ハミルトン伯爵が幸せになるまで:73
うーん、、だいぶ治ってたけど、まだ下書きだけおいとくと単語だけ、シーンだけになってるなぁ( ˘ω˘ )
『習慣とは、早朝から公務へ出る西欧の過保護魔王を、寝癖だらけの狂犬お嬢様(拓海)が「いつもいるのに今日いねぇから目ぇ覚めた^^」とわざわざ玄関まで見送り、帰宅すれば「飯、一緒に食おうと思って待ってた^^」と当然のように迎えた結果、自分が未来の妻の日常へ完全に組み込まれている事実を悟った魔王が、一日の始まりと終わりの二度にわたり幸福で号泣する現象のことであるという話』
【ハミルトン別邸】
~夜明け前の玄関~
秋も深まった、まだ夜の気配が残る早朝。
エドワードは領地関係の会合と外せない公務のため、
普段より二時間以上早く屋敷を出る支度を整えていた。
拓海はまだ寝ている。
いつもなら朝食の席で、
「エド、肉^^」
「朝からですか?」
などという会話をしている時間より、遥かに早い。
(……拓海嬢を起こさないよう、静かに出なければ)
コートに袖を通し、
最後に手袋を確認して、
エドワードが足音を忍ばせて玄関ホールへ向かった。
その時
ペタ。
ペタ。
背後の廊下から裸足の足音が聞こえた。
「……?」
振り返る。
「…………」
そこにいた。
寝癖だらけの黒髪
半分閉じた翡翠の瞳
裸足
そしてなぜかエドワードのガウンを、
身体ごと包まれるように、すっぽりと羽織っている。
「……拓海嬢?」
「エド……」
ぼーっとした声。
「どうされたのですか? こんなに早く……」
「んー……」
拓海は目を擦りながら、
ふらふらとこちらへ歩いてくる。
そして、
エドワードの目の前まで来ると
へにゃり、と、笑った。
「いってらっしゃい^^」
「…………」
出発前。
一度目の致命傷。
「……わざわざ」
声が震える。
「私を見送るために、起きてくださったのですか……?」
「んー……」
拓海はまだ半分寝ている。
「いつもいるのに」
「…………」
「今日いねぇから、目ぇ覚めた」
「…………っ」
追撃。
確定クリティカル。
「エド?」
「……少々」
エドワードが。
顔を背ける。
「少々、お待ちください……(´;ω;`)」
「なんで朝イチから泣くんだよwww」
◆
【出発不能】
~致死量のネクタイ修正~
「てか」
拓海が大きな欠伸をする。
「帰り何時?」
「……夕方には戻れる予定です」
「じゃ、飯一緒に食えるな^^」
「…………」
本日。
三度目。
「……行きたくありません」
「行けよ伯爵www」
「拓海嬢と朝食を共にしたい……!」
「今日は無理だろ」
「ですが……!」
「帰ってきたら晩飯一緒に食えばいいじゃん」
「朝食は朝しか食べられないのです!!」
「知らねぇよwww」
拓海は呆れたように笑う。
そして。
「エド」
「はい?」
「ちょっと屈め」
「?」
言われるまま長身を屈める。
拓海の両手が
エドワードの首元へスッと伸びた。
「…………」
「ネクタイ曲がってる」
十五年間、
佐伯家で叩き込まれたお嬢様としての教養。
本人にとっては、
ただ”曲がっているものを直している”だけ。
するり。
指先がネクタイへ触れる。
結び目を整え
襟元を直し
最後に
きゅっ。
「…………」
エドワード。
呼吸停止。
「よし」
拓海が一歩下がる。
上から下までエドワードを見る。
そして、
満足そうに
にっ。
「カッコいいぞ^^」
パツン。
と、背中を軽くたたく。
理性。
完全断線。
「拓海嬢ぉぉぉぉ……!!」
「うおっ!?」
ガバッ。
抱きしめた。
自分のガウンごと
すっぽり腕の中へ。
「私は……!」
「何だよ!」
「必ず無事に、生きて帰ってまいります……!!(´;ω;`)」
「仕事行くだけだろ!!」
「拓海嬢……!」
「戦争じゃねぇんだよwww」
「離れ難いです……!」
「早く行け!! 遅刻するぞ!!www」
未来の妻にネクタイを直され。
「カッコいい」と言われ。
見送られる。
エドワード・ハミルトン。
本日の公務。
開始前から幸福度限界突破。
◆
【夕暮れ】
~帰還~
その日の夕方。
「以上で、本日の議題は終了となります」
「では失礼します」
早い。
異様に早い。
いつもなら細部まで確認する書類も
完璧。
質問への回答も
完璧。
判断も
爆速。
なぜなら、
帰れば拓海がいる。
朝。
「いってらっしゃい」
と言った拓海が待っている。
その一念ですべての公務を神速で片付けた。
そして、夕暮れ。、
ハミルトン別邸の玄関の扉が開く。
「ただいま戻りました」
次の瞬間、屋敷の奥から
ドタドタドタドタ!!
聞き慣れた上品とは程遠い足音。
「エドーーー!!」
「!」
拓海が走ってくる。
「おかえり^^」
「…………」
朝
いってらっしゃい。
夜
おかえり。
「…………(*´ω`)」
「なんで黙ってんの?」
「……いえ」
「?」
「ただいま戻りました、拓海嬢^^」
「おう^^」
それだけで。
今日一日の疲れが、
全部消えた。
◆
【待機】
~一日の終わり~
「エド」
「はい?」
「飯まだだろ?」
「ええ。まだですが」
「じゃ食おうぜ^^」
「もちろんです」
「腹減ったー」
拓海が、
くるり、と回って食堂へ向かおうとする。
だが
エドワードはふと気づいた。
「……拓海嬢」
「ん?」
「拓海嬢は……?」
「何が?」
「もう、夕食を召し上がったのでは?」
「食ってねぇよ」
「…………」
「?」
「なぜ……?」
「なぜって」
拓海が不思議そうに首を傾げる。
「一緒に食おうと思って待ってた^^」
「…………」
時間がとまった。
「……私を?」
「当たり前だろ」
「…………」
「お前いねぇのに」
拓海がけろりとして言う。
「一人で先に食ったら、つまんねぇじゃん (・∇・)」
「…………」
その言葉が朝の光景と重なった。
いつもいるはずの自分が朝いなかったから、
拓海は目を覚ました。
そして
夜自分が帰るまで、
拓海は夕食を待っていた。
朝、
自分を見送る。
夜、
自分を迎える。
一日の始まりと、
一日の終わり。
そこに
当たり前のように”自分”がいる。
「…………っ」
「エド?」
「…………」
「どうした?」
「拓海嬢ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!(´;ω;`)」
「また泣いたぁぁぁ!!」
本日二度目の大号泣。
「なんでだよwww」
「嬉しいのですぅぅぅぅ!!」
「飯待ってただけだろ!!」
「それが嬉しいのです!!」
「意味わかんねぇwww」
「拓海嬢……!!」
「分かった分かった! 泣くな! 肉食うぞ!」
「はいぃぃ……(´;ω;`)」
「ほら行くぞ^^」
「はい(*´ω`)」
◆
【標準設定】
~もう、そこにいる~
本人は何も特別なことをしているつもりはない。
朝いつもいる奴がいなかったから目が覚めた。
出かけるなら見送る。
帰ってきたら迎える。
一人で食べてもつまらないから
夕食を待つ。
ただそれだけ。
佐伯拓海にとって、
エドワード・ハミルトンと過ごす毎日は
もはや恋愛ですらなかった。
もっと”当たり前”のもの。
朝起きればいる。
飯を食えば隣にいる。
夜になれば帰ってくる。
それは、『生活そのもの』
一方。
その事実にようやく気づいてしまった男。
西欧の過保護魔王。
エドワード・ハミルトン。
その夜の夕食の席で、
何度も
何度も
拓海を見ては
「…………(*´ω`)」
と、顔面を蕩けさせ。
「さっきから何なんだよwww」
と未来の妻に気味悪がられるのであった。
恋愛感情、
依然として圧倒的温度差。
しかし。
生活密着度すでに新婚夫婦級。
本人だけが、まだそれを知らない(笑)。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
いいねや感想など、いつも励みになっています。
この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




