74『お゛い゛し い゛そ゛!』(城を強襲)
夜は寿司パだった。
自分たちで巻き寿司を作って食べるパーティーだ。
ブンの母はバレーがよほど楽しかったらしく、母と楽しそうに話していた。
ブンがそんな母親を、不思議そうな、あるいは寂しそうな顔で見ていた。
ブンがまた消えてしまいそうな不安に駆られたキトンは、ブンに納豆巻きを薦めた。
「え……僕はいいよ」
「『お゛い゛し い゛そ゛!』」
「『騎士竜戦隊リュウソウジャー』のソーセージのCM。いや、悪いけど納豆は苦手で」
キトンは納豆をかき混ぜる。
「『いい音でしょう。余裕の音だ、馬力が違いますよ』」
「コマンドー語録。ホントにやめてっ、やめろぉっ! もがっ……うえぇ、苦手だって言ったのに、キトンの馬鹿! キトンなんて嫌いだ!」
「⁉」
キトンは消えてしまいそうになる。
「あぁ、あぁ、もう泣かないで」
ブンが抱きしめてくれた。
「嘘だよ。キトンのこと、大好きだよ」
「あらあら」
母が朗らかに笑う。
「こうして見てると、本当に姉妹みたいねぇ。ブンちゃん、今からでもウチの子にならない?」
一瞬、キトンはひやりとした。
ブンの表情が凍りついたからだ。
ブンが、ブンの母の顔色を伺う。
果たして彼女の母親は、キトンの母に対して抗議の眼差しを向けていた。
母親のその顔を見て、ブンが和らいだ。
キトンはほっとした。
自分の母を睨みつけると、母はドヤ顔していた。
どうやら勝算があったらしい。
『生むんじゃなかった』発言はとっさに口を突いて出ただけで、ブンの母の中にもブンに対する相応の愛はあるということか。
夜はパジャマパーティーだ。
母ズは両親の寝室に入り、他メンバーは――ハンナも含めて――キトンの部屋に入った。
彼女たちはキトンや母のパジャマを着ている。
キトンの六畳間をどのように使うのかで、少しもめた。
キトンのベッドはキトンともう一人が使うことになったのだが、ブンちゃん大好きっ子のヒカルが、キトンとブンが一緒のベッドに入るのを頑なに嫌がったのだ。
結果、ベッドにはハンナが入ってきた。
「うおっ、しっぽ先生マジでっかいっスね! ふわふわ、ふわふわっスよ! でも弾力がある! 奇跡!」
石鹸の匂いとタバコの臭い。
パーソナルスペースがバグってるハンナがやたらと抱きついてきて、キトンは難儀した。




