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12.数が合わない……!

「ヴェイユ暦、羊農家の戸数、羊の頭数、羊毛量……それから、何だっけ?」

「羊毛の質、売上金額、ですね」

「それから特記事項! 『疫病が流行った』とか」

「そうですね。まずは、これらの項目を書き出してみましょう」


 *


「ヴェイユ暦1213年、羊農家の戸数52戸、羊の頭数1085頭、羊毛量10シア―、羊毛の質……不明。書いてないわ、備忘録にも! 金額は銀貨814枚」

「次の1214年は、羊農家の戸数は同じ52戸、羊の頭数は増えて1090頭、羊毛量は10シアー……頭数が少し増えても、羊毛量は同じ? この年は羊毛の質は『良』とあります。売上金額は銀貨872枚。羊毛量が同じなのに、売上金額が同じっていうことは、羊毛と銀貨の換算率が違うってことでしょうか」

「そうね。換算率って、どこかに書いてあったわ。……あった。備忘録のここよ。『今年は羊毛が良質と判定されたため、1シアーにつき銀貨80枚で取り引きされた』」


 あたしはルネといっしょに、帳簿と備忘録をもとに、羊毛の売上額をまとめなおしていた。まずは、ここ数年から。


「……しかし、他の年については書いていないですね。1シアーの銀貨換算率が書かれていないのは問題です。本当はどれだけ取引されたのか、分からない。備忘録にも全て書いていないとは。……羊毛に関する情報はどこから出たものでしょう?」

「羊農家を取りまとめている商人からだと思うわ」

「では、今度商人のところへ行って確認しましょう」

「そうね。そうしないと、この『売上金額』が正しいかどうかも分からないわ」


 あたしたちを悩ませたのは、羊の頭数と売上額の関係が一定でないことだった。


「羊毛量の記載の仕方にも問題がありますね。シアー単位で大雑把に書いています。羊の頭数が1085頭でも1090頭でも1092頭でも、全て10シアー。それに対する銀貨の枚数は、814枚、872枚、928枚と幅がある。換算率が違ったのかもしれないですけど、端数をきちんと記載していない可能性も高いです」


 端数って数じゃない気がするんだけど。

 羊1000頭分の羊毛を1シアーとしているようだけど、残りの90頭前後の羊毛はどこ行っちゃったわけ? かなりの量だと思う。

 日本人的感覚だと、細かいところまできっちり書きたい!


「あ! ここ! 1216年。この年、羊の疫病が流行った、とあるわ」

「本当ですね。羊の頭数がいきなり減っています。1092頭から685頭にまで」

「羊農家の戸数も52戸から38戸まで減っているわ。……売上金額も1216年からかなり減っているわね。1215年は銀貨928枚だったのに、銀貨343枚にまで減っている。……セドリックが帳簿をちゃんと見なさい、と言うわけだわ。男爵領の経営も、実は大変なのかも」


 あたしは帳簿をおいて、ふうと溜め息をつきながら、帳簿に突っ伏した。

 ……学校よりもまず、羊農家の復興が先かも。

 大事な産業であるわけだし。


「ちょっと待ってください、アニエス先生」

「『先生』はいらないってば」

「――その議論はあとにしましょう。羊農家1218年は38戸とあります。去年の話ですよね? 僕、もっと多いように思うのです」

「え? 嘘」


 あたしはがばっと起きると、ルネの顔をじっと見た。

 金髪碧眼の美少年。

 成長したら、すごいイケメンになりそうだ。

 ……じゃ、なくて。


「本当です。僕、領地のあちこちに行っています。羊毛農家の数はここ数年で増えています。50戸くらいあると思います」

「ほんとっ⁉ じゃあ、調べに行こう!」



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