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最終章 攻略なるか? そしてリンクした未来01

 マナはデビルタワーのすぐ足下に来ると、その異様を見上げた。黒々とそびえ立つ邪悪な塔。マナのいた世界の悪意を受信し、闇としてこの世界に放つ。恐るべき悪の発生源。これを壊さない限り、この世界に平和は訪れない。


「く。すごい邪気だ……」

 デビルタワーから放たれる邪気は強烈なものだった。マナはその場にいるだけで、目眩がしそうだった。瑛気の使い手でさえ、気を抜くと肉体と精神をもっていかれるほどの強力な邪気だった。だがマナは怯まない。怯むわけにはいかない。


「ぶっ壊してやる!」


 マナは右手に力を込めた。グアンベリーがリングの中に引っ込み、右手を天に掲げると、振り降ろす勢いで黄金の指を鳴らした。

 ブアッヂイイイイイイン!

 先ほどベルゼブブを倒したときのような大きな音が響きソニックブームが巻き起こる。だが、デビルタワーに爆発は起きなかった。


「あれ、なんで?」


 マナはまた指を鳴らした。何度も鳴らした。だが、やはり爆発は起きない。


「なんで? どういうことだ?」


 ベルゼブブを一発で吹っ飛ばしたあの破壊力であれば、デビルタワーを壊すことは容易だと余裕さえ持っていたマナは焦った。

 そして、場に変化が起こり始める。


「う!」


 マナは目眩を起こした。思わず膝を突きそうになる。


「黒い……!」


 あたりに黒いもやがかかり始めているのだ。それは濃密な邪気だった。先ほどよりも邪気の量が増えているのだ。

 どういうことかと、シェバの方を見る。シェバも苦しそうな様子で、答えた。


「月の刻が過ぎようとしている……!」


 はっとなり、マナは空を見上げた。すると先ほどまで三つ重なり一つに見えていた月が、ずれていた。日暮れが迫っているのだ。


「うあ、まずい!」


 マナは焦り、指を鳴らす。しかし指音がむなしく響くだけだった。徐々に三つの月が重なりを解こうとしていた。


「どうすりゃいいんだ!?」


 このままではベルゼブブも復活しかねない。マナは絶叫に近い悲鳴をあげていた。


「ソニックブーム(音の衝撃波)の威力が弱いのよ」


 再び姿を現したグアンベリーがいった。


「弱いって?」

「要するに、もっとも~っと大きな音を鳴らさなきゃ駄目ってこと」

「大きな音!」


 マナはシェバの方を振り返った。


「マナ! イメージするんだ! 音の鳴る物を瑛気で作るんだ! それを君のその右手で打て! ここまで来た君なら絶対にできる!!」


 マナはこくりと頷き、右手をデビルタワーに向けて伸ばす。そして目を瞑り、イメージを開始した。大きな音の鳴る物を。何を作ればいいのかを。そして瞬時にそれを決め、マナはその物体のイメージを強くする。マナの右手の先から瑛気が空間を泳ぎ、前方に何かが形作られていくのを感じる。マナは、しっかりとイメージした。それを具現化するために。

 そしてマナが目を開けたときには、その物体はすでに出来上がっていた。

 シェバが呟く。


「太鼓か……!」


 マナの目の前には、バチで打ちつける円の部分が直径二メートル、本体の長さが四メートルはあろうかという大太鼓が出来上がっていた。小学五年生のときに打った、あの唐獅子太鼓をより大きく強くイメージしたのだ。あの唐獅子太鼓を打つたびに、バチを持つ両腕から全身に響く震動、体の細部にまで届くかのような音を、マナは今でもしっかりと覚えていた。

 マナは右手に力を貯める。次の瞬間、マナの右手が光を増し、一回り大きくなった。


「いくぞおおおおおおお!」


 雄叫びと共に、マナは黄金の右手で大太鼓を打った。


 ドン!


 打った!


 ドン!


 乱れ打った!


 ドンドン! ドドン! ドンドン! ドドン! ドンドン! ドドン! ドンドドン! ドンドンドン! ドンドドドン! ドンドンドンドン! ドンドドドン! ドンドン! ドドン! ドンドドドン! ドドドン! ドドドン! ドンドンドン!


 打つごとに巨大なソニックブームが巻き起こる。その衝撃でデビルタワーの巨体が揺れていた。

 マナの勇姿を見ながら、シェバが呟く。


「音に門を掛けると書いて、闇と読む。ならば閉ざされた門を打ち破るほどの大きな音を鳴らせば、きっと闇は砕ける。マナの瑛気が生みだす音こそが、闇に対して最も有効なのかもしれない……!」


 マナは大きく右手を降りかぶる。拳をよりいっそう強く握りしめる。右拳の黄金の光がよりいっそう輝いた。その刹那、マナはハナのことを思いだした。幼い頃、マナをいじめっ子から救ってくれたハナのことを。


『アンパンチってなんのためにあるか、分かる?』


 そして、ハナとマナの言葉が重なった。


「『こういうときのためだああああああああああ!!』」


 フルスイング(全身全霊)――!


《ウルトラ・ドラムストライク!!(超・太鼓の一撃)》


 ドドドオオオオオオオオオオン!!


 マナの全精力をかけた拳が大太鼓を激しく打った。閃光のような大きな大きなソニックブームが起こり、それはデビルタワーに大爆発を起こした。


 ゴオオオオオオオ……。


 やがて爆発が収まり、煙の中からマナの姿が露わになる。


 ビキッ。


 大太鼓が近い部分からデビルタワーに亀裂が走った。そして亀裂はどんどん広がっていき、デビルタワー全体に行き渡る。

 亀裂から閃光が走る。瞬間、漆黒のタワーが音を立てて崩れ落ちた。

 そのとき、崩れ落ちていくデビルタワーの大きな断片がマナに降りかかろうとしていた。だが、マナは先ほどの一撃で瑛気を使い果たし、身動きがとれずにいた。

 動けないマナ。今、マナに大きな塊が――。


「キントウーン!」


 すんでのところで、超高速で筋斗雲に乗ったチェインリーが現れ、マナをかっさらっていった。ここにきて、シェバが瑛気を回復させたのだ!


「よくやった、マナ!」


 マナと同じくチェインリーの脇に抱えられたシェバが、マナに祝福の声をかける。


「へへ」


 マナ、シェバ、チェインリーを乗せた筋斗雲は、崩れ落ちていくデビルタワーを悠々と空から見下ろした。

 ついに成し遂げたのだ。難攻不落のデビルタワー攻略を!


「やった……」


 瑛気は尽き果てていた。だがマナは、チェインリーに抱えられたまま、全身で喜びをにした。


「やったぞー!!」


 へろへろの体から声を絞りだしてマナは叫ぶ。歓喜の瞬間だった。



 灰色だった痩せた大地に土の色が戻っていた。崩れ落ち消滅したデビルタワーのあった場所で、マナたちは喜びの声をあげている。

 マナもシェバも憔悴しきっていた。きっと遠く離れた地でデルダと戦い、援護射撃をつづけてくれたレオルドも。力をだし尽くさねば、決して勝てなかった、死闘だったのだ。

 だが、それとは裏腹に、マナたちの顔は生気に満ちていた。

 マナはデビルタワーよりはるか高い空を見上げた。月の刻は過ぎ、一つに重なりあっていた月たちは三つの姿に戻っている。

 気がつけば、満天の星空だった。


「テュエル、約束は守ったよ」


 この世界を平和にするために、必ずデビルタワーを壊してみせる。テュエルに誓った約束をマナは守って見せたのだ。最期に信じているといってくれたテュエルとの約束を。


(もう二度と君に会えないけれど……)


 歓喜の瞬間を終え、現実に戻るマナの顔には寂しさが宿っていた。

 シェバが、そっと声をかける。


「マナ、君が成し遂げたんだ。この世界が生まれ、幾星霜の年月を越え、誰にも成し遂げられなかったことを。君が」

「俺だけじゃないよ。シェバもリーくんも、ベリーも、レオルドさんも、そして……」


 テュエル。大切な人を亡くしてしまった。だが、それなしにはこのデビルタワー攻略は成しえなかっただろうということも、マナは理解していた。その名前を声にはださなかった。殺伐とした感情で必死に強敵と戦っていた先ほどまでとは違い、今は簡単に悲しみで立ち崩れてしまいそうだったから。空を見上げながら、涙がこぼれそうになる。マナはそれを押し殺して、シェバを見た。


「みんなの力が後押ししてくれたんだ。この世界を変えたいっていうみんなの力が」


 シェバはマナを労るように微笑んだ。


「分かってくれているなら、それでいい」


 そして付け加える。


「テュエルも天国で喜んでいる。君を信じて良かった、と」


 その言葉を聞いた瞬間、マナの涙腺は崩れ落ちた。とめどなく涙が溢れだしてくる。助けられなかった。テュエルは死んでしまった。だけどテュエルは、死の直前、嘆きの言葉ではなく、信じているといってくれた。そして今のシェバの言葉。もうテュエルの言葉は聞けないけれど、シェバがテュエルの言葉を代弁してくれた。


「ふぐ……喜んで、くれてるなら、いい」


 マナは嗚咽を漏らしながら、そうあってほしいと星に祈った。今にも降り落ちそうな星たちは、テュエルの大好きな星たちは、そんなマナの思いを悠然と見守っていてくれるような、そんな気さえした。


「忘れない……、テュエルのこと、忘れないよ!」

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