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17.ルネの出自

「魔力あるよね?」って聞いたら、ルネは、簡単に「あるよ」って答えた。

 でも、それから。

「でも、ないしょだよ。二人だけの」って、あたしの顔のすぐそばで微笑む。


 ……なんか、落ち着かない。

 馬で二人乗りしたときと同じような気持ちになってしまう。


 だって、ルネっては美少年なんだもん!

 セレジュもかっこいいと思っていたし、ロレシオ殿下もイケメンだと思っていたけど、一番のイケメンはルネでは⁉

 でも、ルネは十三歳なのよ。

 あたしは、中身は二十八歳! ……って言っても、全然恋愛経験のなかった二十八歳だけど。主にアニメやマンガのキャラクラ―に恋してただけ(リアルな恋じゃないよね。……分かってるもん!)。

 十八歳のアニエスの方がよほど恋愛経験豊富だ――って、アニエスはあたしなんだけど。


「アニエス? 大丈夫? 具合、悪い?」

 急に黙って顔を赤くしたあたしに、ルネは心配そうに言う。

「あ、ううん。大丈夫!」


「……ねえ、俺の魔力、なんだと思う?」

「風と土?」

 あたしはハミルトン羊毛商会の火事の情景を思い浮かべながら答える。

「当たり」

「……魔力のことを隠していたのは……貴族の血を引いているから? それも王族の血が入った」

「それも、当たり」


 ルネはまたあたしの頭を撫でる。

 ……そう言えば、ルネは教会でも、よくこうして子どもたちの頭を撫でていたわ。


「ねえ、ルネはどうして教会にいるの?」

「俺を育ててくれた母さんが死んだからだよ。母さんは親を早くに亡くしていたからね」

「……じゃあ、お父さまが貴族なの?」

「そう。ミヘット伯爵だよ」


 伯爵!

 男爵令嬢のあたしより、ルネの方がずっと身分は上だ。


「どうして、ミヘット伯爵のところへ行かなかったの? 子どもだって信じてもらえないから?」

「俺の顔は王女だった祖母に瓜二つらしいし、何しろこの金髪碧眼だろ? それに二種類の魔力もある。落とし子だって、信じるさ」

「じゃあ、なぜ?」

「行きたくなかっただけ。……母さんは、『お父さまは優しい方なのよ』が口癖だったけど、でもじゃあ、愛したはずの母さんをどうして放っておいたんだろう? 俺が生まれたことすら知らないよね? とか思っちゃったんだよね。母さんによると、二人は大恋愛だったそうだけどさ」


 平民の女性と伯爵令息の恋。

 困難だらけだっただろう。


「……俺の名前、ミヘット伯爵家の伝統に乗っ取ってつけられてるんだ。母さんは、『もし子どもが生まれて男の子なら、ジャン=ルネとつけたい』という伯爵の話を覚えていて、俺にその名をつけたんだ。ミヘット伯爵家の長男には『ジャン』がつくのさ」

「じゃあ、ルネの本名は、ジャン=ルネ・ミヘット、なの?」

「そうだよ」

「ミヘット伯爵の長男?」

「一応ね。ミヘット伯爵家には俺より年下の姉妹がいるだけだから」


 ということは、もし名乗りを上げたら、ルネがミヘット伯爵になる可能性もあるわけで。

 あたしは金髪碧眼のルネをじっと見た。

 ……そうよね。

 王族の血が入った貴族だっていう方がずっと納得できる。


「だからさ、俺、アニエスと結婚出来るから」


 ――は?


「アニエスも真面目に考えておいて」

 ルネはそう言って、あたしの頬に手をやる。


「あ、あのあのあの! 話についていけないんだけど?」

「以前、身分差がどうのって言ってただろ? 平民と貴族の結婚は難しいけど、俺、アニエスのためにミヘット伯爵家に名乗りを上げに行こうと思うから、大丈夫だって話」

「だ、だ、大丈夫って! そ、そもそも、ルネはあたしにとって、弟みたいで」

「弟じゃないって言っただろ?」

「だけど、ルネはすごく年下で」

「五つしか違わない。あと数年して、例えば、アニエスが二十五歳になったとき、俺は二十歳。全然変じゃないよ」


 ルネは碧い目に光をためて、あたしに近づき――鼻がくっつきそうなんですけど! 近すぎる――あたしをじっと見る。


「俺はすぐにアニエスに追いつくし、頼れる男になる」


 もうすでに追いつかれてるし、頼れるわ!

 と思ったけど、恥ずかしくて言葉に出来ない。


「……アニエス、俺の顔、好きだよね? きれいなものが好きだし」


 う。

 それはその通りなの!

 ああ、でも、心臓がもたないからちょっと離れて欲しい。


「俺、目標を持って頑張れるし、賢いだろ? アニエスの理想に近いと思うけど?」



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