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第6章 襲来01

 翌日、マナはシェバと森の中で、何時間もの瑛気の修行をしていた。チェインリーも小さな体で雷霆棒らいていぼうを担いで(かついで)それを見守っていた。だが、何度イメージを繰り返しても瑛気は発動してくれない。


「くそお!」


 マナは苛立ちながら、近くにあった木を殴った。森の静寂の中で、マナだけが心を乱していた。傍らではチェインリーがため息をついている。


「落ち着くんだ、マナ。心を乱してはいけない。イメージを高めることに集中しなくてはならない」

「分かってるけど……!」


 月の刻がすぎるまで、もう今日を入れて四日しかないのだ。マナは心底焦っていた。


(絶対になんとかしなきゃいけないんだ。テュエルを裏切るわけには行かない)


 マナは胸の前で両腕をクロスさせ、腰に向けて振った。目を瞑り、ふ~っと息を吐く。マナが学んだ空手の呼吸法だった。そうして心を落ち着かせようとした。

 そしてイメージを膨らませる。


(守りたい。闇からハナを守らなければいけない……!)


 だが、心の中で言葉を唱えても、マナの体に変化は起こらない。焦りは集中を乱す。だが、諦めるわけにはいかない。

 シェバがマナを落ち着かせようと言葉をかける。


「一度、瑛気を自らの意志で発動できるようになれば、あとは自然にできるようになるはずだ。一度でいいんだ。必ずできる」

「うん」


 マナは、また空手で習った呼吸法を行う。心を落ち着かせる。そして一気にイメージを高める。

 そのときだった。シェバが何かに気づいたように森の中を見た。マナもシェバの見る方に向く。


「どうしたの?」

「……闇だ! 村に向かっている!」

「ええ!」


 シェバが駆けだした。マナも後ろを追いかける。森を抜けると、村に向かって、闇が飛んでいくのが見えた。それも数十体はいた。シェバが叫ぶ。


「リー!」


 すぐにエメラルドグリーンの光がチェインリーに集まり、元の巨体になる。


「伸びろ、雷霆棒!」


 チェインリーの叫びと共に雷霆棒は本来の長さになり、そのままチェインリーは闇に突撃した。そして村の方からも、赤い光が放たれるのが見えた。レオルドだ。

 シェバ、チェインリー、レオルドと闇の攻防が繰り広げられた。何もできないマナはおろおろしながらそれを見ていたが、テュエルのことが心配になり、村の中を駆け回った。


「テュエルー!」


 村人を一人捕まえ、テュエルの居場所を訊いた。だが首を振られた。するとすぐに別の村人が走ってきて叫んだ。


「大変だ! テュエルたちは今、野いちご狩りに森の中に行ってる! もし襲われたら!」


 マナは全身が泡立つのを感じた。ハナが襲われたときのことを、次いで、自分が殺されかけたときのことを思いだした。


「どっち?」


 叫ぶように村人に訊く。その村人も指さしながら叫んだ。


「東の門を抜けてまっすぐ奥の森の中だ!」


 マナはそれを聞くやいなや、全速力で駆けだした。すぐに村を出て森の中に入る。


「テュエルー!」


 大声で叫びながら、森の奥に入っていく。湖までは小道ができているようで迷うことはなかった。そして、木々の先から悲鳴が聞こえた。

 マナは息が切れるのもかまわず森の中を駆け抜けた。すぐに湖が視界に入った。そして、闇の姿を数体、確認した。その闇が今まさに、テュエルに襲いかかろうとしているところを目撃する。


「やめろー!」


 マナの体が光を放つ。マナはここにきて、ついにエメラルドグリーンの瑛気を発動させた。グアンベリーのリングが光沢を増し明滅する。右手が瑛気の光そのものとなった。


――鳴らせ! 炸裂させろ!


 頭の中に、またあの声が響いた。瞬間、マナは指を鳴らした。


 ドゴオオオオオオオオオオオオン!


 爆音が空気を振動させる。数体いた闇がすべて爆発したのだ。

 黒い煙の中で、体の半身以上を失った闇たちが、声にならぬ声をだし、四散した。


「テュエル!」


 マナはテュエルの元に走った。テュエルはお尻を大地につけたままその場を動けなかったが、マナが来ると、その腰に抱きついた。


「マナ様あ……!」


 泣きむせぶテュエル。マナはその頭に手をやった。周りを見る。他に三人、村人の死体があった。


「……!」


 間に合わなかった。助けられなかった。マナは無念を感じずにはいられなかった。


「今のがおまえの瑛気か、マナ」


 後ろから声がした。振り向くと、レオルドとシェバがいた。マナの後を追ってきていたのだ。


「村の方は?」

「大丈夫だ。闇はすべて退けた(しりぞけた)」


 シェバがそういう。レオルドはじっとマナを見つめていた。その力を推し量ろうとするように。

 テュエルはマナにしがみつきながら、まだ震えている。助けられなかった村人をまた見て、マナは、声を絞りだした。


「こんな恐ろしいことは終わらせなければいけない。誰かがやらなければいけない……!」


 そしてレオルドを見ると、力強くいい放った。


「あなただって本当は、あなたの旅を終わらせるための最善の方法がなんなのか、分かってるはずだ!」


 レオルドは震えるテュエルの方を見た。死んでしまった村人の方も。そして静かに答えた。


「デビルタワーを壊す。そんなことが、本当に可能だと思うのか?」

「できる! レオルドさんが味方についてくれれば必ず! やるしかないんだ!」


 昂ぶる(たかぶる)マナの体から、再びエメラルドグリーンの瑛気が立ち昇った。マナはテュエルを闇から守らなければと心から願い、自らの正義を再び確認できた。そして自らが信じる正義をはっきりと心に描き、自らの意志で瑛気を発動させることができるようになっていたのだ。

 テュエルは驚きマナの顔を見る。マナは慈しむような目でテュエルに「大丈夫だよ」といった。

 そしてレオルドを見る。二人は見つめ合った。レオルドはマナのエメラルドグリーンの輝きを認めるようにいった。


「その瑛気、虹の鍵人の適格者としてこちらの世界に来ただけのことはある。それとも、おまえの覚悟がその瑛気を放たせるのか……」


 沈黙を貫き、二人の様子を見守っていたシェバが、ここにきて声をあげた。


「両方だ、レオルド・ファイア! 私はこの男の瑛気に賭けるぞ!」


 レオルドはシェバの目を見た。その意志を確認するかのように。再びマナを見たとき、そのブルーの瞳に確かな決意が込められているように見えた。


「俺がデビルタワー攻略に参戦するか否か。それは俺の自由だ。俺は何ものにも束縛されない」


 レオルドはやはり協力するとはいってくれない。だが、確かな変化があった。今までは頑なに拒んでいたマナたちへの協力。しかし今、レオルドは、参戦するかどうか自由だといったのだ。


「じゃあ、もしかしたら、レオルドさん、協力してくれることも……!」


 レオルドはマナを見つめたまま、何もいわなかった。だがその目は、今までマナを見ていたものとは明らかに違っていた。

 シェバが口を開く。


「レオルド・ファイア、お前は確かに自由な男だ。だがはたして本当にそうだろうか。何よりも、お前自身の信じる正義に雁字搦め(がんじがらめ)に縛られてしまっているように私は思えてならないのだ」


 その言葉はレオルドの心持ちを少しでもデビルタワー攻略参戦の方に傾けるためのものだったのだろう。

 だがレオルドは、やはり何も答えなかった。



 レオルドがデビルタワー攻略に協力してくれる可能性を示してくれた。レオルドという強大な戦力が。そのことにマナは、希望を見いだしていた。


(デビルタワー攻略、可能性がでてきたぞ。もしレオルドさんが参戦してくれることになったら、今の俺たちならきっとデビルタワーを破壊できる!)


 もう夕暮れが迫っていた。湖に、夕日が映り込む。


「帰ろう、テュエル」


 マナがテュエルに声をかける。しかし返事がない。動こうとしないテュエルの瞳をのぞき込んでも、その視線がこちらを見ていないのだ。


「テュエル?」


 そのとき、マナはテュエルの左肩に何かが止まっているのを見つけた。


(蠅?)


「テュエ……」

「残念だが、その娘はもうおしまいだ」


 突如、声が響いた。落ちたらおしまいの渓谷の深淵から響いてくるようなおぞましい声だった。

 驚くマナをよそに、シェバが声をあげる。


「どこだ?」


 三人は戦闘態勢をとった。そして次の瞬間、テュエルの肩に止まっていた蠅が黒いオーラを放った。


「ベルゼブブだ!」


 シェバが叫ぶと同時に、蝿が止まっていたテュエルの体が空中に浮かんだ。黒いオーラはテュエルを巻き込みながら、おぞましいほどの邪気を嵐のような風とともに拡散させた。


「うわああ!」


 テュエルのそばにいたマナは吹き飛ばされた。転がりながらなんとか体勢を整え、空を見る。

 そこには黒いマントを頭からかぶった、灰色の魔物がいた。チェインリーよりさらに大きな巨体、五メートルはあろうかという巨大な魔物が笑っていた。そのすぐ傍に、体をだらりとさせ、テュエルが浮いている。

 レオルドが突然の強敵の出現に面食らった様子でぼやいた。


「おいおい、なんでこんなところにベルゼブブが来てんだ?」

「テュエルから離れろー!」


 マナはエメラルドグリーンの瑛気を放ち、右手が瑛気の光となるのと同時に、その指を鳴らした。


 ドゴオオオオオン!


 ベルゼブブの体から爆音が響く。だが、ベルゼブブは笑っていた。


「うおおおおおおおお!!」


 マナは指を鳴らす、鳴らす、鳴らす、鳴らしまくった!


 ドゴン! ドゴン! ドゴオオオオオン!!


 そのたびに爆発するベルゼブブ。しかし、爆発して散ったそばから、見る間にその体が再生していくのが分かった。ベルゼブブは、なんのダメージも感じられないほどの余裕の表情だった。


「一撃一撃が軽いのだよ。ワタシの再生能力には追いつかない」

「くそお!」


 テュエルの体を持って行かれ、焦るマナ。指をまた鳴らすが、ベルゼブブには効いた様子がない。


「ほうら」


 ベルゼブブがマントを広げる。邪気を纏った(まとった)無数のハエがマナに襲いかかる。


「うわあ!」


 体勢を崩すマナの後ろから、燃えるようなオーラをまとった弾丸が数発飛んだ。その弾丸はハエの一群を撃ち抜き消滅させ、ベルゼブブの体をも撃ち抜いた。


「む?」


 先ほどまでの余裕の表情から一転、ベルゼブブは眉をしかめた。


「リー!」


 次いで、チェインリーがベルゼブブに向かって飛んだ。雷霆棒を思い切り振るい、ベルゼブブに打ちつけた。

 よろけるベルゼブブ。


「ふむ。一人は不完全体とはいえ、虹の鍵人三人をまともに相手にするのは分が悪いか」


 そういうと、レオルドとシェバの追撃を避けるように、さらに上に飛んだ。テェエルが重力を取り戻し、落ちてくる。マナは必死で落下地点に飛び込み、その体を受け止めた。


「テュエル、しっかりするんだ!」


 テュエルにはもう生気が感じられなかった。だが、わずかに瞳を広げてマナを見るといった。


「……マナ様、信じております」


 そしてその瞳は光を失い、閉じた。


「テュエルー!」


 マナはテュエルの体を揺り動かすが、その体が再び自らの意志で動きだすことはなかった。

 ベルゼブブが憎らしく笑いながらいった。


「ワタシもデビルタワーの近くでないと、完全な力を発揮できない。かの地で決着をつけよう、お三方さんかた! ごきげんよう!」


 ベルゼブブの体が黒いもやのようなった。大量の蠅に変わっていた。そしてその蠅の大群は、デビルタワーに向かって飛んでいった。


「ふははははは! 新たな虹の鍵人、恐るるに足らずー!」


 マナはキッとベルゼブブの飛んでいった方を睨んでいたが、自分が抱えているテュエルの方に向き直る。テュエルはもう息をしていない。


「テュエル……」

「野郎、もう月の刻のタイムリミットが迫ってやがるから、こちらの戦力を確認しにきたんだな。村を襲った闇もベルゼブブの差し金だ」レオルドが憎らしげに唾を吐いた。「マナ、残念だったな……」


 マナは答えない。答えられない。顔を下げ、嗚咽を漏らしていた。


「う……く……。守れなかった……とうとう、大切な人を守れなかった……!」


 マナは深く悔やんだ。レオルドもそれ以上は声をかけられなかった。シェバも声をかけることはできなかった。そしてレオルドに問いかけた。


「どうする? レオルド・ファイア」


 マナの瑛気が通用しなかった。このままでは三人がかりでも勝てるかどうか分からない。しかしレオルドは、あっさりといった。


「今ので参戦する気がなくなるほどびびってはいないさ。さっきもいったとおり、俺は自由にやらせてもらう」


 レオルドは、一度口にだした言葉を引っ込めるつもりはなさそうだ。だが、マナはまだ嗚咽を漏らしている。自分の非力を恨んでいた。



 マナたちは村に戻っていた。マナはレオルドに、その身を引きずられるように帰ってきていた。


(どうして? せっかく闇の手から守れたと思ったのに、どうしてテュエルは殺された? なんで守れなかったんだ!?)


 守れなかった。マナはついに大切な人を守れなかった。マナの瑛気が通用しなかった。瑛気を発動させることさえできればなんとかなると思っていた。絶対だと思っていたグアンベリーのリングと連携したソニックブームによる攻撃でさえ、ベルゼブブには歯が立たなかったのだ。


(俺が弱いせいだ……! 俺がもっと強ければ、きっと守ることができたのに、俺が弱いから!)


 マナにはもはやデビルタワー攻略どころではなかった。目の前の大切な人を守るという、そのマナの正義が打ち破られてしまったのだ。

 人は人とリンクしている。人が一人死ねば、それで終わりというわけではない。悲しむ人が生まれ、リンクが深ければ深いほど、その痛みは想像を絶することになる。テュエルの両親になんていえばいいのか、とうてい分からなかった。

 自分が守れなかったせいだとマナは自分を責めた。テュエルを守れなかったという現実がマナの心を深い後悔と悲しみ、非力な自分への怒りにおとしいれていた。


(ちくしょう! ちくしょう! ちくしょう!!)


 やがて村に着くと、村人たちとテュエルの両親がマナたちを待っていた。

 テュエルの父親が心配そうな表情でマナの元に寄ってきた。


「テュエルは、どうなったんですか?」


 マナは答えることができなかった。テュエルの両親の顔を見ることも。代わりにシェバが答えた。


「残念ですが、テュエルは闇に……」


 皆までいう必要はなかった。テュエルの母親は両手で顔を覆い、父親が無念そうな表情で母親の肩を抱いた。


「そいつは何をしたんだ!」村人の一人が声を荒げた。「俺は見ていたぞ。闇が押し寄せてきても、そのガイアの人間は、村の中で何もできずにおろおろしているだけだった! いったい、何しに来たんだ!」

「そうだ! そもそもこいつらの悪意のせいで俺たちは死ぬような目にあってるんだ! ガイアさえなけりゃ……! テュエルを殺した闇だって、元々はこいつの悪意かもしれないじゃないか!」

「俺の悪意?」


 とんでもない言葉を聞かされ、マナの心にひびが入った。ひびからは血が流れ出ているような痛みが襲ってくる。


(もしかしたら、俺が……テュエルを!?)

「考えるな、マナ!」


 シェバはマナの心が危険な状態にあると見て、慌てて声をかけた。

 そのとき、状況を見守っていたレオルドが声をあげた。


「こいつが何をしてたかって? 戦っていたさ。テュエルを守るためにな。こいつなりに必死に戦っていたんだ! 俺はちゃんと見ている!」


 レオルドの勢いのある言葉にマナを責めていた村人たちは口をつぐんだ。

 さきほどまで嗚咽を漏らしていたテュエルの母親が口を開く。


「テュエルのために、戦ってくれたんですね、マナ様」


 マナはテュエルの母親を見ることができないまま、両目をぎゅっとつぶり、強ばった(こわばった)口を動かした。


「……戦いました。全力で……! でも……、守れなかった……!」


 マナの両目から涙がこぼれる。マナは非力な自分を恨んだ。

 すると、テュエルの母親は優しい声でいった。


「ありがとうございます……テュエルのために」


 見るとテュエルの母親は涙を携えながらも、穏やかな顔をしていた。テュエルの父親がつづく。


「こういうことがあるかもしれないということは、我々は常に覚悟しています。あなたが何もしなかったのなら、私はあなたを殴っていたかもしれない。でも、戦ってくれた。レオルド様も見ていたと。恨み言をいうつもりはありません」


 父親も穏やかな顔をしていた。どれほどまでか、つらいだろうに。そして彼はテュエルの最期を確認した。。


「テュエルは、最期に何かいっていましたか?」

「お、俺を、信じている、と……」


 マナの言葉を聞き、母親は笑顔でいった。


「負けないでください。私たちも信じています……!」


 マナは涙が止まらなかった。彼らの優しさに触れ、自らの非力が悔しくて。自分が何をすべきなのか、マナには痛いほど理解できた。だが、どうすればベルゼブブに勝てるのか、とうてい分からなかった。


「泣いている暇はあるのか?」


 レオルドが強い語気でいう。


「この俺がおまえの戦いを見て、デビルタワー攻略に協力する可能性もあるといってるんだ。おまえを信じている人間、テュエルのために、おまえは何をするんだ、マナ?」


 マナは無理矢理にあふれだしてくる涙をせき止めようとした。嗚咽を漏らしながら、歯ぎしりをしながら答えた。


かたきを討ちたいです……! ベルゼブブに勝ちたい……! デビルタワー攻略を成功させたい! でもどうしたら、勝てるのか、分からないんだ!!」


 叫ぶように声をあげるマナ。だが、レオルドは意外に簡単に答えを提示した。


「手はあるぜ。グアンベリーのリングがおまえにあるならな。なあ、シェバ」


 顔を上げるマナ。そしてレオルド、次いでシェバを見る。

 シェバは首肯しゅこうしていた。


「確かに手はある」


 その言葉を聞くやいなや、マナはシェバの前に四つん這いのような形になりながら訊いた。


「どんな!? どんな手があるんだ、シェバ!?」

「君がグアンベリーとのリンクを深めることだ。私が雷霆棒、孫悟空と特別な契約をして、リンクを深めているように」


 マナは、はっと目を見開いた。


「そうだ。確かシェバは孫悟空と特別な契約をして、雷霆棒の力を引きだしているといってた。そうだよね、シェバ!」


 頷くシェバ。マナは興奮した様子で問う。


「俺にも可能ってこと? グアンベリーとリンクを深めること! そうしたら、グアンベリーのリングはもっとすごい力を発揮してくれる?」

「できるはずだ。現に君の右手首にそのリングが根付いているという事実が、その可能性を示している」

「じゃあ、どうやって特別な契約を?」

「それは分からない。だが私が分かっていることをいおう。契約とはコミュニケーションだ。そしてリンクを深めるとは、絆を深めるということだ。スピリットアイテムの人格と何かしらのコミュニケーションをとることで、絆を深めるんだ」

「コミュニケーション……」


 レオルドが口を挟む。


「どうなんだ? グアンベリーとは会話ができるのか」


 マナは残念そうにかぶりを振った。


「いえ。強い瑛気を発したときに、一方的に声が聞こえてくるだけです。『鳴らせ、炸裂させろ』って。指を闇に向かって鳴らせってことなんですけど」


 シェバが興味深そうにいった。


「なるほど。攻撃の指示は与えてくれるわけか。そして君は、その意味を理解している」

「はは。コミュニケーションが一応、成立してるじゃねえか!」


 レオルドの声に、マナは喜びの声をあげる。


「本当に? もう、コミュニケーションできてるの?」


 しかし、シェバが釘を差した。


「だが、それだけでは駄目だ。会話が成立しているとはいえない。事実、グアンベリーのリングは本来のパワーを発揮していないだろう」


 しかしその言葉に、マナは落ち込むことはなかった。


「会話だね? グアンベリーと会話ができれば……!」

「そうだ。まずは会話だ。そこからスピリットアイテムの人格とのコミュニケーションは始まる」

「会話……!」 マナは活路を見いだせた気がしていた。


(シェバと孫悟空のように特別な契約ができれば、きっと……!)


 再び闘志を漲らせ(みなぎらせ)るマナ。右手を掲げ(かかげ)グアンベリーのリングを見る。


(テュエル、必ず仇はとる!)

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