46『こいつをどう思う?』(お楽しみ)
「やっほー、キトン」
翌朝、部室に入ると、ヒカル先輩がヒラヒラと手を振ってくれた。「って、何その隈⁉」
「『ところで、俺の小説を見てくれ』」
キトンはスマホでドキュメントファイルを開く。
「『こいつをどう思う?』」
「『すごく……第二部前半です』」
背後から、ブンが背伸びしてのぞき込んできた。
「もうできたのかい。さすがは愛弟子」
「ふへ、ふへへへへ」
涙をにじませながら、キトンはブンにスマホを捧げる。
受け取ったブンが原稿に目をとおしはじめて十数分後、
「駄目だね」
「『うわぁあああ……っ!』」
「努力は認めるよ。よくぞ一晩でここまでやったと思う。だが、アスマとシスターの会話がぎこちないというか、ド下手くそというか」
「童貞臭いのよ」とヒカル。
「ぎゃあっ」
「ぎゃあって何、草なんだけど。でもアスマって、リリスとは違和感なく会話できてるわよね」
「リリスは」とブン。「面白半分でアスマにキスできるほどの超陽キャ・強キャラだからね。アスマが完全に受けに回っていても、会話が成立するんだ。けれどシスターちゃんは『悪魔に殺されそうになっていたところをアスマに救われ、アスマに一目惚れ』という経緯からも分かるように、アスマよりも弱キャラだ。戦闘中はもちろん、会話でもアスマが引っ張らなければならない」
「あーね。んで、キトンには会話をリードした経験がない、と。作者は経験したことしか書けない問題かぁ」
二人によって丸裸にされてしまい、穴があったら入りたいキトンである。
(けど、二人の言うとおりだ。リリスくらいのぶっ飛んだ強キャラが主人公をイジりたおす系の会話は、フィクションに振りきっているから書けるんだ。けれど、わりと対等な立場にある者同士の会話というのが、想像できない)
「経験がないのなら、経験すればいいのよ。今からデートに行きましょ」
「デッ⁉」
「いいでしょ、ブンちゃん?」
「いいね。街を歩けば刺激にもなる。新しいアイデアも浮かぶかもしれない」
「むっ、無理無理カタツムリ!」
「あははっ、キトンってたまに面白いこと言うわよね」笑い飛ばすヒカルと、
「どうして無理なんだい?」優しく諭してくれるブン。
「……ふっ、服がっ」
「なるほど、着ていく服がない、と」
「なら買えばいいじゃない。お買い物デートよ」
「かっ……ふっ……」
「かっふって何。この子面白すぎるんだけど」
「買い物に着ていくための服がない、とキトンが言っている」
「ブンちゃんはブンちゃんで、どうして今ので分かるのよ? ニュータイプ?」
ヒカルが視線をキトンに戻し、
「制服で行けばいいじゃない。制服は、どこにでも着ていける最強のフォーマルファッションなんだから」




