太陽神、平成23年のこと1
「あーもう、今日は暑いなあ……」
黒髪をウェーブにした十七歳女子、サキは猫のような愛嬌ある目を細めた。
夏休み。今年は特別に暑い気がする。
サキは近場の駄菓子屋に氷アイスを買いに行って帰ってきたところだ。
山に続く階段を登っていく。アイスが溶けそうだ。
「あっつすぎ!」
サキは半袖短パンのまま、神社の鳥居をくぐり、社を横目に通りすぎ、となりにある日本家屋に入った。
サキは現在、この家にひとりで住んでいる。母親も父親もなぜかいなかった。
気がつくとここに住んでいて、どういう流れでひとりで住んでいるのか、親族が誰かいるかなども実は曖昧だ。
横の神社のこともわからない。
ちなみに自分がいままで何をしていたかも思い出せない。だが、いつもお金が置いてあったので生活はできている。
そんな不思議な状態だが、サキはなんの疑問もなかった。
「はやくアイス食べないと溶けるじゃないかい……」
サキは気だるいままちゃぶ台にアイスを置き、食べ始めた。かき氷系のカップアイスだ。
「染み渡るねぇ」
アイスを食べていたらだんだんと眠くなってきた。サキは気がつくと寝ていたりする。眠くなる前にアイスをたいらげてすぐさま布団を敷いた。
「まだ昼だけど、昼寝」
布団に入って神社から抜ける風だけで寝る。サキが暑いと言っていてもそこまで暑くはない。むしろ、冬だった気すらしてくる。
なんなのだろう、不思議な違和感が最近、サキを苦しめる。
「おおいー! そんなに早く寝るでない! 起きるのじゃ!」
サキを何者かが揺すっていた。
「んー、なんだい?」
サキは半目のまま起こした者を見た。
幼女がサキを揺すっていた。黒い髪に赤い着物の子供だ。
「あー、えー? まあ、確かに鍵閉めてなかったけど、コスプレしてる子供がなに?」
サキは寝ぼけていた。幼女はなにやら一生懸命に話しかけている。
「おぬしは! 人間のはずだが神力のある神のようじゃ! なんの神か、この歴史神でもわからぬ! そして突然に神になった!」
幼女の話を聞きながらサキはそのまま眠りについた。
「おい! どういうことなんじゃ?」
幼女の声が遠くに聞こえる。
※※
この夏の記憶がいつのものかわからない。サキはかなり曖昧でしか物事を覚えていられない。確かに生きてきた記憶はあるはずなのだが、繋がりが毎回ないのだ。
「はっ!」
サキは目を覚ました。
「……やっとこちらに再び現れたかの」
目の前にいたのは話しかけてきていたあの幼女。
「ん? なんか寒くないかい?」
サキは記憶を思い出そうとするが何も思い出せない。外を見たらなんと雪が降っていた。
「冬……?」
サキは眉を寄せた。服が冬服になっている。机にあったはずのアイスのカップがない。そもそも夏休みだったのか怪しくなってきた。夏休みの夢を見ていたのか。
「そう、今は冬じゃ。人間の学生からすると冬休みじゃな」
「あたしは夏休みだと思ったよ」
サキは苦笑いをした。夏休みの夢を見ていたのか。こんな寒い冬に。
「……なぜ、おぬしは神力が安定せんのじゃ? 人間の力を持つのはどういうことなのじゃ」
「え? なんの話だい? コスプレ会場はここじゃないんじゃないかい?」
サキの抜けた発言に幼女は怒りだした。
「なぜ、そんなに抜けているのじゃ! おぬしは突然に神に変わった人間じゃ! 今の神力を安定させぬと消滅するぞい!」
「は? 消滅? な、なに言ってるんだい?」
サキは首をかしげた。
「良いか! おぬしはたびたびこの世界から消えるのじゃよ。消えてまた出てくる! 夏の時期より神力が低下しておるではないか! 人間の枠から外れておるから、人間にも戻れず、神力がなくなれば消滅じゃぞ! ワシは人間の歴史管理をする歴史神じゃ。おぬしは人間の歴史がないのじゃよ」
「意味わからないよ」
「ああもう! ちょっと一緒に来るのじゃ! 最近、季節もぐちゃぐちゃ、時計も怪しい時空の歪みみたいのも観測されておる! おぬしのせいじゃな?」
「え? あたしは何にもしてないよ!」
サキはヒメちゃんに手を引かれ、無理やり外へと出された。
「時神アヤに話を持っていくつもりじゃ、来い」
「ちょっと、わけわからないよ! あたしじゃないんじゃないかい?」
サキの言葉を丸無視した幼女はサキを無理やり連れて歩いた。歩く内にサキは再び眠気に襲われ始めた。
「ね、ねむい……。最近、多いな」
サキはその場で寝てしまった。幼女が慌てて起こすが全く起きる感じではない。幼女はため息をつくと神々用タクシー、神の使いであるツルを呼んだ。




