↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
72/784

第六十一話 「言語の”同期”は、新たな”バグ”を生む」という話

「」→日本語

『』→英語 

→すみませんが脳内変換してください!


七月上旬。神社の長い石段。

蝉時雨が、降り注ぐ。


エドワードは。


185cmの拓海の、ガッシリした二の腕に――

白く細い指先を、深く食い込ませていた。


『……タクミ。確認だ』


見上げる。

自分より頭一つ高い頂点を、正確に。


『お前の脈拍(パルス)』


一拍。


『毎分3回、上昇した』


『これは、私による密着(ホールド)が』


『……愛として、アップデートされた結果か』


『暑苦しいからだよ!!』


即答。


『てかよく数えてんな、おい!!』


『当然だ』


一切の迷いなし。


『私は、……360日以上』


『お前という構造を』


『近距離で、独占(デバッグ)し続けてきた』


エドワードが、さらに距離を詰める。


ちょっと小柄な“最小単位”。

それが、拓海の懐にぴたりと収まる。


『……お前の重心、体温』


『微細な変化……私は、目を閉じても』


『三次元的に把握(トレース)できる』


一拍。

これが、習熟(慣れ)だ』


『……キモいんだよ!!』


『視覚遮断するな!!』


「―よお! 拓海!」


声が落ちる。


石段を駆け上がってくる影。

佐藤だ。


170cmの“中音域”。


「って、何だそのチビ!?」


一拍。


「……めちゃくちゃ可愛いけど、ベッタリじゃねぇか!!」


「―サトウ」


エドワードが、顔を埋めたまま言う。


「オマエト、日本語デ、ハナス」


「……コレハ、ボク、ニトッテ」


「構造的妥協」


「……はぁ!?」


佐藤が目を見開く。


「日本語喋れんのかよ!? てか内容がムカつく!!」


『当然だ。私はイギリスにいる時から』


『毎日18時間タクミの寝言を解析し、OSを書き換えてきた』


エドワードが、スッと動く。

拓海の背後へ。完全に隠れる。

指だけ、出す。


『お前のような低解像度の語彙しか持たない』


『不純物(サトウ)』


一拍。


『私のサエキ専用辞書で、論破(デリート)してやる』


「サトウ、オマエ、キエロ」


「……隠れてブツブツ言ってんじゃねぇよ!!」


「卑怯な姫かよ!!」


佐藤が騒ぐ。


「俺じゃねぇよ!!」


拓海が叫ぶ。


「ジョージの変なノートのせいだっつってんだろ!!」


後ろで。


ジョージが誇らしげに頷く。


『一年にわたるサエキ学』


『言語の壁、……完全に突破』


「あ、でも」


菜摘が、スイカの種を飛ばしながら言う。


「そんなに詳しいならさ」


「たっくんが“本気で怒る前”の癖も、知ってるよね?」


「……ミミ……?」


エドワードの動きが、止まる。


『耳の後ろ?そんな微細な変化』


『私の観測ログには、存在しない』


キョトンとした顔をするエドワードを見た菜摘。


「……え、知らないの?」


菜摘が、にやっと笑う。


「ここ、ピクッてなるんだよ」


一拍。


「……あ、今なってる」


「……ッ!!」


エドワードの顔が、崩壊する。


拓海の耳へ、視線が集中する。


『タクミ!!なぜだ!!』


『なぜ、私の知らない出力をナツミの前で披露する!!』


『…私の習熟が、崩壊するだろう!!』


『……知らねぇよ!!』


「誰でも怒りゃどっかピクピクするだろ!!」


ジョージのペンが走る。


【サエキ事変・日本遠征七日目】


ハミルトン様、一年に及ぶ執着観測を、幼馴染17年の蓄積により完全否定される。


英語による完全同期は維持されるも、……日本語領域において致命的な情報欠落を確認。

これより、『耳裏・24時間監視』という新たなバグが発生。

観測対象、さらに深部へ。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。