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「TOKIの世界譚 」宇宙の神秘と日本神話な物語  作者: ごぼうかえる
二話

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時間が止まる2

 天狗から走って逃げているアヤ達はとりあえず、図書館目指して進むことにする。

 よく周りを見ると、人がいなくなっており、家の中では明かりはついているものの、人の気配がなくなっていた。


 「……え、どうなってるの……」

 時空が歪んでいく。

 今は冬ではない、夏だった。

 雪など降っていない、いつ夜になったかわからない、時神の周りだけ、なんとなく時間が回っていただけだ。


 「そもそも、いつから冬になったんだい? 暑くてアイス食べてたんだけどねぇ、あたし」

 サキがそう発言し、アヤの顔色は悪くなる。


 「わからない……」

 アヤはそう発言した。いつからおかしくなっているのか?

 確かに異常気象だった。

 今は確かに冬だった気がする。


 「あれ……?」

 冬だった。夏ではなかった。

 そう、今は冬だ。そのはず……。

 顔色が悪いアヤをプラズマと栄次が心配し始めた。


 「大丈夫か……?」

 「ね、ねぇ……あなた達の世界は夏だった? 冬だった?」

 「え……?」

 アヤの言葉にふたりは眉を寄せた。

 「……夏だった。暑かったな」

 「夏だね、暑かった」

 ふたりの言葉を聞いたアヤはさらに顔色を悪くした。


 「私……時間を……無意識に早送りしたの?」

 アヤは震えだした。目の前にコンビニエンスストアがひっそりと建っていた。中に人はいなかった。店員すらもいない。不気味だったが、なんだか入らねばならない感覚になってしまった。

 理由はわからない。


 「ここ……」

 アヤが何かに導かれるように足を踏み出した横でサキが操り人形のように無意識にコンビニの中へ入っていった。


 「はっ! サキ!」

 アヤが我に返り、サキを追う。栄次もプラズマもサルもサキを追った。


 「誰もいない……」

 アヤが店内の不気味さを口に出した刹那、世界が回った。視界が揺れた。

 コンビニの店内が突然、真っ黒な何もない空間へと変わった。


 「……え……なに?」

 「じ、時間がなくなった?」

 「あ、あなたは! 太陽神様!」

 アヤとプラズマが戸惑いの声を上げる中、サルだけは何かを追いかけて走り出す。


 「え、待って!」

 アヤがなんだかわからず、サルを止める。しかしサルははるか先で白い光が点滅している場所へ走って行ってしまった。


 「導かれる……行かなくちゃ……」

 サキも白い光に向かい、歩みを進めていた。アヤ、栄次、プラズマがサキを止めようと動くも、サキが歩いているにも関わらず、追い付けない。


 気がつくとサルとサキは白い光に包まれて消えてしまった。アヤ達はその光に近づくことさえできなかった。

 ふたりと共に光は消えてしまった。

 黒い空間はなくならない。


 「……なんだったのだ……あの光は。サルと彼女はどこへ行った……」

 栄次がつぶやいた刹那、アヤが膝をおり、泣きながらプラズマに謝罪を始めた。


 「ごめんなさい……私、時間を早送りしてしまったみたい……。この辺すべて……おかしくしてしまったみたい……。この空間は……時間の流れがないわ……。私のせいよ。どうしよう……ごめんなさい、紅雷王さま……」

 アヤは震えながらプラズマを見上げた。


 「そんな震えんな、あやまんなくていいから。あんたのせいかわからないんだ」


 「これは私のせい以外、考えられないわ! 私が世界をおかしくしてしまって、時空が歪んだから、あなた達が私の元へ飛んできたのよ! 未来の平成から、過去の平成から、意思関係なく! ……どうしてこんなことに……。ごめんなさい……。私への罰はちゃんと……受けますからお許しください、紅雷王様……」

 アヤはプラズマを見上げ、泣きながら震えていた。


 「……アヤ、落ち着け。あんたは故意じゃないんだ。あんたの心も体も傷つく罰なんて俺はしたくないよ」

 「だめよ……あなたがそれでは……。私がやったことは禁忌なのよ!」

 アヤは頭を抑えて激しく震えている。自分がしてしまったこと、これからプラズマが言う罰の内容が怖かった。


 「アヤ……大丈夫だよ。時神には恐怖で縛り付けるルールはないんだ。俺はわかる。あんたはクロじゃない。……なんかひっかかるんだ、この空間もそうだけど、俺や栄次が現代の世界にきた理由もアヤとは無関係な気すらしてくる」


 「アヤ、俺もプラズマに同意だ。何か、おかしい」

 プラズマと栄次はアヤを心配しつつ、眉を寄せながら、辺りを見回した。


 「でも、私以外にこんなこと……」


 「……これは仕組まれてるんだ。何かしらで時空が歪んだ。俺達が同じ世界に存在したら、こういう真っ黒な何にもない世界になる可能性はある。過去、現代、未来が一気に同じ場所に来るんだ、世界は機能不全になる。でも実際、あんたの風呂に俺達が出現した時は何にもなかっただろ? この黒い空間が俺達がそろった段階でおこることもあったわけだよ」


 「……私が無意識におかしくしていたのよ、きっと」

 アヤが涙目でプラズマを見ていた。

 プラズマはため息をつきつつ、頭をかく。


 「あのな、なにかしらで時空が歪んだから俺達が来たとして、この空間が出ることを予想して出ないように動いていたやつが別にいるんじゃねぇか、と言ってんだよ。あんたのせいかはわからないが、他にも意図的に動いているやつがいるんだ」


 「……どちらにしろ、私は関与してるわ……」

 「だから、それすらもわからないんだって。あんた、身に覚えがないんだろうが。証拠もそろってないのに、俺があんたを罰するわけないってば。こんなに泣いて震えてかわいそうに」

 プラズマは冷静に優しくそう言った。


 「プラズマ、これができる者に心当たりがある。アヤ、そんなに震えなくても時神がお前を罰することはない。安心しろ」

 栄次はアヤの肩に手を置き、アヤを立たせてやった。


 「アヤ、大丈夫かよ……。アヤは時間関係になると繊細だよな……。で? 俺達が来てもなんもない空間ができないようにすることができる神って?」

 「ああ、歴史神だ」

 栄次は即答した。

 「歴史……やっぱり全部ヒメか?」

 プラズマが言いかけた刹那、幼い子供の声が響いた。


 「うわー、何故、この店に入ったのじゃぁ! せっかく、楔をここで設定してコレが出ないように細工をしていたというにっ!」

 幼い子供の声はどこか焦っていた。


 「待って、この声……」

 反応したのはアヤ。


 「アヤ! あの娘とサルはバックアップ、陸(ろく)に行ってしまったのじゃ!」

 「……ヒメ……?」

 「そうじゃ、そうじゃ! すぐに陸へ向かい、追いかけよ! はよう!」

 ヒメは全てを飛ばし、そう叫んでいた。


 「ま、待ちなさいよ! どういうこと? ここから出るには? と、いうかなんなのよ……」

 アヤは息を吐くと冷静になる。


 「時空の動きがめちゃくちゃになったことで、人間が季節などを疑問に思い始め、天狗が動き始めた故、過去神、未来神がこちらに来ることを想定したワシは、罪を承知でこの店に楔を作ったのじゃ。


 三柱が現世よりそろえば時間が止まり、世界は矛盾を修正するだろうと読んだワシは時間が止まらぬように店にワシが持ってる店員の歴史をねじ込み、楔としてこの周辺を保たせることにしたのじゃ。


 しかし! おぬしらがココへ入った故、楔がちぎれてしまった! 過去、現代、未来が入ればそれは何をしても勝てぬー。あー、ワシはほら、人間の歴史管理をしている神だからの、こんなことがで……」


 「その最初に言ってた時空の歪みはだれがやったの? 私?」

 アヤは矢継ぎ早に質問した。


 「最後まで話させてくりゃれ……。ま、まあ……時空が歪んだのはアヤのせいではない。むしろ、アヤはこの辺周辺だけでもよく現代を保ってくれた。時空を歪ませた者はまた別じゃ」

 ヒメも時空を歪ませた者自体はわかっていなさそうだった。


 「アヤ、とりあえず良かったな。やっぱりあんたじゃなかった。サキとサルは陸に行ったのか?」

 プラズマがアヤの肩を優しく叩き、ヒメに尋ねる。


 「うむ。この、時間が歪んだこの真っ黒な空間、ここは言わば宇宙になる前の空間と同じ。時間もなにも生まれてはいないのじゃ。


 そこへ、一筋の光が差し、それに向かい、サキとサルが走り、この空間から出ていった。いままでここにあった楔は、異常はない陸(ろく)の世界の人間の歴史を非常事態である壱(現世)の世界に結びつけ、なんとか、この空間が出ないようにしていたのじゃ。


 故、この空間から出たとあれば、太陽が現在ある、普通にまわっている陸(ろく)以外にない」


 「……んん……難しいな……。俺達はどうしたらいいんだ? どうやったら出れる?」

 プラズマはこの空間から出る術を知らないため、知っていそうなヒメに聞いた。


 「そうじゃの。陸に存在するアヤの記憶で……」

 ヒメはそこで言葉を切った。

 「ん? なんだ?」

 プラズマが尋ねるもヒメは何かを考えているのか返答がなかった。


 ヒメはバックアップ世界、陸にアヤのバックアップがいないことに気がついた。他の神々はバックアップとして壱と陸にそれぞれ同じ神が存在している。人間も壱と陸にそれぞれ同じ人間が鏡のように生活している。


 プラズマや栄次は元々、壱(現世)の世界にはいないため、壱のバックアップ陸(ろく)には存在しないが、それぞれの世界での陸(ろく)にはいるかもしれない。

 アヤはなぜバックアップのアヤが陸にいないのか。


 ヒメは人間の記憶を見る中で、「立花こばると」の存在に気づいた。アヤは元々特殊でこばるとのバックアップだったようだ。だからか、こばるとは壱と陸でふたりいないし、アヤもふたりいない。


 「しかし……彼は壱にも陸にも今はおらぬ……なぜ……」

 ヒメはこの時、何も知らない。アヤがこばるとを黄泉へ封印してしまったこと、歴史神ナオにより、時神は記憶を改ざんされ、何も思い出せなくなっていること。


 ヒメはつぶやいた後、違う方法を考え始めた。ここから初めてヒメは立花こばるとの記録を調べ始めることになる。


 「うむ。月にある装置を使おうとは思うが、月子がまともにワープ装置を使わせてくれるかどうか……」

 「こんな何もないところからどうやって月に行くんだ?」


 「今、壱は夜。月はこちらにおる。逆にバックアップ世界、陸(ろく)には太陽があるはずじゃ。サキ達が向かったのは太陽の光に導かれた故、ここは時間関係がなくなっている宇宙空間に近い。おそらく、月も月のウサギも呼べる」


 ヒメがそう発言した時、栄次があることに気づいた。


 「待て、お前はどこから俺達に話している?」


 「現世上空、ツルが引く駕籠からじゃ。ドームのような巨大な空間が徐々に大きくなりながら町を飲み込んでおる。ワシは楔をまたいくつか設置し、おぬしらが閉じ込められている、時間が消えた世界の膨張を防いでおる。


 宇宙空間のようなものが地球の内側にできたことになる故、焦っている。宇宙空間ならば壱は夜。だから月の使いウサギを呼べるのではと考えた。ワシの声はそろそろ届かなくなるはずじゃ。それまでに月へ行き、今現在、太陽のある陸(バックアップ世界)へワープ装置で飛ぶのじゃ」


 「……月の使い、ウサギか……」

 栄次がつぶやき、プラズマは眉を寄せた。

 「俺達は時神だ。月神の使いのウサギなんて呼び方知らないぜ」

 「らっびだーじゃぁん!」

 プラズマがつぶやいた刹那、とんでもなく明るい少女の声が響いた。プラズマと栄次はアヤを見るがアヤは顔を赤くしながら首を横に降っていた。

 「アヤじゃない……」

 「当たり前でしょ……いきなり意味不明な言葉を叫んだりしないわ……」

 アヤ達は声の主を探した。

 「ウッサギンヌー!」

 声はアヤからした。プラズマと栄次は再びアヤの顔を見る。

 「ちょっと、何よ……違うわよ」

 「これが絶対領域ぱんつか!」

 やはりアヤから声が聞こえる。アヤは咄嗟に下を向いた。視界に映ったのは白い兎だった。白い兎がアヤの両足の間に座って上を見上げている。

 「いやぁ! 兎がっ! ……うさぎ?」

 アヤが尻餅をつき、栄次とプラズマは兎を見つめた。

 「……因幡の白兎? なんだかよくわからないが、女の子のパンツを覗くなよ」

 「ぱ、パンツなんてはいてないわよ!」

 アヤがそう言い、プラズマが顔を赤くした。栄次は女性の下着がパンツなことを知らないようで首をかしげている。

 「え、パンツはいてないの?」

 「ち、ちがっ……寒いから黒いスパッツはいてて……パンツは……その下に履いてるわよっ!」

 アヤは顔を真っ赤にして慌てて立ち上がった。

 「あー、びっくりした。パンツなんて履いてないって言うからー」

 「こんなに寒いのにスカートの下がパンツのままなわけないでしょ、と言いたかったの! へんたいっ!」

 プラズマとアヤの話で栄次が下着のことだと気づき、遅れて顔を赤くする。

 「まあ、そんなことより、我がウサギになに用でごじゃるか?」

 白兎は突然にヒト型に変わった。真っ白な髪を兎の耳のように結わいて、赤い目の前歯がたくましい子供の姿になった。おそらく、少女だ。

 「ウサギ……っ! 都合よくなんで……」

 プラズマが冷や汗をかきながら詰まりながら尋ねた。

 

 

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