母と娘2
合流した時神達、サルは三階の階段を登り途中で幼いサキに行く手を阻まれた。
「子供のサキ……私達より先に……上にいたのね? 倒れていた太陽神は大丈夫だったの?」
アヤは雰囲気のおかしさに気がついたがとりあえず、尋ねた。
「太陽神達は大丈夫だったよ。あたしの神力でなんとかね。でもさ、あたし、あんたらを倒さなくちゃいけなくなったんだ」
幼いサキは手から太陽の剣を出現させた。
「え……?」
アヤは怯え、不安そうにサキを仰いだ。
「三階には行かせない。全員ここで消えてもらうよ!」
サキが剣と鏡の盾を持ち三階から飛んで攻撃をしてきた。
間に入ったサルが鏡の盾で時神達を守る。
「サキ様、あなたは太陽神の頭でござる! こんなことしては……」
サルが声をかけるが、サキは太陽神力を放出し、炎を撒き散らした。
「あんたはお母さんを裏切ったサル……。あたしがこちらの世界の太陽神だと知ったから手のひら返したんだね」
「サキ様、やつがれが探していた太陽神様はあなたでござる! 向こう側にいたあなたは……太陽の力がなかった……。だから、気がつかなかったのでござる」
「あっちもあたしなんだよ!」
サキは剣を振りかぶり、サルを襲う。
「さ、サキ様……」
サルがサキの剣を受け止めた刹那、突然、強力な神力がサルに落ちた。
「サル……っ!」
サルを引っ張り、強力な神力から助けたのは栄次だったが、サルは栄次の前から唐突に消えた。
「消えた……」
「お母さんに呼ばれたのか。あのサル、再起不能にされる」
サキがわずかに震えながら小さくそう言った。
「……はやく、あんたのお母さん、止めないと……」
プラズマがサキを説得しようとするが、サキは燃える炎を自分の後ろに壁のように作った。
「行かせないよ。あんた達は……お母さんをあたしから奪う気だ。お母さんはあたしの大事なお母さんなんだ」
サキはプラズマに剣を振りかぶった。慌てて栄次が間に入り、サキの剣を刀で弾いた。サキは冷や汗をかきながら手を前にかざし、栄次めがけて炎の柱を飛ばした。栄次は刀で炎を軽く切り裂いた。
「うわあああ!」
サキが栄次に剣を薙ぎ払う。
「栄次! 反撃するな!」
プラズマに鋭く命令された栄次はサキの剣を軽く避け、剣を弾きとばすのも止めた。
「当たらないっ! くそっ!」
サキは栄次に何度も剣と炎で攻撃するが栄次には当たらない。
「やめろ……子供が剣など振り回すな」
「あたしは子供じゃないっ! あたしは十七だ! 外見が子供のままだけどね!」
サキの剣先が鋭くなってくるが、サキは剣術を知らない。
栄次には当たらない。
「お母さんはあたしの大事な家族だ! 時神に消されてたまるか! 止めるだけに……してよ……。お願いだよ……」
「和解できるなら和解を目指すよ!」
プラズマは困りつつ、そう発言した。
「そんなこと、絶対……。あそこまでやってしまったんだ。お母さんは許してはもらえない」
サキは必死に栄次を攻撃してきた。一番手強いのが栄次だからだ。
「……申し訳ない」
栄次はサキから剣を弾き飛ばし、鏡の盾をはたき落とし、拘束した。
「お母さんはっ! 本当は優しいんだ……! お母さんになにもしないでおくれっ! 止めなきゃいけないのはわかっているんだ!」
「サキ、落ち着け……」
「がはっ……」
栄次がそう声をかけた刹那、サキが口から大量の血を吐いた。
「なっ!」
「神力が……くっ……あたしはもう……」
サキは驚いている栄次を突き飛ばし、再び剣と鏡の盾を出現させた。血が口から滴っており、かなり立っているのも辛そうだった。
「も、もうやめろ!」
「それ以上、神力を使うな!」
栄次とプラズマが声を荒げ、アヤは怯えながら巻き戻しの鎖をサキに巻く。しかし、サキの神力はたいして戻らなかった。
「力が……戻らない。あなた、なんでこんなにも力を失っているのよ!」
「うるさいな!」
サキはさらに神力を放出した。
「やめろって言ってるんだよ!」
プラズマが霊的武器「銃」をサキに向かって撃った。
サキは飛びそうになる意識を呼び戻し、炎の柱を目の前に張った。弾は消えてなくなった。
「避けんなよ……当たっとけよ……。これ、神力を網にした銃だ。捕まえようと思ったんだが」
「はあ……はあ……うっ……」
サキは剣を床に刺し、かろうじて立っている状態だった。着ている子供用のワンピースはサキの血で赤く染まっている。時神達は見ていられなかった。
太陽に詳しく、太陽神の力を持つ、この子供姿のサキは、違法だとわかっていて母を止めようとしているが、母を守っている。
気合いで立ち、階段上から時神達を太陽神とは思えない顔で睨み付けていた。
「どうする……? あの子、消滅するぞ」
「……原因は母君だ。彼女を助けるには母君が奪った力をサキに返さねばならぬ」
「和解は無理か。あの子はそれがわかっていて……」
栄次とプラズマは辛そうにサキを見上げた。
「そうだ。だから俺達を攻撃してきている。揺れているのだ。先程は母君を止めてほしいと俺達を太陽に入れたはずだ」
「……そうだな。かなり矛盾している。はやくサキの母親ってやつをどうにかしないとサキも危ない」
プラズマは眉を寄せた。
「プラズマ……あの子は攻撃できない」
栄次の刀が震えていた。
「わかってるよ……あんたはそういう男だ。連れ去ろう。アヤ、俺達に早送りだ」
「わ、わかったわ」
プラズマの言葉に動揺しつつもアヤは慌てて早送りの鎖を栄次とプラズマに飛ばした。
「栄次、攻撃するふりだ」
「……わかった」
栄次がサキの前に入った。サキは剣を栄次に向かい薙ぎ払ってきた。
栄次がわずかに後ろにさがってかわした刹那、プラズマが後ろからサキを拘束した。腕をとり、剣をはたき落とす。
「くっ……」
「一緒にお母さんのところに行くぞ。だっこしてやるから」
「待っておくれ! あたしは時神を消去しなくちゃいけないんだよ!」
「いい加減にしろ。『アマテラス様がそんな乱暴な言葉をおっしゃるわけがない』。あんた、自分のことも考えて動けよ。もう、立ってらんないだろうが」
プラズマに睨まれてもなお、サキはプラズマから抜けようとする。
「やめろと言ってるんだ! 消えるぞ、あんた」
「あたしはもう消えるんだ! だから……」
「良いわけねぇだろ! サキ、お前は太陽神だ。俺はわかったぜ。お前は太陽の頭、『アマテラス様の力を受け継いだ、太陽神達が待ち望んでいた存在』だ! それがわからねぇのか! 神は人間とは違う! お前はもう、人間の子供として生きてちゃいけねぇんだよ!」
「……あたしはっ……がふっ……」
「おい! しゃべんな!」
サキは言葉を話そうとしたが、神力を使いすぎたらしく、再び血が逆流し、血を吐いた。
「はあ……はあ……」
「……辛そうだ……。一回、休め。神力が逆流してる」
「あたし……なかなか消えないねぇ……げほ、げほ……」
「いいから、話すなよ。太陽のトップがそんな簡単に消えてどうするんだ」
プラズマは幼いサキを抱き抱えた。
「お母さんにさ、この力を全部あげてあたしはさ……」
「あげることなんてできないさ。あれはあんたの神力だ。あんたのお母さんがアマテラス神力に逆らい、あんたの力を使って暴力行為に走っているんだ。アマテラス神力への違反行為はあんたに全面にかかる。あんたのお母さんはそれがわかってやってんだ。悪質だろ」
「……知ってるよ……。でも……あたしのお母さん……なんだ」
「……気持ちはわかるよ」
プラズマは霊的武器「銃」を取りだし、焦点が定まらなくなってきたサキのこめかみに当てる。
「ま、待て……プラズマ……」
「プラズマっ!」
栄次とアヤの悲鳴に近い声を聞きながらプラズマはサキに向かって神力の銃を撃った。
サキは意識を失い、プラズマにもたれかかる。プラズマは手の震えを抑えながら、サキをしっかりと抱きしめた。
「意識を失わさせただけだよ……。ちょっとショッキングだけど」
サキは何の怪我もしていなかった。
「……かわいそうに」
栄次は刀を鞘にしまい、目を伏せ、階段をのぼり始めた。アヤは何も言わず、顔色が悪いまま栄次についていく。
「連れていこうと思ったけどやめる。サキを太陽神達に預けたい。神力をわけてもらえば少しは楽になるはずだ」
「それは……わたくし達がおこないましょう」
階段をのぼって来たのはリンだった。
「ねぇちゃん、太陽神トップに銃つきつけて悪かったな」
「しかたありません」
プラズマはリンにサキを渡した。
「かなり衰弱している。彼女の神力をある程度戻さないと、まずい」
「ええ、大丈夫です。沢山の太陽神がサキ様に力を与えます。あなたは早く、あの人間を止めてください」
「……ああ。だから、サキを気絶させたんだ。俺達時神は……今の太陽を許さない。起きたらすべてが終わっているといいな」
プラズマはリンにそう言うと背を向けた。
「わたくし達はもう、あの女には従いません。なにがあってもです。あなた達を傷つけてしまったこと、申し訳なく思います」
「……ねぇちゃん……いや、お姉様、ご無理をなさらず、太陽神達をお守りください。私に攻撃をしてきたことは仕方のないことで流します。どうか、ご無理はなさらず」
プラズマはそれだけ言うと、そのまま三階へと階段をのぼっていった。




