ハミルトン伯爵が幸せになるまで:38
一応「ラブコメ」のつもりで書いてますが読んでくださっている方、どう思いますか?(´・ω・`)
『告白とは、五月までに狂犬お嬢様(拓海)との婚約を目指す西欧の魔王が、春の庭園で決死の「好きです」を噛みながらも成功させ、「俺も好きだぜ^^」という奇跡の返答を得るも、その理由が「飯を奢ってくれるから」だったため、喜んでいいのか分からなくなる現象のことであるという話』
【ハミルトン別邸】
~決戦~
数日後、
夕食を終えたハミルトン別邸。
三月も末を迎え、英国にもようやく春の気配が漂い始めていた。
日も少しずつ長くなり、夕食後でもまだ空には淡い明るさが残っている。
その日。
エドワードは、覚悟を決めていた。
「……拓海嬢。」
「んー?」
「少し……庭を歩きませんか。」
「庭?」
ソファでだらけていた拓海が顔を上げる。
「はい。今日は暖かいですし。」
「別にいいぞー^^」
「……!」
第一関門突破。
エドワードは誰にも気づかれないよう、小さく拳を握った。
◆
【庭園】
~準備万端~
別邸の庭園は、本邸ほど広大ではない。
それでもハミルトン家の所有する邸宅だけあって、庭師の手によって美しく整えられている。
春の花が少しずつ咲き始め、
その奥には、小さなガゼボがあった。
白い柱
絡み始めた若い蔓
夕暮れの柔らかな光
そして
ガゼボの中央に置かれたテーブルには、すでに紅茶と菓子が用意されている。
完璧。
エドワードは事前にすべて準備させていた。
静かな春の夕暮れ
二人きりの庭園
美しい花
温かな紅茶
これ以上ない告白の舞台。
……だった。
「おお!!」
拓海の目が輝いた。
「美味そうな菓子!!!^^」
「…………。」
花ではない。
夕暮れでもない。
当然
エドワードでもない。
”菓子である”
拓海は椅子へ座るなり、真っ先にスコーンへ手を伸ばした。
「いっただきまーす^^」
「た、たたた拓海嬢!」
声が裏返った。
「んあ?」
(´~`)モグモグ
すでに食っている。
「…………。」
落ち着け。
エドワード・ハミルトン。
数千億円の商談をまとめてきただろう。
各国の財界人を相手にしてきただろう。
相手は一人だ。
十九歳の少女。
しかも、
毎朝、髪まで梳かしている相手ではないか。
何を緊張する必要がある。
「…………。」
めちゃくちゃ緊張する。
「エド?」
「は、はい!」
「食わねぇの?」
「今は結構です!」
「じゃあこれもらっていい?^^」
「どうぞ!」
「やった^^」
二個目を確保された。
違う。
スコーンを食わせるために呼んだのではない。
今日こそ。
今日こそ言うのだ。
エドワードは膝の上で拳を握った。
「拓海嬢。」
「ん?」
「私は。」
「おう。」
「私は……拓海嬢を……。」
心臓がうるさい。
「……好ましく思っています!」
「…………。」
拓海が止まった。
スコーンを咥えたまま、首を傾げる。
「(。´・ω・)?」
通じていない。
言い方が悪かった。
もっと直接。
もっと分かりやすく。
「つまり……!」
「おう。」
「私は!」
「おう。」
「すすすす……。」
「?」
「好きでし!!」
「…………。」
噛んだ。
(噛んだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)
エドワードの脳内で絶叫が響き渡る。
人生最大の告白。
よりによって、
噛んだ。
顔から火が出そうになるエドワード。
しかし、
拓海はそんなことなど一切気にしていなかった。
「へ?」
きょとん。
そして。
にぱっと笑った。
「俺もエドのこと好きだぜ?^^」
「!!!!!!!!」
時が。
止まった。
(…………。)
(いま。)
(なんと……?)
(拓海嬢が。)
(私を。)
(好き……?)
エドワードの灰色の瞳が、みるみる輝いていく。
「た……拓海嬢……!」
「ああ!」
拓海は力強く頷いた。
右手にスコーン。
左手にもスコーン。
口いっぱいに頬張りながら。
満面の笑顔で言った。
「飯いっぱい奢ってくれるしな!^^」
「…………。」
エドワードの灰色の瞳が止まった。
「…………。」
「あと、この菓子もうめぇ!^^」
「…………。」
「エドん家の飯、マジで最高だよな!」
「…………。」
何か
違う
ものすごく
違う気がする
しかし。
「俺もエドのこと好きだぜ?^^」
確かに言われた。
”好き”、と。
エドワードの脳内で、天使と悪魔が緊急会議を開始した。
【天使】
『拓海嬢から好きと言われたぞ!!』
【悪魔】
『どう考えても友達としてだ。』
【天使】
『だが「好き」だ!!』
【悪魔】
『理由が飯だぞ。』
【天使】
『好きは好きだ!!』
【悪魔】
『現実を見ろ。』
「…………。」
エドワードは悩んだ。
死ぬほど悩んだ。
そして。
「……拓海嬢。」
「ん?」
「もう一度……言っていただけませんか。」
「何を?」
「その……私を……。」
「好きだぞ?^^」
「…………!!」
(*´ω`)/////
まあいい。
今日は
これでいい。
告白はした。
噛んだが。
拓海嬢からも「好き」と言っていただいた。
意味はおそらく
いや
間違いなく。
自分が望んでいたものとは違う。
だが
ゼロではない。
むしろ、大きな一歩ではないか。
エドワードはそう自分に言い聞かせながら、紅茶へ手を伸ばした。
「エド。」
「何でしょう。」
「これ全部食っていい?」
「……どうぞ。」
「やったー!!^^」
満面の笑顔で三つ目のスコーンへ手を伸ばす拓海。
その姿を眺めながらエドワードは思った。
(……可愛い。)
結局
何ひとつ解決していなかった。
◆
こうして
若きハミルトン伯爵による人生最大の告白は
”一応”
成功した。
エドワードは拓海が好き。
拓海もエドワードが好き。
ただし。
”双方の「好き」の意味が一致しているとは、誰も言っていない。”
五月二十三日まで
あと約二か月。
目標:婚約者。
現在地
『飯を奢ってくれる大好きなスケベ外人』へ昇格。
……一応。
前進はしていたのである(笑)。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
悠馬君の父、佐伯拓海と、ノアの父、エドワード・ハミルトンのお話です。
いいねや感想など、いつも励みになっています。
この話もゆるく続いていく予定なので、
また気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。




