だが距離を間違え、当たらなかった。
鋭い剣撃が栄次を襲う。栄次は光の点滅の中、かろうじて避けた。着物が裂ける。
それを確認している暇もなく、サルは太陽神の神力を放出し、炎を撒き散らした。暑いのと反射で栄次の神経をおかしくしていく。
栄次が反応しきれなくなり、プラズマが未来見で的確に結界を張って栄次を助ける。
「ラチあかないな。サルを倒さないといけないのか?」
プラズマが困惑していた時、アヤが何かに取りつかれたように歩きだした。
「アヤ! なにしてんだ! あぶな……」
プラズマの言葉はそこで切れた。
アヤの瞳に時計が回っていたからだ。アヤは意識がない。
「ア……ヤ?」
「ついに始まったかの。時神による裁きが……」
下の階に何も起きないように結界を張っていたヒメが意味深な言葉を吐いた。




