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幕間 「親権者の介入は、予算の概念を喪失させる」という話

まぁ、バカ回ってことで?

放課後。クレストフィールド学院・学生寮。


エドワードの自室は、いつも通り無駄のない静寂に満ちていた。

その中央、重厚なデスクの上に置かれた端末が、低く着信を告げる。


表示された名は――ハミルトン家現当主。


「……父上か」


エドワードは一瞬だけ視線を落とし、すぐに応答した。


「タイミングがいい。タクミの資産価値を固定する『ケッコン』というスキームについて、

法務部への相談を検討していたところだ」


端末の向こう。

威厳に満ちた声が、わずかに弾んでいる。


『エドワード。ジョージから報告を受けた』


一拍。


『例のサエキという少年との「運命の誓約」――そして「婚約プレオーダー」』


『実に見事な手際だ』


「当然だ」


『ハミルトンの血を引く者として、有望な資産を早期に囲い込む判断――誇りに思う』


評価は、満点だった。


「だが」


エドワードは淡々と続ける。


「彼が『重すぎる』と発言した。現行ロジックに対し、軽微な拒絶反応を確認している」


『マリッジブルーだな』


即答だった。


『感情は流動的だが、環境は固定できる』


一拍。


『式場はどうする?』


『イギリスの古城か。それとも彼の母国、日本の神社か』


『予算は無限だ』


『ハミルトンの総力で、「逃げ場がない」ことを視覚的に理解させてやれ』


「合理的だ」


エドワードは一度だけ目を閉じ、計算する。


「……神社」


「……ジンジャ、……カステラ」


一拍。


「よし。日本式挙式を主軸に、英国で披露宴を行う二段構えでいこう」


そのとき。


「うるせぇ!!」


隣の部屋から、爆音。


扉が開き、大きな塊が乱入する。


「おいエド!!」


「さっきから何不穏な電話してんだよ!!」


「“神社”とか“予算無限”とか聞こえたぞ!!」


「タクミ、静かにしろ」


エドワードは一切動じない。


「現在、父上との『経営戦略会議』中だ」


一拍。


「……父上。本人が来た」


「今の発言は“歓喜”と受け取って問題ない」


「違ぇわ!!」


端末の向こうで、笑い声が響く。


『素晴らしい活気だ』


『サエキ君、ハミルトン家へようこそ』


「誰がだ!!」


『結納金の代わりに、君の実家周辺一帯を買収し「サエキ・メモリアル・パーク」とする計画も進行中だ』


『安心してエドワードに身を委ねたまえ』


「勝手に買収すんな!!」


「土地を公園にするな!!」


「俺は文化財じゃねぇ!!」


絶叫は、届かない。


「タクミ」


エドワードが、静かに告げる。


「父上も乗り気だ」


一拍。


「……明日、宝石商を呼ぶ」


「お前の指のサイズ――」


わずかに間。


「……いや、逃走防止のため、首のサイズも測る必要がある」


「指輪じゃなくて首輪だろそれ!!」


「誰かこの一族止めろ!!」


廊下に、絶叫が反響する。

その少し離れた場所。


ジョージは、すでに観測体勢に入っていた。


(……想定以上だねぇ…クックックッ)


ペンが走る。


【サエキ事変・親子共謀編】


ハミルトン家当主、エドワード様の行動を

「英才教育の成果」と誤認し、全面支援を決定。


現在。


・法務部:『サエキ拓海・永久独占契約書』作成中

・不動産部:実家周辺買収を開始

・財務部:予算制限を放棄


(……逃走経路、物理的に消失中)


「タクミ」


「……もういい……」


「合理的判断だ」


一拍。


「……お前は、私の“宝物コンプリート・アセット”だ」


「……もう、……好きにしてくれ……(白目)」


ジョージは、最後の一行を書き加えた。


追記。


対象サエキ、抵抗を放棄。


(……一時的な現象と推定)

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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