54『ブンに選考結果を告げたら』(Bストーリー)
メッセージアプリで問いかけても、返事がない。
既読にもならない。
だが、予感があった。
ブンはきっと、あの場所にいる。
五月のあの日、自分がブンと出逢ったあの場所。
命を捨てようとしていたこの自分を、ブンが救ってくれたあの場所に!
「はぁっはぁっ……ブン先輩!」
キトンは汗だくになりながら、六甲山を駆け上がっていった。
着いたころには、空が真っ赤に焼けていた。
「やぁ、キトン。その顔は、担当編集から電話でも来たのかな?」
例の木の隣に、ブンが立っていた。
いつか着ていた、真っ白なワンピースの姿で。
その白がまるで死に装束のように見えて、キトンはゾワリとした。
守ってあげたい。
抱きしめて、この世界につなぎとめたい。
「奨励賞かい? いや、あの完成度なら銀賞? もしかして、金賞だったりして? だとしたら僕とおそろいだね――」
「たっ、大賞っ、ですっ」
キトンは笑顔で告げた。
この勝利は、ブンがつかませてくれたものだ。
キトンはあとがきの一行目で、ブンに対する謝辞を述べるつもりだった。
それらの思いを、感謝を、感情を、ブンにぶつけようとした。
ブンなら、笑顔で祝福してくれると思っていた。
が、
「……は?」
ブンの表情が、凍りついた。
彼女はキトンから目を逸らし、燃える空を見上げ、それから、五月にキトンが首を括ろうとしていた木をじっと見つめた。
「あはっ」
ブンが、笑った。
病的なまでに白い手指が、彼女自身の白く細い首に絡みつく。




