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第七十六話 「親愛の定義は、血縁の独占欲に敗北する」という話

お姉ちゃんは拓海を猫かわいがりしてました。今もしています。

クレストフィールド学院の校門前に、一台の高級車が停まった。


降りてきたのは、夫の海外転勤で世界を渡り歩く女――佐伯詩織。

彼女にとって弟・拓海は、十三歳で家を出たあの日から、ほぼ時間が止まっている。


要するに。

今もなお「可愛い末っ子」である。


「拓ちゃん!! 会いたかったわぁ!!」


「ちょ、姉貴!? やめろって苦しい!!」


校門を出た瞬間、185センチの拓海は迷いなく捕獲された。


抱きしめられる。

撫でられる。

頬をつねられる。


周囲の上級生がざわつく。


「……サエキだよな?」

「だよな……?」

「……小さい?」


「もう、こんなに大きくなって〜! でも中身はまだ十歳くらいの甘えん坊さんよね?」


「違う!!」


「お姉ちゃんね、今度スコットランドに来たの。だからこれからはいつでも会えるわよ。

 毎日でも来ちゃおうかしら」


「来なくていい!! 学校だぞここ!!」


その時。


空気が、一段階冷えた。


「……タクミ」


来た。


振り向かなくても分かるやつだ。


「その個体は何だ。……私の許可なく、0.1ミリ以下に侵入している」


「侵入じゃねぇよ姉だよ!!」


エドワード・ハミルトン。

下級生。

なのに、なぜかここにいる。


「あら?」


詩織が、エドを見て首を傾げる。


「拓ちゃん、この可愛らしい女の子はどなた?」


「……オンナ、ジャナイ」


エド、一拍置く。


処理中。


「ワタシ、エドワード・ハミルトン」


カタコト再起動。


「……タクミ、……ワタシ、……ケッコン、……ヨヤクズミ」


「やめろ」


「……アネ、……フヨウ」


「やめろ」


「……サヨナラ」


「やめろって言ってるだろ!!」


そして。


静かに、付け足す。


「……血縁は、優先順位に影響しない」


詩織、停止。

笑顔のまま、完全停止。


「……今、なんて?」


低い声。


「結婚? 予約? ……拓ちゃんを? この子が?」


「ああ違う違う違う!!」


拓海、必死。


「こいつ頭いいのにバグってて、勝手に俺を資産とか婚約者とか――」


「あ、お姉さんそれ本当ですよ!」


裏切り。


「全校の前で『運命の人』って宣言してました!」

「教師も“予約状態”は黙認してます!」

「公式設定です(バグ)!」


「…………」


詩織の背後で、何かが変わる。


「……なるほど」


一歩、前に出る。


「この子は」


にこやかに。


「処理対象ね?」


「やめろォ!!」


「……いい度胸ね、ハミルトン卿」


声は笑っている。

目は笑っていない。


「私の弟を、そんな怪しいシステムに組み込むなんて」


一呼吸。


「今すぐ実家に連絡するわ」


「待て姉貴!!」


拓海、真顔で叫ぶ。


「親父にだけは言うな!! 家が更地になる!!」


「タクミ」


エド、割り込む。


「……アネ、邪魔」


一歩、詰める。


「……ワタシ、隣」


「……土地、……買収、……加速セヨ」


「火に油を注ぐなァ!!」


ジョージの記録:


【サエキ事変・義姉衝突編】


新規個体:サエキの保護者、出現。

分類:最上位防御型。


初動:良好(抱擁)

中盤:敵対(結婚予約)

現在:全面戦争一歩手前


なお、詩織様経由でサエキ実家情報が漏洩。

ハミルトン家との接触確率、100%。


結論:


親愛ロジックは、

血縁(本能)に敗北する可能性が極めて高い。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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