時間が止まる3
「ウサギは! こそこそとアヤ姉さんのおうちで人間生活を満喫していたのでありますっ! なんせ、夜のままになってしまったのでありまして、月子さんから様子を見てこいと……」
「なんだって?」
ウサギの発言にプラズマは眉を寄せた。
「ちょっと、はじめからいたってこと? 何よ、怖いじゃないの!」
「アヤ、監視されてたのかよ……」
プラズマはあきれた顔を向けた。
「……ところで、陸の世界とやらには行けるのか?」
栄次がなんとも言えなさそうな顔でウサギを見た。
「あー、うんうん、陸にいく装置ならあるでごじゃる! 月子さんがー」
「月子のところに行かなくて向こうにはいけないの?」
アヤは嫌そうにウサギに尋ねる。
「うう……まあ、ワープ装置は壱と陸を自由に動いて遊ぶためにわちきが開発した装置で、弐の世界のものを使って、こう、トンテンカン! っと細工を。……うむ、別に月子さんがいなくてもここからでも行けるとは思うでごじゃるが……。
このワープ装置、見つかって他のウサギ達、月神からこっぴどく叱られ、お仕置きまでされたわちきの代物であり……」
「……もういいわ。あなた、ワープ装置を私達へ起動させるために月子に言われてきたんでしょ」
アヤに言われ、ウサギははにかむ。
「いんやー、まあ、そう言われればそうなのでごじゃるがー。アヤ姉さんのおうちをもう少し拝見したく……」
「そんなことを言ってる場合じゃないのよ」
「へーい」
ウサギはアヤに否定され、どこかふてくされながら装置を出した。
ブレスレットのようなものだ。
「真ん中のボタンを押せばわちきらデータは元のデータになり、データの波のままバックアップの世界にいけるのでごじゃる!
バックアップとはいえ、同じ人間、神が生活を普通にしているが、霊的太陽と霊的月は壱と陸の監視のため、交代で壱と陸を交互に回っているのでごじゃる。つまり、我々はふたりいない! だからこそ、このワープが……」
「いいから、私達は大丈夫なの?」
アヤにまたも話を遮られ、むくれたウサギはてきとうに答えた。
「大丈夫。アヤ姉さんはまあ、平気。過去神のエイジンと未来神のヴィラドゥムとかいうのも元々ここにいないからヘーキ」
「……誰だよ……」
プラズマはとりあえず突っ込むがあきらめた。
ウサギはそれぞれに腕輪を渡す。
「ウサギは、平気なのか? 元の場所へは帰れるのか?」
栄次に問われ、ウサギは前歯を見せて笑った。
「大丈夫でごじゃる! ではではこれでー! らびだーじゃん!」
ウサギはさっさと帰る準備を始めた。時間のない真っ暗な空間にいきなりエスカレーターが現れ、遠くに月が見えていた。
「……直接、月に帰れるのかよ……」
プラズマ、アヤ、栄次はあきれたまま、ウサギを見送り、エスカレーターが消えたのを確認すると腕輪に目を向けた。
「とりあえず……ウサギが言う通りに押してみるか? この……」
「ボタンね……」
「せーの、で押してみようぜ……」
「そうね」
「じゃあ、せーの!」
プラズマの掛け声でアヤ、栄次は同時にボタンを押した。
時神達はその場から電子数字になり、消えた。
一瞬だけ目をつむり、恐る恐る目を開けると、太陽の光に目がくらんだ。
目がくらんだと思ったら目の前が暗くなり、何者かにアヤは押し潰された。
「あうう……」
アヤが呻くと、上に被さっていたふたりがすぐにどいた。
「うわあっ! アヤ、ごめん! 座標ミスった!」
「まさかアヤの上に出現するとは……。大丈夫か、アヤ……」
「うう……座標と時間のコントロールくらいしてちょうだい……。死ぬじゃないの、私が……」
乗っかってきたのはプラズマと栄次だった。ふたりは咄嗟にアヤを避けて落ちたが、アヤに少し当たっていた。
「逆だったら良かったんだけどな……。小柄なアヤが落ちてきたところでダメージあんまなさそうだし……。ガタイがイイ男が二人落ちてきたら、普通に怪我する……」
プラズマは顔を青くし、栄次は焦りながらアヤを起こした。
「怪我はしていないか?」
「大丈夫よ。ありがとう。避けてくれて……」
「あ、ああ……本当に大丈夫か?」
「ええ。本当に平気よ。それよりも……ここは陸よね?」
アヤは青空に浮かぶ太陽を指差した。なんだかすごく暑い。
気がつくとセミが鳴いていた。
「夏か。陸とみて良さそうだ」
「ねぇ、陸にさっきの空間が出たりしないのかしら……。どちらにしろ、私達が三柱、こちらに……」
アヤが言い終わる前にヒメが現れた。
「ふむ。こちらに来れたかの。ヒメちゃんじゃよ!」
「……ヒメ!」
「ああ、ワシは陸の世界のヒメじゃ。ワシはの、人間の歴史管理が仕事。伍以外のすべての世界に神はおるが、ワシはすべての世界の自分と繋がっておるのじゃ。
つまりー、ワシは陸の世界でのヒメじゃが、壱の世界のことは知っておる。多数の楔をすでに設置しておいた。また、あの空間が出ることはおそらくないじゃろう」
「それで、これからどうしたら?」
アヤが代表で尋ねるとヒメは腕を組み唸った。
「太陽へ向かってほしいのじゃが、サルがの、太陽神を見つけたらしいのじゃ……それが……」
「それが?」
「幼少の外見のサキ……だったのじゃよ」
ヒメの言葉に時神達は眉を寄せた。
「サキも一緒にサルといるの?」
「……いや、まあ、サキと一緒と言えばそうなのじゃが、幼少ではないサキの行方は不明じゃ」
「どういうこと?」
「ワシもわからん。あのサキという少女は何回も壱に現れたり消えたりするのじゃ。ただ、小さきサキはどうやら、外見は同じでも存在が違うようなんじゃ。元のサキを覚えておらん。とりあえず……サルのところへ案内する故、太陽へ向かうぞい!」
「本当に何言ってるんだかわからないなあ……」
プラズマは首を傾げつつアヤと栄次を見た。ふたりも眉を寄せたままだ。
「とりあえず、ヒメに従うしかないわね」
「うむ……。壱にいたサキの過去は見えなかった。……幼少のサキの過去は見えた……。だが、幼少のサキは壱のサキとは別だった……。彼女は……今も幼少……なのだ……」
栄次が切れの悪い言葉で迷いながら言葉を発する。
「どういうことだよ?」
「わからぬ。だが、そうなのだ」
「もうわからないからサキに会ってみましょう?」
アヤの言葉にふたりは納得いかなそうな顔で頷いた。




