表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/17

第7章 『第一次世界大戦』デルダ現る、それぞれの戦いへ02

 すでに辺り一体は黒い灰で覆われていた。レオルドのブーツの足首あたりまでが灰に埋もれている。

 ヘビーマシンガンを肩に抱え、撃ちつづけるレオルド。その顔が疲れを見せ始めている。

 デッドマン・アッシュの毒性攻撃を瑛気で防ぎつつ、ヘビーマシンガンでデルダを攻撃しつづけている。瑛気の消耗は相当に激しかった。自らの瑛気を一気に失いながら、レオルドは呟いた。


「まるで、自分の身を削っているようだぜ、デルダ」

「それはお互い様さ」


 まさしく消耗戦だった。レオルドの瑛気弾がデルダのダーク・メイルを焼き、焼かれたダーク・メイルがデッドマン・アッシュとなってレオルドに降りかかる。お互いがその身を燃やし尽くすような、デスゲームだった。

 しかし、そのデスゲームのさなか、デルダは笑っている。レオルドの疲れた表情とは裏腹に。


「そろそろ、その手は限界なんじゃないのかい?」

「よけいなお世話だ」


 撃ちつづけるレオルド。余裕で受けるデルダ。


「だしなよ。コフを」

 コフと聞き、レオルドの表情に変化が起きる。


「ふふ。それとももう限界かい。疲れているようだよ」

「ふん」


 レオルドが笑みを作る。何かを秘めているような笑みだった。しかし――。


「だしたいのは、やまやまなんだが……」


 ここでレオルドに動きがあった。ヘビーマシンガンの連射を止め、片膝をついたのだ。

 はあはあと息を切らすレオルド。額から流れた汗が顎からぽたぽたと黒い大地の上に零れ落ちていく。


「なんだ。つまらないな。本当に限界だったみたいだね」


 レオルドは答えることもできないくらい疲弊しているようだ。両手を大地に着き、身体を覆っていた瑛気すら消えた。


「飛ばしすぎだよ、レオルド。あーあ、せっかく楽しかったのに」


 デルダはむくれた顔を見せた。

 必死に顔を上げ、デルダを睨むレオルド。歯を食いしばっている。


「くそ……」


 やがて、黒い灰も降るのを止めた。しかし大地にはすでに多量の灰が降り積もっており、瑛気で身体を護れなくなったレオルドの精気を奪っていた。


「がはっ」血を吐くレオルド。苦悶の表情で下を向く。「いよいよもって……やばそうだ」


 デルダはそれを見てため息をついた。心底つまらなさそうに。


「はあ。これで終わりか。でも、君とのゲームはそれなりに楽しいから、今日はこの辺でおしまいにしてあげるよ。いじめは趣味じゃないんだ」


 デルダがそういうと大地を覆っていた灰が一瞬で霧状になり、すぐにデルダの身体に吸い込まれていった。

 やがてすべての黒い灰をその身に吸収し終えると、デルダはまた笑っていった。


「もう彼らの助太刀に行く力も残されていないみたいだし、僕の役目はこれで終わりだね」


 デルダの身体が足下から徐々に黒い霧に変わっていく。


「また遊ぼうね、レオルド。今度はもっと長く遊びたいな」


 デルダの頭も霧に変わった。そして霧散し、消えた。

 後に残されたレオルドは四つん這いの状態で俯き、歯ぎしりをしながら、大地に爪を食い込ませていた。

 そして――笑った。

 片膝をつき、すっと立ち上がる。ぱんぱんと両手と両膝についた泥を払う。

 ぷっと血の混じった唾を吐くと、両手を大空に向けて広げ伸びをした。


「ん……」


 そして首をぐるぐると回すと、ふーっと息を吐いた。

 先ほどまでの疲弊しきった表情が嘘のように晴れ渡った顔をしていた。


「ふー。芝居を打つのも一苦労だ。マジで灰を少し吸ったからな」


 そういうと、げほげほと咳をする。


「ちなみにコフってのはcough(咳)じゃねえぞ。月だ」


 誰にいうでもなくそういうと、顔を上げ、にやっと笑った。


「待ってろ、マナ、シェバ! 今行く!」


 再びレオルドの身体から赤い瑛気が迸った(ほとばしった)。燃えるような瑛気が、レオルドの周りを広がっていく。

 ブラフ(芝居)だったのだ。まだこれだけの瑛気を内に秘めていたのだ。すべてはデルダを遠ざけるためだった。そして、コフを喚び(よび)だすためだった。


コフ!!」



 今まさに、悪魔の凶刃がマナを斬り裂こうとしていた。そのときだった。


コフ!!」


 どこからか声が響き、天空から一条の赤い光が撃ち落とされた。それは寸分狂わずベルゼブブの体を撃ち抜いたのだった。

 すんでのところでベルゼブブの動きが止まり、刃はマナに届かなかった。


「があ! なんだ、今のはあ!?」


 ベルゼブブが苦悶の表情で天を仰ぐ。マナも空を見た。遙か上空に何かが浮かんでいるのが見えた。


「月?」


 その月とおぼしきものが赤く光った。次の瞬間、光の弾幕がベルゼブブを襲った。


「がががががががが!?」


 次々と光の弾丸に体を撃ち抜かれ、蜂の巣にされるベルゼブブ。その場に縫い止められたように身動きがとれなくなった。

 マナは被害を受けぬように距離を取った。


「レオルド・ファイアだ……!」


 倒れていたシェバが声を振り絞った。


「そうか! レオルドさん、助けに来てくれたんだ!!」


 レオルドはデルダと死闘を演じた場所にいた。そして空を見上げていた。その体からは尋常ならざる瑛気が立ち昇り、その光で空を照らしていた。


コフ。俺が瑛気で作りだした衛星型のガトリング砲だ。月を通して向こうの状態は見えている。そして狙いは外さない。どんなに離れていても、この月が必ず闇を撃ち抜く!」


 マナの目の前で凄まじい量の光の弾幕がベルゼブブを撃ち抜いていた。


「マナ……!」


 シェバの呼びかけに、マナは頷く。グアンベリーを呼びだすのだ。


「ベリー! 答えが分かったぞ! おまえの好物を当ててやる!」


 マナは喉が張り裂けんばかりに叫んだ。


「出てこい、ベリー! おまえと友達になりたいんだああああああ!!」


 空気が震えるほどの大声が響きわたった。同時にマナの体から瑛気の光が吹き出る。

 刹那、ついにグアンベリーが答えた。


「友達からってこと? 恋人に発展することを見越しての?」


 ばかばかしい、あのグアンベリーの声が聞こえた。はっとして、グアンベリーのリングを見ると、そこにはリングの上にちょこんと座った小さなグアンベリーがいた。


「きたああああああああああ!!」


 歓喜の雄叫びをあげるマナ。


「あ、アタシに会えてそんなに嬉しい?」

「嬉しいよ! てか、遅い! 遅いよ! 何やってたんだよ! もう少しで死ぬところだったんだぞ!?」


 マナは怒っているが、顔は笑っていた。とうとう頼みの綱のグアンベリーが現れたのだ。嬉しくないはずがない。


「ご、ごめえん。アタシ、夢幻界で桜桃園おうとうえんっていう桃園を経営してるんだけど、こんなときに限って忙しくって」

「桜桃園?」


(なんかどこかで聞いたことがあるぞ……)


「そこで桃作ってるの。アタシ、いい女なだけじゃなくて、商売の才能もあるみたいなんだ。天は二物ニブツ三物サンブツもアタシに与えたんだね。うん。人生って不公平だと思うよ」

「桃って……!」


(思いだした! リーくんがいってた桃園だ!)


「あ、リーくんもよく食べにくるよ。昨日も来たわね」

「でも、リーくんはベリーのこと知らないって……」

「あ、そうなの? まあ、アタシも名乗ってないし」

「オーナーの名前を知らなかったのか……」


(リーくんは夢幻界は広いっていってたけど、世間は狭い……)


「それに、ちょっとおめかしに時間が掛かっちゃってさ」

「おめかし?」


 グアンベリーの姿をよく見ると、ボブカットの頭に以前は見なかったリボンが付けられていた。顔にもアイシャドーが塗られ、口紅も塗っているようだ。


「なんで、こんなときに……」

「あ、あんたのためなんかじゃないんだからね!」頬を紅潮させ膨らますグアンベリー。


(なんだこれ……)


 ぽかんとするマナに、グアンベリーは取りなすようにいった。


「ちなみに、桃は好きだけど、今回の好物の答えじゃないわよ」

「そ、そうだ。急いでるんだ、ベリー。答えを当てるぞ」

「うん、そのようね。さっきからベルゼブブも変な悲鳴あげてるし。きも~い。よし、答えを聞こうじゃないの」


 マナは生唾を飲み込み、大きな声ではっきりといった。


「グアンの好物は、『苺大福』だ!」

「む。なんでそう思ったの?」

「グ・アン・ベリー! 具が、あんとベリー。ベリーといえばストロベリー、苺! だから、苺大福!」


 グアンベリーが黙る。ベルゼブブが撃たれつづける音だけが響いた。そして、彼女は沈黙を破った。


「そのとおり~。アタシの名は、グ・アン・ベリー! 具が餡とベリー! アタシは自分が大好き。自分の名前に誇りを持ってる! だから、苺大福が大好き! あれ発明した人、天才よね!」


「よし!」


 マナは正解を引き当て、その場でガッツポーズをした。


「じゃあ、これで、俺と特別な契約をしてくれるね!」

「うん。ちゃんとアタシのことを理解してくれたしね。ここしばらくはもう、マナはアタシのことで夢中だったんでしょう? もう欲しくて欲しくて、たまらないんじゃないの?」

「いいから、早く!」

「急かすわね~。そんなにアタシが欲しいの? 参ったね。じゃあ、くれてやるわ。まずはお友達の証からね?」


 すると、グアンベリーのリングが一瞬明滅したかと思うと、よりいっそう強い黄金の光を放った。


「ああ! 右手に力が、みなぎる!」


 マナには無尽蔵とも思える強大な瑛気が右手から溢れだしてくるようだった。右手がエメラルドグリーンから黄金の光に変化している。

 ついに、グアンベリーとの特別な契約が交わされ、リンクが深まったのだ!


「これなら……!」

「いけそうでしょう? ふふん」

「うん、ありがとう! ちなみに俺の好物は肉まん!」

「アタシはだんぜん、あんまんね」

「具が餡だもんな!」

「そう、具が餡だから~……さて、やるんでしょ? 一発で決めなよ!」

「うん!」


 光の弾幕に包まれながらも未だ再生をつづけるベルゼブブを見た。この難敵を倒すには、もはや強大な一撃で消滅させるしかない。

 グアンベリーの体がリングに吸い込まれていった。マナはそれを確認すると右手を天に掲げた。グアンベリーがリングの中から叫んだ。


「鳴らせ! 炸裂させろおおお!」

「おおおおおおおおお!!」


 ブアッヂイイイイイイイン!!


 タイヤを引きちぎるかのような、強引な音が響いた。マナが全力を込めて指を鳴らしたのだ。瞬間、マナを中心にして、円が広がるように目に見えて分かるソニックブームが飛んだ。それは音速で飛び、ベルゼブブを撃った。


 ドッゴオオオオオオオオオン!!


 ベルゼブブを中心に今までにない爆発が起こり、耳をつんざくような爆発音が轟いた。爆風が吹きすさび、砂塵が舞う。マナは爆風と砂塵のすごさに目を閉じた。

 やがて風も収まり、マナは目を開けた。爆発とともに宙を舞い上がった土がぱらぱらと地面に落ちている。そして、ベルゼブブの姿は、もうそこにはなかった。超爆発で、跡形もなく消し飛んだのだ。


「やった!」


 歓声をあげるマナ。見ると、先ほどまで地面に伏していたシェバも片目を開け、口元に笑みを湛えていた。


「やったよ、シェバ! ベリー!」


 グアンベリーがリングから顔だけだした。


「うーん、我ながら凄まじい破壊力。アタシ、いい女で商売上手なだけじゃなくて、喧嘩も強いんだね。お嫁にいけるかしんぱ~い」


 自画自賛するグアンベリー。しかし今はそれが頼もしかった。

 勢いを取り戻すマナたち。シェバもなんとか体を起こした。


「マナ、安心している暇はないぞ。すぐにデビルタワーを壊すんだ!」

「うん!」


 そうだ、まだデビルタワー攻略は終わってはいない。最後のミッション、デビルタワーの破壊が待っている。

 マナは走った。いざ、デビルタワーへ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ