48『初のブン視点』(お楽しみ)
「……カタツムリ!」
「いいから着なさいっ」
「ぎゃあっ」
試着室でヒカルにひん剥かれたキトンが、汚い悲鳴を上げた。
そう、キトン『が』だ。
この描写の視点主は、キトンではない。
(胸でぇっっか!)
視点主・ブンは驚愕していた。
(いや、もしもキトンと僕の毎日が一冊のラノベだったとして、今まで謎のヴェールで隠され続けてきたミステリアスな少女・ブンの視点の第一声がコレだったら読者は失笑するかもしれないけど。それにしてもデカすぎだろうコレは)
「ヒカル」
と、ヒカルが自分の名前を口にした。いや、それは自己紹介ではなかった。
「磨けば……光る! これは逸材よ、ブンちゃん!」
――こくこくこくっ
まるでキトンのように、ブンは激しく肯首する。
「背筋伸ばして」
キトンに際どいビキニを着せることに成功したヒカルが、鼻息荒くキトンに指示を出す。
「ちょっとだけ右腰を突き上げる感じで。いいわね。左手の指先で太ももに触れて。小指立てて、ドエロい感じで。いいわねっいいわねっ」
狭苦しい試着室の中で、ヒカルがクロッキー帳を取り出す。
ブンは今、試着室の外に立ち、カーテンの中に顔だけ突っ込んでいる。
キトンが泣きそうな顔で助けを求めてきたが、ブンはすっと視線を逸らした。
それにしても、すごい。
ひどい猫背で今まで気づかなかったが、キトンのスタイルのよさは本物だ。
スタイルだけではない。
顔もいい。いつも髪がモサモサで、長めの前髪で目元を隠している様子のキトンだったのだが、今、ヒカルのヘアピンで前髪を上げられたキトンの顔は、かなりの美少女顔だった……どぎつい隈と、常に目が泳いでいる点を除けば、だが。
(メイクで目元をごまかして、堂々とした振る舞いをさせれば、きっと男子たちが放っておかないね)




