65『自分の言葉で(心の闇と夜明け,ターニングポイント・ツー)』
キトンは、彼女の聖域にたどり着いた。
そして、叫んだ。
ブンが首を吊って、ぐったりしていたからだ。
無我夢中で駆け寄り、いつか彼女がそうしてくれたように、ブンを肩車した。
(お願いお願いお願いっ!)
「……………………………………………………………………………………がはっ」
果たして祈りが通じ、ブンが息を吹き返した!
「死なせてくれっ」
ブンが泣き叫ぶ。
「『悪魔祓師物語』は終わってしまった。名無し猫さんにも申し訳が立たない!」
「それ、私です!」
キトンは叫んだ。
「名無し猫は私です。私が、ブン先輩を作家にしたんです。だから私には、先輩を作家として大成させる責任がある!」
「キミが……キミだったのか」
ブンが、縄を解いた。
解いてくれた。
キトンはブンをゆっくりと下ろす。
「先輩のおかげで、私は生きる意味を見つけられたんです」
キトンは今や、自分の言葉で話す。
「死なないで。生きて。私のために書き続けて、猫又ブン先生」
ブンが泣いている。
「私、ブン先輩のペンネーム、言い当てました。一つ、言うこと聞いてください」
「いや、言い当てたわけでは……ふふっ、まぁいっか。キミは何を望む?」
「私と一緒に発刊して。私と一緒に、再デビューしてください」
キトンはブンに手を差し伸べる。
ブンは呆然としていたが、やがて微笑み、その手を取ってくれた。
「『手を取ったね?』」
ニヤリ、とキトンは微笑んだ。
自分らしからぬ、非常に挑戦的な笑みだ。
そう、これは自分の言葉ではない。
五月のあの日、ブンが告げてくれた言葉を語録とし、キトンは高らかに宣言する。
「『キミは今、真世界への扉に手をかけた。覚えておくといい。ここが、「ターニングポイント・ツー」だ。ラノベ一冊九万文字の、六万五千文字地点だよ!』」




