第五十八話 「師範(じいちゃん)の残影は、理性を一刀両断する」という話
「」→日本語
『』→英語
→すみませんが脳内変換してください!
佐伯家の居間。
正座に失敗し、畳の上で“長い足を余らせて”転がっているエドワード。
その視線の先。
壁に掛けられた一本の木刀と、古びた垂れネームが目に入った。
『……タクミ」
静かな声。
『……あの『黒い防具』。お前の、過去の戦闘記録か?』
『……じいちゃんに教わってた剣道の道具だよ。……母方のな』
『……母方』
わずかな間。
『……アヤコの、……”構造的根源”か』
エドワードが、ゆっくりと身を起こす。
そのまま、木刀を凝視する。
『……確認だ』
『その個体は、お前の”強度”を、物理的に研磨した張本人か』
『……まぁな』
拓海は肩をすくめる。
『……クソ厳しかったけど。今はもう引退して、道場に顔出すくらいだ』
背後で、ジョージのペンが走る。
『……サエキを鍛え上げた”マスター”……特定』
『……見てください、ハミルトン様』
震える声。
『……あの木刀の”傷”。……数千回に及ぶ教育的指導(物理)の痕跡です』
『……勝手に虐待っぽく言うな!! 稽古だよ!!』
「―あら、おじいちゃんの話?」
キッチンから、菜摘がスイカの皿を持って現れる。
「……たっくん、小学校の時さ」
軽く笑う。
「……おじいちゃんに怒られて、泣きながら素振りしてたもんねぇ」
一瞬、空気が止まる。
「……菜摘」
低い声。
「……余計なログを、リークするなよ」
エドワードの目が据わる。
「…ナキ、ナガラ?」
ゆっくりと、言葉をなぞる。
「……タクミの『涙』、……ハジメニミタノハ……」
一拍。
「、ソノ『ジイチャン』ダッタノカ?」
「……そこかよ!!」
即ツッコミ。
『嫉妬の対象がおかしいだろ!!』
『……合理的判断だ』
即答だった。
エドワードは立ち上がる。
そして。
仏壇と、その横の剣道コーナーへ――順に一礼する。
『……父方の祖父には、……静寂への敬意を』
一拍。
『……母方の師範には、……『挑戦』のアップデートを』
『……何の挑戦だよ!!』
『じいちゃんに喧嘩売る気か!?』
『違う』
静かな否定。
『……私は』
わずかに視線を落とす。
『その木刀が刻んだ、お前の『肉体の記憶』を』
一拍。
『……ハミルトンの手で、再定義しに来たのだ』
『だからー!言い方が気持ち悪いんだよ!!』
「……拓海」
背後から、和也の声。
冷たいお茶を啜りながら、淡々と告げる。
「……明日、……おじいちゃんが来るそうだ」
一拍。
「……お前の『友人』に、……稽古をつけてやると」
「……マジかよ」
小さく、呟く。
「……ホウ」
エドワードの口角が、わずかに上がる。
「……極東マスター」
ゆっくりと立つ。
『私のロジックを、……竹刀で破壊できるか』
一拍。
『……見ものだな』
『……死ぬぞ、お前』
拓海は即答する。
『……じいちゃん、……手加減しねぇからな』
ジョージのペンが、静かに走る。
【サエキ事変・日本遠征二日目】
ハミルトン様、……ついにサエキの『師』との直接対決を志向。
英国貴族のプライドと、日本の剣道。
さらに『たっくんの涙』を巡る一方的な嫉妬が燃焼。
佐伯邸の庭が、……戦場(道場)へと変わる日は近い。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
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