15
行き先を決めずに、当てもなく歩く。
賑やかな声が、耳に届く。市場の近くまで、来ていたようだ。
―― あっちは、止めておこう
一人で居たくなかったから、外に出た。けどさっきのバグが発生したらと思うと、人の多い場所は避けたい。
人の多いところも、誰もいないところも嫌だ。
―― 一人は、嫌だ
なら誰と、いるなら良い。ジルベールは、さっき駄目だって思っただろう。ヴァルも心配かけるから、止めた方が良い。鋭いから何時も通りにしているつもりでも、気付かれてしまう。
―― そうだ、一人で居れば良い
一人は嫌だなんて思う資格は、僕にはない。
「ぐっ……」
ぼやけた何かよく分からないことを考えた瞬間、強い頭の痛みを感じる。視界が歪んでふらついたのを、踏ん張ってなんとか堪えた。
「あれ偶然だね」
「ジルベール……」
合わない方が良いと思ったのに、そんなときに限って何でいるんだ。そう思ったが俯いた顔を上げて周りを見てから、場違いなのは俺の方だと気付く。俺が住んでいる場所とは違う、裕福な人達が住んでいる一角だ。
「顔色が、悪いよ。俺の家で休んで行かないか」
「問題ない」
目を見開いてから、休んで行くように言われる。
自覚はないが、顔色にでていたらしい。なんて余計な表情差分が、あるのか。おかげて気付かれたくないことに、気付かれた。
断ってみたが、ジルベールは動く様子はない。こういうところは、結構が頑固な気がする。
―― いや、心配かけてるのか
だから会いたくなかったんだ。またさっきのバグが、発生したら厄介だ。どうするかと視線を落とすと、花が見えた。
―― 気付かなかった
周りを見ずに歩いていたせいで、花が咲き乱れているところに入り込んでしまっていたらしい。視線の先には家が立ち並んでいるけれど、ここらは自然に近い形で花が咲いているのが見える。
「ジルベール、とりあえず此処からは出るぞ」
「えっあっ、そうだね」
俺の視線の先に、何があるか気付いて同意してくる。
とりあえずなるべく花を、踏みつけないようにでよう。それから適当に理由を付けて―― 色が変わった?
花の色が一斉に、白に変わる。訳が分からない。けれどおかしな現象に、バグが始まる気がした。
―― まずい
さっきの続きでも見るはめになったら、何時も通りでいられる気がしない。ジルベールには悪いが、さっさと立ち去ろう。次に会ったときに、何か理由をつけて謝れば良い。
「ジルベール!」
またなと短く告げようとして、ジルベールの方を見たとき赤が散る。白い花もジルベールも、全てが赤に染まったように見えて――手を伸ばし声を張り上げていた。




