ハミルトン伯爵が幸せになるまで:43
見てる方、どのくらいいるのかなぁ。これ、ちゃんとラブコメになってるのか知りたい。
『渡英とは、娘の婚約を阻止する気満々だった父親(和也)が、「そもそも本人たちは恋人ですらない」という更なる異常事態を知らされ、英国伯爵を直接査定するためガーデンパーティへの参加を即決する現象のことであるという話』
【千代田区・佐伯家】
~金色の爆弾と緊急家族会議~
テーブルの中央には、一通の金色の招待状。
その周囲を囲む、佐伯家の夫婦。
絢子は改めて招待状へ目を落とした。
「……ということで。五月二十三日、ハミルトン家のガーデンパーティへ、
夫婦で正式に招待されています」
「行く!!」
「まだ何も言っていません」
「行く!!」
「……そうですか」
和也はすでに完全な臨戦態勢だった。
「この目で確かめる! ハミルトンとかいう男が、うちの拓海に相応しい男なのかを!!」
「……その前に、一つお伝えしておくことがあります」
「なんだ」
「……どうやら」
一拍。
「拓海は、自分がハミルトン様と交際しているという認識すらないようです」
「…………」
「…………」
「…………は?」
静寂。
そして数秒後、
警視庁刑事・佐伯和也の血圧が、一気に跳ね上がった。
「た、拓海は騙されているんだな!? そういうことだな!?」
「まだそうとは──」
「許さん!! 刑事の娘をたぶらかすとはいい度胸だ!! やはり今すぐ英国へ!」
「あなた。まだあります」
「まだ!?」
絢子は、長女・詩織から届いていたイギリスの“現場報告”を淡々と読み上げた。
「『拓海は今、ハミルトン様の別邸で暮らしてるわよ』」
「ッ!?」
第一の衝撃。
「『毎日一緒に大学へ行って、一緒に帰ってるわ』」
「っっ!!??」
第二の衝撃。
「『食事もほとんど一緒』」
「……ぐふっ……」
第三の衝撃。
そして。
「『朝は髪を整えてもらってるし、夜は洗髪とドライヤー、それから肌のお手入れまで
ハミルトン様がやってるわよ』」
「……………………」
致死量。
和也の顔から、完全に表情が消えた。
(……待て)
刑事として、一度情報を整理する。
娘:十八歳。
相手:男。
現在:同居中。
登下校:毎日一緒。
食事:一緒。
髪:男が洗っている。
肌:男が手入れしている。
しかし
交際:していない。
和也「…………」
意味が分からない。
警視庁刑事として数々の事件を見てきた和也にも、まるで理解できなかった。
和也「……絢子」
絢子「はい」
和也「これは……どういう関係なんだ?」
絢子「それを私も知りたいんです」
和也「…………」
しばらく。
和也は一点を見つめていた。
やがて。
低い声で、ぽつり。
和也「……行く」
絢子「ですから、それは聞きました」
和也「絶対に行く」
今度は先ほどまでの勢い任せではなかった。
歴戦の刑事の目になっている。
和也「この目で確認する」
絢子「何をです?」
和也「ハミルトンという男が何者なのか。拓海をどう扱っているのか。そして……」
拳を握る。
和也「──二人が一体どういう関係なのかをだ!!」
絢子「……それについては、私も少し興味があります」
こうして何も知らず、
『拓海嬢から「好き」と言っていただいた!
五月には婚約発表を──!』
と、幸せいっぱいに未来予想図を描いている西欧の過保護魔王・エドワードのもとへ
柔道三段
空手四段
警視庁刑事
そして何より……
佐伯拓海を溺愛する父親、
佐伯和也が、満を持して渡英することが決定した。
なお。
エドワード本人はまだ知らない。
自ら送った一通の招待状によって
未来の義父候補ではなく、現場検証にやってくる刑事を英国へ召喚してしまったことを(笑)。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




