ゲームは遊戯1
更夜はユイを問い詰めていた。
「プラズマ達を俺達のように別のゲームに閉じ込めたのか」
逃げるそぶりがなかったため、ユイの呼吸は元に戻してやり、更夜は話すことにした。
「い、今情報が入った! ライが出したそうだ。紅雷王がゲームをバグらせてて、ら、ライが侵入できたとのこと……」
ユイは倒れたマイを蒼白な顔で横目に見ながら更夜を仰いだ。
「……ずいぶんと、素直になったな」
「り、リカやあんた達にしたことは、やりすぎたよ。格闘ゲーム、スクロールゲームに関してはあやまるよ。あれはうちの悪ノリだった」
「あやまって俺達の何かが変わるわけではない。お前とマイは高天原に付き出してやる」
更夜が威圧をかけると、ユイは下を向いた。
「ま、まあ……そうだよな。あたしって、夢中になるとプレイヤーを忘れちゃうんだ。楽しいことが優先されちまう。ダメなとこなんだよ、ほんとさ。制作者はなんでも、第三者を見ないと」
「お前、もしや、園児くらいの見た目のセイよりも若い神なのか?」
更夜は関係ないことを尋ねた。
「ん、まあ……あたしはさ、デジタルゲームがインディーズで作られ始めた後にうまれた芸術神だから、出現してから……十五年くらいかな。正直、芸術を引き出す、いわゆるヒラメキを引き出す神なら、あたし、いらないんだよね。
ゲームってさ、芸術かわかんねぇ。だって、ゲームのグラフィックはマップとかキャライラストとか、つまり絵の神だし、音声やBGM、主題歌は音の神、物語や演出はお芝居の神だ。あたしはなんだよ。いらねぇだろ」
「……ゲームプログラムの神ではないのか?」
「神はだいたいプログラムでできてるだろ。神はゲームのシステムみたいなもんだ。あたしがゲームの管理者にならなくたって、いいんだよ。あたし、たぶん、ゲームブームでてきとうに産まれた神なんだ。
芸術神に加えられたけど一番最初に消えるのはあたしだよ。人間は勝手だよ。あたしを作ったってあたしに祈ったって神ゲーができるわけじゃない。ゲームのヒラメキを引き出すのは姉達だ。
あたしなんかさ、ワイズに消されてもこの世界になんも残せてないんだから姉達からしたら痛くもかゆくもないさ。あたし、ワイズに消されるよな」
ユイは苦笑いのまま更夜を見ていた。
「……怖いのか?」
「ああ、まあ、怖いけど、あたし、あんたのが怖いや」
ユイが軽く笑う。更夜はなんだか血がのぼっていた部分がなくなっていた。
「お前、やったらダメなことの区別はついてんのか? あれは俺達への侮辱と、犯罪行為だ」
「……わかってたよ。あたし、進めちゃうと止まれないんだ。途中でやめりゃあ良かった。システムやプログラムを作ったらその通りに動くのを楽しんでしまうんだ。シナリオは姉貴だよ。マイ姉の通りにやったんだ。あんたが怖すぎて、ちびりそうだよ」
ユイは3Dメガネのようなものを取った。目元がマイやライに似ている。
「シナリオが姉貴なら、お前が許されるわけじゃない。勘違いすんな。時神全員に土下座してあやまってもらう。ワイズにも突き出すぞ」
更夜はユイをまっすぐ見て許さない方向で話を進める。
「あやまるよ。ワイズからの罰もちゃんと受ける。あんた達みたいな物理的に強い男に女襲わせるなんて、確かに最悪だった。ゲームは楽しくなくちゃいけない。ゲームだから。プレイヤーが楽しくないゲームはダメだ。ごめんなさい」
ユイは素直に更夜に向かい土下座をしてあやまった。
「素直だな。助けてやろうか? 俺達の方に来い。こちらの仲間になるんならなんとか話をつけてやろう。ユイ、どうする?」
「え……?」
更夜はユイの純粋さを使うことにした。ユイはまだ子供で純粋な若い神だ。姉の言いなりが正しいと思ったのだろう。
「俺達に協力するんなら、俺が紅雷王に交渉し、ワイズへの報告もお前を擁護する発言をするよう紅雷王に言う。お前、俺を怖がっているみたいだが、本当に怖いのは紅雷王プラズマだ」
「あの赤髪の兄ちゃん、あんたより怖ぇのか? 優しそうな、なよなよしてる兄ちゃんな気がするが」
ユイは更夜に不思議そうに尋ねた。
「口が悪りぃガキだな。何様だお前。お前がやったことで紅雷王が乱れた。俺達個神の問題だが、『時神は芸術神を許さない方針』だ。わかってから発言しろ、クソガキ」
更夜はユイの胸ぐらを掴み、底冷えするような声でユイに言い放った。
「紅雷王様は俺達時神の主だ。お前らが壊しておいて今更、俺達と同じ立場で会話ができると思うなよ」
「わ、わかった……。も、もう、言わない。言わないからゆるしっ……うっ!」
更夜がユイを乱暴に地面に叩きつけた。ユイは半泣きで起き上がる。
「ぶっ叩いてやろうかと思ったな、今」
「ひ、ひぃ……。怖いって……」
「なめた態度とっていると、高天原裁判までに泣かせるぞ?」
「も、もう言わないから許してください。ご、ごめんなさい……。もう、あんたについていくから! そんな怖いこと言わないでくれ」
ユイは更夜に怯えながらあやまった。彼女は元々、残酷な思考の持ち主ではないようだ。
更夜は彼女の性格を見て、使えると判断した。彼女は単純で純粋だ。
「言葉は選んで言え。俺達に対し、あまりなめた口をきくなよ。わかったか?」
「わ、わかった!」
「返事は『はい』だ。生意気な小娘。裏切るそぶり、悪いことをする、逃げようとする、こちらを侮辱するなどの行為をしたら、ガキらしくお仕置きで泣かせてやるから覚悟しとけ」
「えー! お、おし? えー!」
頭をグリグリされながら涙目でユイは更夜を見上げた。
「純粋すぎるだろ……こいつ……。とりあえず、来い」
「ま、待って! まだ悪いことしてないぜ! あたし、まだっ!」
ユイが蒼白な顔で慌てて止めるので更夜は表情を柔らかくすると、倒れているマイを抱え、言った。
「栄次のところに行くだけだ。一緒についてくるんだろ?」
「あ、お、おう! 行く!」
ユイはマイを少しだけ心配そうに見たが、更夜に完璧に従っていた。




