ゲームは遊戯2
リカと栄次はクゥが守護する中、横並びで座っていた。リカは痛みに耐えながら苦しそうに呼吸をしている。栄次がリカの肩を抱き、支え、痛みの緩和をしつつ、呼吸のしやすい体勢を整えていた。
「リカ、更夜がここから出してくれるよう芸術神に交渉してくれているはずだ。あの男は俺のようなどんくささはない。俺は神力をそんなに出せぬ故、お前に神力を渡すこともできぬ」
「栄次さん……」
リカは弱々しく口を開き、涙を流した。
「……痛いか……。痛いだろうに。俺達が……こんな……」
「悔しいです……。私は……許してはいけない立場でした……。栄次さん……、私……負けてはいけない相手に……負けてしまいました……」
リカが唇を噛みしめ、か細い声で言う。栄次は「強くなくてもよい」という言葉を飲み込んだ。
リカは強くならなくてはいけない。栄次は以前、「今は強くならなくても良い」と発言したが、今回はリカが悔しがっていたため、言うのをやめた。
代わりに何を言えば良いのか?
リカは隙あらば命を狙われる存在。
こちらの世界にはいてはいけないとされる存在だ。
「リカ、本来は戦いなどしなくとも良い。だが、お前はよく狙われる。自己の防衛はできた方が良いかもしれぬ。力の強い相手もかわせるようなそういう力がいる」
「ええ、そうだと……思います……。私、戦ったことなくて」
リカは息を上げながら涙を流す。怒っていたわりには勝てず、どうしようもない悔しさがリカを襲っている。
「それはそうだ。本来、戦う必要などない。まれに話が通じない者がいる。そういう者への対応は考えねば」
栄次は目を細め、リカを見据えた。
「栄次さん、いままで闇雲に突っ込んでましたけど、それではダメですね……。私を強くしてくれませんか……」
リカの言葉に栄次はしばらく考えていたが、やがて小さくうなずいた。
「……わかった。お前は危うすぎる故、こうなった場合も考え、身は守れた方が良い。更夜にも協力してもらおう。ただ、今は動くな。更夜が戻ってくるようだ。ここから出られるか」
栄次はリカの肩を抱き、心配そうにしていた。
※※
更夜はマイを抱え、ユイを連れ、草原を歩き、栄次、リカ、クゥのところに戻ってきた。
ユイは更夜を横目で仰ぐとその場で膝を折り、突然に謝罪を始めた。
「えーと、リカ、栄次、本当にごめんなさい」
「……!?」
ユイから謝罪されるとは思わず、栄次とリカは眉を寄せていた。
「あたしにはジョーシキがなかったよ。マイ姉ちゃんに従ってたけど、よく考えたらおかしかったかもしれねぇ。マイ姉ちゃん、あたしを捨てる気だった。あたし、たぶん使われたんだよね。気付かなかったよ。あたしを許さなくていいけど、協力はするよ」
「……さっさとここから出してくれ」
「わかった」
更夜がユイに言い、ユイが素直に返事をした。栄次とリカは驚いた。更夜が何をしたのかはわからないがやたらとユイが更夜に従順だ。
「更夜、一体何をしていた?」
「別に。話を聞いてやって改心させただけだ」
栄次の問いに更夜はそっけなく答えた。
「芸術神マイはなぜ意識がない?」
「さあな、疲れてんじゃないのか?」
「他の芸術神は……? ライとセイという芸術神がいたはず……」
「……あいつらは……逃がした」
更夜の発言に栄次は首を傾げ、何やら考えているようだったが、何も言わなかった。栄次はいずれ、過去が見える。
「とにかく、ユイ、リカを治療したい。ここから出してくれ」
「うん……あ、じゃなくてー、はい!」
ユイは慌てて言葉を言い直すと力を解放し、ゲーム世界を解いた。
栄次、更夜、リカ、クゥは気がつくと時神の家にいた。
「帰ってきたのか」
栄次がつぶやいた刹那、リカの意識が途切れ、倒れた。栄次が慌ててリカを支える。
「更夜、リカが……」
「元々限界だったんだ、栄次」
更夜は時神の家に入り、玄関先から誰かいないか声をかけた。
更夜はサヨがいるのではと思ったが出てきたのはアヤだった。
「更夜……それと……リカ!」
「アヤ、無事に出られたのか……」
「こちらも色々とあったのよ……。はやく、入って!」
栄次の戸惑いを流し、アヤは時神達を中に入れた。
「あら……あなたは……」
アヤはその後ろにいた魔女帽子をかぶった少女に目を向ける。
「あー、あっちはクゥっす。年神っす」
「年神……あなたが……大年神正月様……」
アヤは驚いていたがクゥは愛嬌満点に微笑んだ。
「大晦日に部屋をお掃除してくれて、正月にあっちを迎えたっすよね?」
「……ええ」
アヤはクゥも中に入れる。
「人間味たっぷりのそちらさんらが人間と同じようにあっちを迎え入れたので縁が生まれたっす。縁が生まれたから隔絶空間の芸術神結界内部に侵入できたってわけっす。こちらは首謀者の一柱、ユイを捕まえているっす」
クゥの横でユイが肩身狭そうに苦笑いを浮かべた。
「ちょっとこちらも色々とあったのよ。リカの時間巻き戻しながら説明するわね……」
アヤはユイも家にあげた。
「アヤ、ルナはなんで寝ているんだ? それと、この横に寝ているのは……」
更夜がさっそくアヤに疑問を投げてきたのでアヤは三柱の時間を適度に戻しながら説明するべく口を開いた。




