幕間 「ジョージの秘密の観測日誌」
段々ジョージのキャラが立ってきたw
『第4寮の生態系に関する一考察』
放課後。第4寮、共有ラウンジ。
「……酸素が薄い」
ソファに沈み込みながら、エドワード・ハミルトンが呟いた。
「いや、それはないだろ」
向かいで珈琲を飲んでいたジョージが、即座に否定する。
「さっきから“気圧が合わない”とか“生存に適さない”とか言ってるけど、それただの恋煩いだよ」
「……黙れ」
「私の計算によれば、拓海の不在はハミルトン帝国に対する重大な損失だ」
「恋じゃん」
「……違う」
「セロトニン不足」
「違う」
「ドーパミン依存」
「違う」
「完全にそれだよ」
沈黙。
エドワードが睨む。
ジョージは気にしない。
「いやぁ、でも今の表情いいね」
カップを置き、ペンを取る。
「“失恋した仔犬”って感じ。記録していい?」
「……やめろ」
「却下」
さらさらとペンが走る。
「サエキが帰ってきた時のネタにするだけだから安心してよ」
「安心できる要素がない」
「そう?」
一口、珈琲。
「サエキ、今頃どうしてると思う?」
エドワードは答えない。
「たぶんさ」
ジョージは少しだけ口角を上げた。
「君のこと綺麗に忘れて、スコーン食べてるよ」
沈黙。
「外交官夫人のガード、固かったしねぇ」
「……詩織殿は」
エドワードが低く言う。
「……私を“ハエ”と認識した」
「うん、してたね」
即答。
「……ハエ、か」
繰り返す。
「……ジョージ」
嫌な予感。
「……別荘周辺の殺虫剤の流通を――」
「やめなさい」
即座に止める。
「ほんと極端だなぁ」
またペンが走る。
「“殺虫剤買収未遂”っと」
「未遂ではない。これからだ」
「やめなさいって言ってるでしょ」
ジョージは軽くため息をつく。
「まあいいや」
ノートを閉じる。
「これ、新学期の面白エピソード集に入れとくね」
「……やめろ」
「サエキが戻ってきたら、最初に読ませる」
「やめろと言っている」
「絶対ウケると思うんだよなぁ」
「やめろ」
「やーめない」
沈黙。
そして。
「……帰ってくる」
ぽつりと、エドワードが言った。
「……拓海は、必ず戻る」
ジョージは、少しだけ目を細める。
「へぇ、で、その根拠は?」
一拍。
「……合理的だからだ」
間。
ジョージは、ふっと笑った。
「……ほんと、便利な言葉だね、それ」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




