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ハミルトン伯爵が幸せになるまで:47

両親渡英(`・ω・´)

撃砕クラッシュとは、娘の婚約査定のため周到に手順を組んで渡英した警視庁刑事(和也)が、ヒースロー到着早々、狂犬お嬢様(拓海)から「俺、婚約したぞ^^」と事後報告されて全工程を吹き飛ばされ、横では承諾理由を初めて知った西欧の過保護魔王エドワードまで情緒を乱高下させる現象のことであるという話』


【ヒースロー空港・到着ロビー】

~再会と最初の爆弾~


到着ゲート。

長時間のフライトを終えた乗客たちが、次々とロビーへ姿を現していく。


その人混みの中に両親の姿を見つけた瞬間、

拓海が、ぱっと顔を輝かせた。


拓海「親父ー! 母ちゃーん!^^」


ぶんぶんと手を振り、そのまま駆けていく。


和也も

この瞬間だけは、完全なる親バカの顔だった。


「拓海!!」


「久しぶり!^^」


「元気だったか!? 痩せてないか!? ちゃんと飯食ってるのか!?」


「食ってる食ってる! エドが毎日いっぱい食わせてくれるから^^」


「…………」


”エド”


その単語を聞いた瞬間、

父親の顔から、刑事の顔へ

和也の視線が、すっと拓海の後方へ移動した。


そこには

人生最大級の緊張を抱えながら、背筋を伸ばして立つ一人の青年。


エドワード・ハミルトン。


和也が渡英前に散々調べ上げた、娘の婚約候補である。


「……初めまして。エドワード・ハミルトンと申します。この度は遠路はるばる英国まで──」


「あ、そうだ親父!」


「ん?」


「俺、エドと婚約したぞ!^^」


「……ッ!?」


「…………」


「…………」


「^^」


沈黙。

数秒前まで娘との再会にデレデレしていた熊の顔から。


完全に

笑顔が消えた。


「…………誰と?」


「エド^^」


「…………いつ?」


「昨日!」


「た、拓海嬢……っ!」


なぜ今言う。


それはエドワードも聞きたかった。


「…………」


「あなた」


「……絢子」


「はい」


「俺は……」


「はい」


「……婚約していいかどうかを、この目で確かめるために英国へ来たんじゃなかったのか?」


「私もそのつもりでした」


「?(・∇・)」


当事者だけが、何一つ問題を理解していなかった。



【暴露】

~損益計算、父へ筒抜け~


「お前! 父さんたちに相談もなく勝手に婚約なんて!」


「なんでだよ。いいじゃん^^」


「よくない!!」


「だってエドと婚約すると、俺このまま英国にいられるんだぞ^^」


「…………」


「見合いもしなくていいし^^」


「…………」


「ここに住んでていいし^^」


「…………」


「飯もうまいし^^」


「…………?」


「得しかねぇ^^」


.「婚約を損得で決めるなぁぁぁぁぁぁ!!!!」


ヒースロー空港の到着ロビーに

警視庁刑事の怒号が響き渡った。


そして

その横で別の男が静かに死んでいた。


「…………」


初耳だった。


昨日拓海から婚約を承諾してもらった。

人生でこれ以上ないほど幸福だった。


しかし。


その承諾理由が


英国滞在。

見合い回避。

住居。

そして飯。


「…………」


翡翠色に近い青の瞳から、光が消えていく。


(拓海嬢……婚約を承諾してくださった理由は……それだったのか……)


ところが。


「そんな理由で婚約なんぞ認められるか!!」


「なんでだよ!」


「お前はハミルトンをどう思ってるんだ!」


「どうって……」


拓海はエドワードを見る。


そして。


「俺、エド嫌いじゃねぇぞ?」


「……!」


瞳に光が戻った。


「嫌いじゃない程度で婚約するな!!」


「でも好きだぞ?」


「!!」


完全復活。


「お前の『好き』は飯だろうが!!」


「飯だけじゃねぇよ!」


「じゃあ何だ!」


「エド面白いし、一緒にいて楽しいぞ^^」


「…………っ!!」


今度は泣きそうになった。


「…………」


絢子は、そんな若き伯爵を横目で見た。


「それに何だかんだ俺の好きにさせてくれるし^^」


「はい……!」


「飯もうまいし!」


「はい!」


「結局飯に戻ってるじゃないか!!」


「大事だろ飯は!!」


「婚約だぞ!!」


「だから何だよ!!」


「…………(*´ω`)」


「……ハミルトン様」


「はい?」


「拓海の言葉に、いちいち一喜一憂なさらないでください」


「……申し訳ありません……」


英国到着から、まだ十数分。


西欧の若き伯爵は

すでに千代田区の母に扱い方を把握されつつあった。



【査定工程】

~全飛ばし~


そして

和也にはもう一つ、納得できないことがあった。


十二時間近いフライトの間。


いや

渡英を決めた、その日から。


何度も何度も頭の中で組み立ててきた計画がある。


【佐伯和也・婚約査定ロードマップ】


一、まず本人と直接会う。


二、人柄を見る。


三、娘への態度を見る。


四、娘本人の意思を確認する。


五、そのうえで婚約を認めるか判断する。


完璧だった。

刑事らしく。

慎重かつ冷静に。


順序立てて判断するつもりだった。


ところが。


【現実】


英国到着。



「親父ー!^^」



「俺、婚約したぞ!^^」



【全工程・強制終了】


「…………」


拳が震えた。


「俺は……」


「?」


「俺は一体……」


「あなた?」


「何のために十二時間もかけて英国まで来たんだぁぁぁぁぁ!!!!」


「…………」


少し考えて。


「ガーデンパーティ?(・∇・)」


「違ぁぁぁぁぁう!!!!」


「お、お父様……!」


「誰がお父様だ!!!!」


「申し訳ありません!!」


「親父うるせぇぞ^^」


「誰のせいだと思ってるんだ!!」


「……はぁ」


満開の春を迎えたロンドン。


その玄関口で

娘の婚約を査定するはずだった警視庁刑事は工程をすべて吹き飛ばされ。

人生最大の幸福を手にしたはずの英国伯爵は、婚約承諾の真相を知って天国と地獄を往復し。


その元凶である狂犬お嬢様だけが


「腹減ったな。エド、なんかある?^^」


「車に軽食をご用意しております!」


「やった^^」


いつも通りであった。


こうして

警視庁刑事(父)と西欧の過保護魔王(婚約者)。


二人の男がそれぞれ別方向に振り回される、地獄の英国滞在が幕を開けたのであった(笑)。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。


いいねや感想など、いつも励みになっています。

この話もゆるく続いていく予定なので、

また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。

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