幕間(おまけ) 「記録は、何度読んでも被害を更新する」という話
ノア→エドワードの息子
悠馬→拓海の息子
興味のでた奇特な方は「佐伯悠馬」君三部作をご覧ください→(宣伝)
ハミルトン邸・書斎。
「……また見つけた」
ノアが、棚の奥から一冊のノートを引き抜く。
表紙には、見慣れすぎた文字。
【サエキ事変:観測記録】
「三回目か……」
軽く笑う。
「懲りないな、ジョージも」
ぱら、とページをめくる。
【図書室編】
対象、『宝物』として確定。
拘束、ほぼ完了。
「……はいはい」
【結婚宣言編】
人生単位での予約完了。
学園内にて婚約状態が流通。
「うん、知ってる」
【教師介入編】
制度、機能停止。
予約状態、維持。
「これが一番ひどい」
ノートを閉じる。
「……兄さん」
少し離れたソファ。
悠馬が書類に目を通している。
「何です?これは」
ノートを放る。
悠馬は片手で受け取る。
一拍。
ぱらりと開く。
数ページ、静かに目を走らせる。
そして。
「……」
沈黙。
もう一枚。
「…………」
さらに一枚。
「………………」
ノアが、横から覗き込む。
「どう?」
悠馬は、ゆっくりノートを閉じた。
「……事実ですか?」
「らしいよ」
「……全部?」
「全部だね」
一拍。
悠馬は、天井を見上げた。
「……なるほど」
「僕の人生の難易度が高い理由が、よく分かった」
「でしょ」
ノアが軽く笑う。
「父上、若い頃から全力だから」
「でしょうね」
短い即答。
「……よく知っていると思ったけど」
一拍。
「想定より、ひどい」
ノアは肩をすくめた。
「ちなみにそれ、まだ序盤だから」
「やめろ」
即答だった。
ノートを机に置く。
「……で」
悠馬が言う。
「これは、どこまで拡散しているんですか?」
「学園レベルは突破済み」
「……そうですか」
一拍。
「なら問題ないです」
「問題ないの?」
「慣れていますから」
静かに答える。
ノアは少しだけ笑った。
(……さすが兄さん)
一拍。
(……でも)
「……兄さん」
「何だ」
「逃げるなら今だよ」
悠馬は、ほんの一瞬だけ考えた。
そして。
「無理…でしょうね」
「だよね」
即答と即理解。
ノアはノートを閉じる。
「―ジョージ」
誰もいない空間に向かって呟く。
「これ、三回目だからね」
一拍。
「次はもうちょっと優しく書いて」
沈黙。
(……無理か)
それだけは、確信していた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




